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視聴者の好みを「先読み」するネットフリックスの強み

Jon Markman ,CONTRIBUTOR

1997年、カリフォルニア州のスコッツバレーにある小さな企業が、革新的なビジネスモデルを掲げて創業した。データによってメディアの一般的な利用の仕方を変えようという画期的なアイデアを打ち出したこの企業が、リード・ヘイスティングスとマーク・ランドルフ率いるネットフリックスだ。

宅配DVDレンタルの小規模なネットビジネスから始まった同社の事業は、順調に滑り出した。だが、そこにはジレンマも生まれた。レンタル用の在庫に追加できる新作が不足していたのだ。そこで同社は人気度ではなく、加入者の好みをベースに作品を選び、紹介するアルゴリズムを編み出した。

2006年には、新たに貸し出す作品に占める新作の割合は、30%未満となった。これこそが、高度なコンピューター技術に基づく新たな時代のパワーだ。データ解析と予測モデリングは起業家たちに、強い確信に基づく新たなビジネスモデルの構築を可能にする力を与えたのだ。

そして、ネットフリックスが掲げたアイデアは、どれほどの富を生み出してきただろうか。同社は今年、株式公開から15周年を迎えた。

デジタルマーケティングを専門とするアモビー(Amobee)の主任ブランド・アナリスト、ジョナサン・コーエンはネットフリックスが成功した主な要因について、同社が採用する「消費者を理解するための分析手法」が競合他社より優れていた点を挙げている。さらに、DVDレンタルからストリーミング配信へ移行したことも、同社のそうした強みをさらに前面に押し出すことにつながったと見ている。

集めたデータを活用

ソファでくつろぎながら視聴したい作品のリストをチェックしている時、加入者はネットフリックスのエコシステムのことなど全く意識していない。だが、ネットフリックスはその人がどの作品のあらすじを読んだのか、どのくらいの時間をかけて作品タイトルを閲覧し、結局どの作品を選択し、視聴時間はどのくらいだったのかも記録している。あらゆるネットワーク・データを駆使して、加入者を引き付け、ネットフリックスでの経験をさらに豊かなものにしている。

収集したデータは、新しいコンテンツの開発や作品ライセンスの取得、マーケティングにも利用される。そして、ネットワーク・データは、同社が個々の加入者向けにパーソナライズされたサービスを提供するナローキャスティングを中心とするビジネスモデルを構築することを可能にしている。そのため同社には、広告収入に頼るその他のネットワークのように、大ヒット作を手に入れる必要がない。

ネットフリックスの加入者は今年4月、1億人を超えた。2013年に同社が初めてオリジナルドラマ「ハウス・オブ・カード 野望の階段」の配信を開始した時から、約3倍に増えている。売上高は2013年の43億7000万ドル(約4777億円)から、2016年にはおよそ88億3000万ドルに増加した。

成長と業界への影響

ネットフリックスは、映画界でも有力な存在になっている。米経済専門局CNBCが2016年10月に伝えたところによれば、同社は2017年、コンテンツビジネスに60億ドルを投じる予定だ。ディズニー傘下のスポーツ専門チャンネルESPNに次いで2番目の規模となる。

宅配レンタルDVDの小さな会社がここまで成長するまでは、長い道のりだった。今ではネットフリックスが開発したアルゴリズムに基づくお勧め作品の選定や加入者ごとに設定される作品リスト作成の方法をまねる企業も登場している。つまり、これらは現在、デジタルメディア配信のスタンダードとなっているのだ。

さまざまなことが可能になった現代は、投資家にとって刺激的な時代だ。作品の制作者たちは従来のビジネスモデルに縛られることがない。データ解析は製作者たちに、新たなビジネスモデルを生み出すことを可能にしている。そして優れたビジネスモデルには、将来がある。

ネットフリックスのヘイスティングスCEOは2016年、米紙ニューヨーク・タイムズに対し、「いずれは(米映画館チェーン大手)AMCも、独自のオンデマンド・ストリーミング・サービスを提供できるようになるだろう」との考えを示した。「DVDレンタルと同様、コンテンツをただ再放送するだけの企業には長期的なビジネスが見込めないことは分かっていた」という。

ネットフリックスは、現代社会の紛れもない現実だ。そして、重要なプラットフォームでもある。

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