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ヤマト運輸の苦悩は全ての会社の共通課題

日経ビジネスがヤマト運輸を特集でこき下ろしました。題して「ヤマトの誤算」。27年ぶりに値上げ断行を決めた同社に内外から「その値上げは企業努力をした上での最終決断か?」という疑念があるようです。この特集記事、読んでいて自分がちょっと苦しくなったのはヤマトを一方的に悪者にすべきだったのか、あるいは我々もビジネスを通じて同じ間違いをしていないだろうか、と考えてしまったからでしょうか?

まず、記事でヤマトの何を批判しているのか、といえば宅急便というコンセプトを作り上げた会社として安値でアマゾンの仕事を請け負い、制御不能なほど大量の荷物を扱い、社員は疲弊し、挙句の果てにサービス残業代を190億円も支払うという結果に陥ったのは経営陣の不徳ではないか、というものです。

その証拠は売り上げと利益にも表れているようです。同誌によると売り上げは過去10年で26%伸びたのに利益は06年3月期からほぼ横ばいだと指摘しています。その上、宅配以外の事業が育っておらず、事業の多角化やリスクヘッジが十分ではないとされています。こう指摘されると確かに大丈夫かい、ヤマトさんという風に見えます。

では一歩裏返してみましょう。日本企業はついこの前までNo1にならなくてはだめだ、シェア1位を目指せ、と標語のように唱えていました。ヤマト運輸も宅急便の創業者としてその道を着実に歩んだといえば正しいでしょう。そしてもちろんシェア1位は確保しています。それなのになぜこれほど責められるのか、といえばそのシェア1位は社員を使い潰した上での王冠であり、会社も決して儲かっていない中で何のためのシェア1位だったのかという疑念ではないかと思います。

私のまわりにも確かに頑張っているのに成果が出ない事業者はいます。何故でしょうか?

「憑りつかれる」のかもしれません。シェアの為にあらゆるエネルギーと資金と人材を投入するのはどの業界でも同じでしょう。そこにはあらゆる問題が発生しますが、総力をかけて解決しようと努力します。そうなると更に忙しい歯車は回転します。会社全体が全てその歯車に巻き込まれるようになると廻りが見えなくなる、ということなのでしょう。

同じ配達という事業でもう一つ苦しんでいる会社があります。日本郵政です。オーストラリアの物流会社、トール社を買収したものの高い買い物で利益は思ったように貢献せず、4000億円という損失を出すと発表したのは今年の4月。その舌の根の乾かぬうちに次は野村不動産を買おう、と買収攻勢をかけます。しかし、最新の報道ではこの買収は不成立に終わり、失敗しそうだとされています。なぜ、日本郵政が不動産開発会社を買おうとしたかといえば同社で持てる不動産の有効活用を考えたのでしょう。

我々が今、快適にネットショッピングができるのはヤマトなり日本郵政なりの宅配会社が足元を支えているからにほかなりません。アマゾンや楽天といったネットショッピングで便利な社会になったと消費者は実感していますが、案外一昔と変らない労働力の塊のような仕事で支えられていたりするのでしょう。

そんな業界にもアマゾンが流通センターをロボット化し人の作業を極力減らす、あるいはドローンなどの新たな発想で荷物を運ぶようになるかもしれないとなれば何十年後かに流通業界そのものが完全に変質化する可能性はあるはずです。

とすれば巨大流通センターに投資をするのではなく、テクノロジーとの協業で全く違う発想を取り込む準備を双方とも早くしなくてはいけないはずだと思うのです。しかし、両社にはその動きは見て取れません。

かつて日本では商品を最終消費者に届けるまでに多数の問屋や卸売業者がありました。しかし、それらは流通革命で生産者が直接届ける仕組みに変わりました。問屋の悲劇の話など若い方はもう知らないと思います。私は同じことが流通センターにも起きると考えています。それだけではなく、豊洲市場もさほど遠くない時期に不必要になるとみています。誰が何を運ぶのか、その前提が崩れるとみているからです。

我々ビジネスをする人間は3歩先を見ろとよく言います。しかし、今の3歩先には全く違う世界があります。だからこそフットワークよく、どんどん古いものに見切りをつけて進化していかねばなりません。

今、シェア1位でもそれは今だけの快感かもしれません。10年後も1位であるためには今の主たる事業のプロポーションを落とし、将来に投資をし続けねばならないはずです。

日経ビジネスのヤマト運輸への厳しい姿勢の記事は我々すべてのビジネスマンへの警告のように感じられます。

では今日はこのぐらいで。

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