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受刑者による刑務所発Podcastの発信間近

日本ではなかなか流行の兆しは見えませんが、米国では4人に1人が聞いているというPodcast。内容もバラエティに富んでいますが、今度はカリフォルニア州立刑務所発のPodcastが14日から始まるそうです。

発信元はサン・クエンティン(San Quentin)刑務所で、Podcastのタイトルは「Ear Hustle」。スラングで「盗み聞き」といった意味だそう。製作スタッフは、受刑者2人に州立カリフォルニア大学サクラメント校のNigel Poor教授の3人組。

これが話題になっているのは、米国の公共ラジオ局のネットワークを基盤とする、PodcastのプラットフォームRadiotopia主催のアイディアコンテストPodquestで、この3人組のプランが1537作品の中で優勝した実績があるからです。賞金は1万ドルでした。

三人組の写真はこれ。左が懲役31年以上終身刑のWoods、右は武装強盗で懲役18年のWilliams。中央はPoor教授。

これを伝えたHuffingtonPostの記事によると、Poor教授は、以前、地元の公共ラジオKALWの番組「San Quentin Prison Report」で二人と一緒に仕事をしたのがPodcast計画のきっかけだったそうです。

さて、その”盗み聞き”のシーズン1は10回シリーズで、製作が進行しているようですが、形式はWoodsと教授が共同ホストで対話し、Williamsが録音技術を担います。内容は、HuffPoの記事によると「受刑者特有の経験や困難さを掘り下げる」とのことで、例えば、投獄が記憶にどんな影響を及ぼすとか、監獄で祝日をどう祝うか、あるいは聖職者が死刑囚にどう接しているか、などをあげています。

また、先のRadiotopiaのリリースには「鉄格子の向こうの日常生活、どうして人が犯罪を犯し入獄に至ったかの理由を掘り下げる」とし、トピックとしては「ペット、刑務所内のファッション、料理から更生のための司法システム、刑務官、被害者団体で働く人のプロフィールまで」とあります。

なぜ、発信するのか。Poor教授は、地元サクラメントのメディアNewsReviewのインタビューに「囚人と、そうでない人が本当に敬意を持ってプロフェッショナルな関係を持ちうるかが私の関心事であり、最もクールなこと」と答えています。

そして、このPodcastを通じて「刑務所の意味は何か、刑務所に何を求めているか、刑務所内でのリハビリを信じているか、犯罪を犯した人を同じ次元の人々として見られるか、彼らを、犯したことで決めつけずに何らかの共感を持ちうるか」等々をリスナーに考えて欲しいと言っています。

思いは強いようですが、実際の作業は大変なよう。Poynterの記事によると、受刑者はインターネットも電話も使えません。なので、打ち合わせだけでなく、細かな連絡もPoor教授が刑務所に出かけるしかないのです。

また、刑務所当局の決定は事前に受刑者には一切、伝えられないので、話題に取り上げた囚人が突然、出所したり、事情が変更になった時の対応も大変だということです。

ここまで書いてきて、受刑者と社会をつなぐ、随分と真面目な取り組みなことを実感します。Timeの「A Prison That Offers Hope(希望を提供する刑務所)」によると、San Quentinの受刑者は4000人なのに対し、出入りするボランティアは3000人にも達するそうです。そのボランティアから「受刑者はシェイクスピア劇を演ずること、怒りの管理法を学び、ヨガ、楽器演奏、新聞製作、大学の単位取得、ソフトウェア・エンジニアリングまで学べる」と書いています。

実は、San Quentinと聞いてすぐに思い出したことがあります。このブログで、過去2回、取り上げているのです。最初は2013年12月の「1930年の塀の中の新聞とUCバークレー校が協力する今の刑務所新聞」、2回目が2014年12月の「刑務所育ちのプログラマーを世に出そう!」でした。

前者で紹介した刑務所新聞San Quentin Newsに関わる受刑者のうち13人が2015年にSociety of Professional Journalistsメンバーに認定されました。後者で紹介したコンピュータプログラミングを学んだ一期生の18人は全員、コースを卒業し、この講習を実施した会社が設立したジョイントベンチャーTne LastMile Worksと雇用契約を結び、クリスチャンサイエンスモニター(CSM)の記事によると、受刑者の一人は時給16.77ドルで働いているそうです。家具製造などの従来の作業の賃金はせいぜい時給1ドルだそうですから段違い。

このように、プロのジャーナリストとして認められたり、プログラマーの実績を積むこと、さらにPodcast製作のキャリアを積むことは、社会復帰した際に、再び悪事に手を染めて刑務所に逆戻りする可能性を大幅に減らすに違いありません。まさに、それこそが、サンクエンティン刑務所が多彩なプログラムを展開している理由な訳ですが。

先のCSMの記事によると、コンピュータプログラミングの講習は、昨年末の段階でカリフォニア州で5つの、ワシントン州で2つの刑務所で行われるようになったそうです。

日本での更生プログラムや日常はどうなのか。もしPodcastで受刑者からの発信があれば、日本でもPodcastが流行るきっかけになるかもしれない、と妄想してしまいますが・・・。

*なお、Ear Hustleの受信とメーリングリストの申し込みはここからどうぞ

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