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産業保護政策の日米比較

8日の日経朝刊の1面、「ゆがむ秩序(下)、保護主義の波」にざっと目を通していて、つい笑ってしまった。僕のコメントが引用されていたから。「米国は競争力が低下した分野を官民で保護したがる」とあった。いつのコメントだったか。

トランプ政権が発足してすぐの頃、取材があった。日米の通商摩擦の歴史に関する取材だったと思う。それに対して、日米の通商摩擦は、米国の競争力が低下した分野で生じてきたと答えた。そう思っている。このコメント、そんなに的外れでないだろう。

しかし、このコメントだけを、通商摩擦という流れを抜きにして取り上げられると、アメリカから、また識者から、「では日本はどうなんや」と逆に質問されそうである。日本こそ、競争力が低下した分野を官民で保護しているからである。

最近の事例では、液晶だろう。産業に限定しなければ、特定の企業の経営が傾くと、その企業に公的な支援を行ってきたし、行おうとしている。政府が直接介入するという露骨な政策を避け、民間に奉加帳を回す。同時にご意見番を募り、彼らに経営させる。これらは日常茶飯事である。政府主導の企業合併もある。

この結果、日本の大企業が潰れるのは稀である。この点をとらえると、日本こそ企業や産業保護の権化となろう。アメリカの主張も、このようなものに違いない。

企業が、また衰退産業が生き残ることは望ましいのだろうか。潰れる寸前の企業の従業員からすれば、倒産を免れ、職場を失わないわけだから、「良かった」となる。しかし、この良かったが、本当に良いことなのかはきわめて怪しい。

以前に書いたようにも思うが、1990年代の後半、日本長期信用銀行(長銀)が経営破綻し、多くの人材が広い分野に散っていった。長銀の人材は優秀だったから、今では散った分野で活躍している。それだけではなく、元長銀の人的ネットワークが形成され、そのつながりが大きな財産となっている。

動物もそうだし、企業もそうなのだが、新陳代謝が求められる。企業が潰れないことには、新しい産業が育たない。思うに、求められる産業政策とは、古きを守ることではない。新しい企業や産業の育成である。もちろん、企業が潰れたとき、従業員を救済するための(転職が容易であるように)、労働市場の育成が必要になる。逆にそれさえあれば、企業が潰れることは、むしろ喜ばしい。

そのような目的意識を持ち、産業政策を組み立てることが本来の政府の役割である。もちろん、政府自身の(省庁の)新陳代謝もやらないといけないのだが。

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