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危険な韓国新大統領の北朝鮮戦略 - 岡崎研究所

 ニューヨーク・タイムズ紙の5月11日付け社説が、北朝鮮との対話を提唱する文在寅大統領は、北朝鮮に強硬な姿勢を示しているトランプ大統領と早急に対北朝鮮の共通の戦略を打ち出すよう努めるべきである、と述べています。社説の要旨は以下の通りです。

 文在寅韓国新大統領の北朝鮮についての考えは、かつての盟友である故廬武鉉大統領に近い。廬武鉉は、「太陽政策」を推進し、北朝鮮に対話、援助、共同プロジェクトを通して関与した。
その後金正恩が登場し、核開発を執拗に追求する中で、文在寅は制裁のみでは北朝鮮を抑止できないと考えており、また米中の争いに巻き込まれることを懸念している。

 韓国の米国との摩擦の当面第一の要因はTHAADであるが、文在寅は再検討すると言いつつも、結論を出す前に米国と十分協議すると言っている。全体として文在寅は対米関係重視の姿勢をとっている。文在寅は条件が整えば金正恩と会うと言っているが、この点はトランプと同じと考えている。

 これまでアメもムチも北朝鮮の核抑止追求を止められなかった。米韓中の不和は北朝鮮の動きを促すことになるだけである。北朝鮮に対する文在寅の対話の提唱とトランプの強硬姿勢は、もし両者が明確な共通の戦略を作り出すことができれば、両立できないわけではない。両首脳は一刻も早く、共通の戦略を打ち出すべきである。

出典:‘No Time for Friction With South Korea’(New York Times, May 11, 2017)
https://www.nytimes.com/2017/05/11/opinion/south-korea-president.html

 文在寅韓国新大統領の北朝鮮に対する融和策が、果たして現在の日米、そして中国の北朝鮮政策と整合性を取れるかどうかが問題です。文在寅は制裁だけでは北朝鮮を抑止できないと考えているといいますが、対話も北朝鮮を抑止できなかったことも事実です。

 北朝鮮の核・ミサイル開発を止めさせることが最大の課題ですが、北に対する融和策は、それが開城工業団地の共同事業の復活であれ、北朝鮮に対する経済支援であれ、何らかの効果があるとは考えられません。むしろ、これらの政策は北朝鮮の正統性を認めることを意味し、核・ミサイル開発を中止させるどころか、かえって推進する効果を持つこととなるでしょう。現在の状況の下では「太陽政策」の出番はありません。

アメとムチの組み合わせ

 このように、北朝鮮に対するアメもムチも一方だけでは北朝鮮の核・ミサイル開発を止められないとすれば、アメとムチを組み合わせてはどうかということになります。社説の言う文在寅とトランプの共通の戦略とは、おそらくそういうことなのでしょう。

 そこで、どういう組み合わせが考えられるかが問題となります。トランプは、適切な条件の下で、金正恩と話してもいいと言っていますが、適切な条件とは何かには触れていません。トランプは北朝鮮の核開発は許せないと言っており、北朝鮮は核開発を止めるとは言わないでしょうから、このままでは組み合わせになりません。

 北朝鮮は核の抑止力は北朝鮮の存在に不可欠であるとしており、他方、米国は米国本土に直接脅威を与えるような核・ミサイルの開発は許せないと言っています。この二つの立場に妥協の余地があるとすれば、米国にとって、米国本土に直接脅威を与えるような核・ミサイルの開発がレッドラインで、それ以下の核・ミサイルの開発は黙認する、つまり北朝鮮が核・ミサイルの開発を現状程度で凍結することに合意すれば、北朝鮮との対話に応じる、場合によっては、北朝鮮の望む平和条約の締結にも同意する、ということが考えられます。

 米国のシンクタンクWilson CenterのRobert Litwakが最近の著書で、この方式を提案しています。これは、米国が北朝鮮を核保有国として認めることを意味します。北朝鮮の核・ミサイル開発の中止を要求してきたこれまでの米国の立場と基本的に異なるもので、米国として容易には受け入れ難いでしょうが、北朝鮮があくまでも核・ミサイル開発を止めないということであれば、妥協するとすればこれぐらいしか考えられない、ということにもなります。

 これはアメとムチの一つの組み合わせとして検討に値するものです。しかし、北朝鮮が、必要な核の抑止を「米国を攻撃できる核戦力」と考えているとすれば、この方式も呑まない可能性があります。いずれにしても、文在寅とトランプの共通の戦略がここまで踏み込んだものになるとは考えられず、近々意味のある共通戦略が打ち出される可能性は低いと考えざるを得ません。

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