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加計問題は首相官邸の問題ではない理由

加計学園の事案での問題点は、首相と近い業者(学校法人)が担当役所の厚遇を得て、権利を手中にしていた、という不当性にある、らしい。

首相官邸が役人の人事権を手に入れてから、役所は官邸の顔色伺いを必要以上にするようになり、官邸に近い業者が優遇される事態を招いている、というのが主なストーリーではあるが、これ、システム的な問題であって、現首相周辺の「悪だくみ」or「私物化」といったものではないんじゃないか、と思うわけです。

システム的な問題は、政策決定が官邸主導か霞が関主導か、という単純な二項対立に見立てることができる。

加計は官邸主導の政策決定の例だが、今年4月に新設された国際医療福祉大学(国福大)医学部の設立は霞が関主導の政策決定の例と言える。

国福大の理事長の高木邦格氏はもともと大学時代から衆議院議員の自見庄三郎氏の秘書をしていたくらいの「政治的人間」だが、95年に栃木県大田原市に国福大を設立してからは当地で絶大な権力を誇った渡辺美智雄氏に近づき、そこから厚生省や文部省に触手を伸ばしていった。

その後の病院買収とグループの膨張は政治力を駆使した森友学園張りの「政治的スキーム」(国立病院を時価の1割で買収する等)がてんこ盛りだが、ここでは割愛する。

簡単に言えば、国福大の初代学長は旧厚生省で公衆衛生局長を務めた大谷藤郎氏、副理事長は元文部省事務次官の宮地貫一氏、二代目学長は厚生省で保健医療局長だった谷修一氏等々、そのほかにもこの学園には大量の天下り役人が生息する。
どころか、マスコミ関係者の天下りにもぬかりはなく、朝日の元論説委員、大熊由紀子氏、日経の元論説委員、渡辺俊介氏、読売の元医療情報部長、丸木一成氏等々、学園の食客は多士済々で、まず官僚とマスコミが組めば「医師不足解消のための新設医学部が必要」などといったキャンペーンを張るのはわけもない。
(以上、国福大関係は「選択」5月号が詳しい。)

今回の加計のケースは、霞が関やマスコミに行きわたっていたパイが首相官邸にとられちゃって、マズいんじゃないの、という浅はかな嫉妬もなくはないのでは、と。

しかしまあ、こういった浅薄な問題点ではなくて、本当に深刻な問題は、官邸主導にしても役所主導にしてもどっちに転んでもうまくいくわけではない、というところで、

官邸主導の難点は、その権力を利用しようとする輩が正規の政策決定ルートを飛び越して「忖度狙い」で官邸に近づく可能性がある、という点で、具体例を挙げると、去年12月に日本医師会の横倉会長が安倍首相と電話会談した、との記者会見はモデルケースとみなせる。
https://medical-tribune.co.jp/news/2016/1229506118/

この記者会見では「診療報酬改定は中医協で議論すべきだ。」と首相に伝えたといっているが、もともと診療報酬改定は中医協で決めるものなので、わざわざこんなことを言うために電話をしたのではないのは明白である。

診療報酬改定がらみの「陳情」であった可能性は高いが、そうではなくても、何の意味もない記者会見をするのは他のプレーヤー(保険者サイド、薬剤師・看護師・歯科医師サイド、患者サイド)や官僚に対する威圧にもなる。

というのは、威圧やプロパガンダは官邸の政治力が強い(ところと昵懇であるとのアピール)という前提で成り立つ政治テクニックだからだ。
(むろん、この記者会見は保険組合や薬剤師会や患者の会の連中は首相に直接アポがとれるような場所にはないことを含意している。)

方や、霞が関の権力構造は首相官邸ほど単純ではないので、役所主導の政策で優位に立つには、「天下りの受け入れ」という古来の慣例に従う方法が最も効率的といえる。

官邸主導、役所主導、どちらの政策決定においてもこういった政治テクニックに長けた業者が絡んでくるので、なかなか一筋縄にはいかないが、透明性の確保はできるだけあったほうが良いだろう。

実地の専門家と政策策定の政治機関は連携しなければ政策の実行は不可能だが、どさくさに紛れて公平性がないがしろにされる事態をさけるためにも、透明性が確保できる補助的なシステムが必要なのではないか、と思う。

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