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【ロンドン火災】 死者少なくとも30人に 区役所や首相に抗議

ロンドン西部の公営高層住宅を襲った火事による死者は、16日までに少なくとも30人が確認された。16日には地元の区役所やテリーザ・メイ首相が訪れたコミュニティー・センターの前で、多くの住民が「今すぐ支援を」と要求。数十人が区役所に入り、抗議した。一方でメイ首相は、被害住民に新居確保や法律相談などの費用を支援するため、基金創設を発表した。

ノース・ケンジントン地区にある公営住宅グレンフェル・タワー(24階建て127戸)で14日未明に火事が発生し、炎はたちまち建物全体に延焼した。出火原因は明らかになっていないが、警察は不審火を疑わせるものは今のところないと話している。火勢は激しく、鎮圧には消防士200人以上による24時間以上の消火作業を要した。

BBCの取材で、行方不明者は約70人に上ることが分かった。死亡した30人も、このなかに含まれるものとみられる。これまでに警察は、6人の遺体の身元を暫定的に確認した。そのうち一人は、病院で死亡した。消防当局は、生存者がこれ以上発見されるとは考えていないと話す。16日現在で24人が入院中で、12人が重体という。

名前が公表された犠牲者3人は、シリア難民で土木工学の学生だったモハメド・アルハジャリさん(23)、両親や弟と暮らしていた5歳のアイザック・シャウォちゃん、21階に母親と住んでいたアーティストで写真家のハディージャ・セイさん(24)。セイさんの作品は現在、ベネチア・ビエンナーレ国際美術展に展示されている。

Isaac Shawo
アイザック・シャウォちゃんは家族と逃げたが、煙にまかれて家族とはぐれて死亡したとみられる

警察は、火事を不審火とは見ていないが、事件捜査に着手した。

地方政府協会によると、全国各地の区役所がそれぞれの地元にある公営高層住宅の安全性確認に着手した。

被害に遭った住民への支援を求めて、ロンドン各地で追悼集会や抗議集会が開かれている。

タワー棟を所管するケンジントン・チェルシー行政区の区役所には、50~60人が押し寄せ、家を失った人たち「今すぐ支援を」と強く求めた。

区役所前の抗議は午後3時ごろに始まり、たちまち膨れ上がった。午後4時半ごろに大勢が区役所の階段を上り、建物内に入った。

集まった一人は、「何がどうなってるのか、誰にも分からなくて、みんなすごく怒ってる。(被害者の中には)道端で寝るしかない人たちがいて、そんなのおかしい」と批判した。

抗議を呼びかけたムスタファ・アル・マンスールさんは、できるだけ多くの被害者に地元で済む場所を提供し、被害者に資金援助をするという行政区の声明を読み上げた。しかしマンスールさんは、行政側の回答を「薄っぺら」で「具体的な答え」が何もないと批判した。

「みんな回答に満足していない」とマンスールさんはBBCに答えた。

「みんなものすごく不満でイライラしていて、建物の方に歩いて行った。無理やり乱入したわけじゃない。区役所のロビーに入って、話していただけだ」

警察が現場に到着しバリケードを設置したため、「お互いぶつかりあう」事態になってしまったと、マンスールさんは話した。

メイ首相は同日、地域のコミュニティー・センターでグレンフェル・タワーの住民たちと面会した。この建物の前にも大勢が集まり、出てきた首相に「恥を知れ!」、「卑怯者!」などの罵声を浴びせた。首相は前日に火災現場を視察した際、被害者と話をしなかったことが非難されている。

野党・労働党のジェレミー・コービン党首やロンドンのサディク・カーン市長は、メイ氏と同じ日に現場を訪れ、住民たちの話に耳を傾けていた。

住民の反応について問われたメイ首相は、「私はいま何よりも、支援を現地に届けることを最優先している」と答えた。「政府は必要な資金を提供している。政府として、原因を徹底的に究明する。住民に住居を提供する。そうしたことが確実に実施されるようにする」と首相は述べた。

メイ首相は500万ポンド(約7億円)の「グレンフェル・タワー住民裁量基金」の創設を発表。焼け出された住民に対して、3週間以内にできるだけ近隣に新居を提供し、その間は仮住まいの費用を負担し、さらに必要な資金援助を提供するというもの。

住民と面会した首相はさらに、15日に発表した原因究明公開調査をどのように実施すべきか住民たちと協議するほか、住民たちの弁護士費用を国が助成することになると述べた。

「この悲劇に影響を受けたすべての人が、政府の支援保証を必要としている。皆さんがひどいつらい思いをしている今、政府は皆さんを支える用意がある。私は何としても、それを実現する」

コービン党首は首相あての公開書簡で、首相が指示した原因究明の公開調査について、「学ぶべき教訓をすべて確実に学ぶ」よう保証する必要があると呼びかけた。

「この恐ろしい火災発生に至るまで、どういう対応がとられたか、あるいはとられなかったのか、すべて調べて検討する権限を(調査委員会に)与える必要がある」とコービン氏は求め、「他の類似建物の安全基準についてどのような対応が喫緊に必要なのかも、(調査委員会は)特定しなくてはならない」と訴えた。

現場近くのラティマー・キリスト教センター前では数百人が並び、犠牲者のために2分間、涙ながらの黙祷(もくとう)を捧げた。

家族と5階自宅から脱出したマハド・エガルさんは、「最初はすぐ収まるかと思ったのに、建物の外装材に火が付くと、あっという間に上に燃え広がっていった。自分たちが助かったことが信じられない」と話した。

議会や官公庁の並ぶウェストミンスター地区でも大勢が集まり、首相官邸のあるダウニング街へと向かった。「グレンフェルに正義を」、「メイは辞任を」、「犠牲者の血はお前たちの手に」などと繰り返しながら、官庁街ホワイトホールを平和的に行進していたが、ダウニング街に入る前に警察に制止された。

その後は北へ、観光客や買い物客で混雑するオックスフォード・サーカスへ進み、座り込みの抗議を続けた。BBC本社前で1分間の黙祷を捧げた後、西へ進み、火災現場のランカスター・ゲートへと到着した。

抗議行進は議事堂広場から始まった
抗議行進は議事堂広場から始まった

16日にはエリザベス女王とウィリアム王子も、現場近くのウェストウェイ・スポーツ・エンターを訪れ、ボランティアや住民、地域代表と面会した。

女王は、消防士たちの「勇気」を称え、支援を提供するボランティアたちの「素晴らしい思いやり」を称賛した。

(英語記事 London fire: Protests held as fire anger increases

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