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「ちょいワルジジ」を擁護する人がいない理由 - 網尾歩 (ライター)

雑誌のモテ指南はネットではウケない。また繰り返された大炎上。

「お尻をツンツン」
それはセクハラです

 ネット上で批判が噴き上がるのが「炎上」であるわけだが、炎上事例の多くは擁護意見も多い。擁護派と批判派の意見が対立することで、炎上がさらに大きくなる光景もよく見かける。しかし今回の「ちょいワルジジ」に関する炎上は、これまでのところツイッター上ではほぼ批判一色というところである。

 炎上した記事はNEWSポストセブンが6月10日に配信した「「ちょいワルジジ」になるには美術館へ行き、牛肉の部位知れ」である。流行語「ちょいワルオヤジ」「艶女(アデージョ)」を生んだ編集長・岸田一郎氏が『GG(ジジ)』を新創刊するにあたり、ひと足早く「ちょいワルジジ」になるための方法を指南するという内容だった。

 現在のところ該当記事は削除されずに残っているので詳しくは原文を読んでいただきたい。2017年の炎上記事としてかなり完成度が高いので一読をおすすめするが、万が一の削除に備え、主な炎上ポイントについて内容の要約を行うと次の通り。「」内は原文から引用。

・美術館に1人で訪れている女性をナンパしよう。その理由の一つは「一人1500円程度だから」コストもかからない。
・鑑賞している女性に対して「ガイドのように知識を披露する」。曰く、美術館には"おじさん”好きな知的女子や不思議ちゃん系女子が多いので狙い目。
・この後は、自然な流れで食事に誘え。
・食事の場でも、鮎の塩焼きの食べ方など粋な作法を「教えてあげると若い女性は感心するわけです」。
・「牛肉の部位を覚えておくのもかなり効果的」。イチボはどこの部位?と聞かれたらお尻をツンツンできる!
・「いまの50〜60代というのは生まれながらにして経済的に恵まれてきた“奇跡の世代”。若いうちからいろいろなモノや遊びに触れてきて、造詣が深いのだから引っ込んでいたらもったいないですよ」。

 ツイッター上で寄せられているコメントは非常に厳しい。

 「控えめに言って好きな作家の絵を見てる時に1番されたくないこと全部されてるので消えて欲しい」というツイートは1万回以上リツイートされ共感を集めており、「この手の暇人にしつこく絡まれたら、案内係か受付に『知らない人に声をかけられて、安心して見学できない』と言えば警備員を呼んで対処してくれます」と「不審者への対応術」を説いたツイートも約8000回のリツイート。

 他にも、「ダサすぎて脱力する」「老害テク」「セクハラ概念がなかった時代の人」「ドン引き」と、男性からも女性からも散々な言われようである。

ネット文脈を読まない雑誌編集者たち

 インターネット上の炎上をあまり知らない人の中には、なぜこの記事がここまで炎上するかわからない人もいるかもしれない。一昔前であれば、こういった記事は普通に読まれていた。主に男性誌、女性誌の中で。それこそ、岸田氏が手がけてきた『LEON』や『NIKITA』では、こういった指南こそが読者が求めていたものだったのだろう。岸田氏は同じように語ったまでだ。

 雑誌の中でもてはやされた恋愛テクが今や大炎上する根底には、薄っぺらい虚構を語るメディアへの嘲笑があるのだろう。マスコミが上から目線でモテ指南や各種ノウハウを説くことができる時代は今や完全に終わっている。一般人が自撮りをし、自己プロデュースをし、ツイッターやインスタグラムで何万人ものフォロワーを獲得できる時代。そして、「男心をつかむモテしぐさ10」といったお手軽モテ指南の無料コンテンツは量産され尽くされ、誰もが飽き飽きしている。こんなものは「誰にでも言えることだ」とネットユーザーの全てが気付いており、消費者目線まで降りずに語ろうとする「業界人」に、ネットユーザーは非常に冷たい。

 さらにこの記事には、若い女性に「教えてやる」という上から目線、知ったかぶりなマナー指南、会話に乗じた一方的なセクハラ行為など、ほぼ一行ごとに炎上する要素があるのだから救いようがない。

 個人的には、これがもし狙った炎上記事なのであれば(その可能性はほぼゼロだろうが)、締めの部分で「50〜60代は経済的に恵まれてきた奇跡の世代」と書くのが非常に秀逸な煽りだと感じた。バブル世代以上に対する氷河期世代以下の憎悪たるや。これが雑誌であればターゲットである50〜60代ばかりが読むのだろうし、感想もすぐにはシェアされない。しかしこれはネット記事なのだ。経済的に恵まれてきた奇跡の世代なら、美術館ならコストもかからないとかせこいこと言うなと突っ込まれもするだろう。

 ちなみに、ネット上では今から5年以上前、2012年の時点ですでに「文化系説教ジジイにモテない方法」というまとめが作成されていた。これは作家の柚木麻子さんが、女性に対してとうとうと蘊蓄を語る厄介なジジイの具体例と対処法をツイートしたもの。このように、「知識をひけらかす年長者はうざい」「説教に見せかけたパワハラセクハラを許さぬ」というスクラムが着々と組まれてきた土台がある。

 雑誌の文脈をそのままネット上に持ち込むのが危険であることは以前から指摘されてきた。そのあたり雑誌の編集者もそろそろ注意してはどうかと思うところだが、恐らくネットでの炎上は雑誌の購買部数に影響は与えない。何人かのネットユーザーが指摘する通り、当のちょいワルジジたちはツイッターなどやっていないのであろうところが、また頭の痛いところだ。

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