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食中毒に注意!健康なビジネスパーソンでも「これだけは気をつけたい」こと 急増するアニサキス、「生食」のリスク - 佐藤達夫(食生活ジャーナリスト)

 食中毒の患者(被害者)は、子供・高齢者・病人といった「健康弱者」に多い。働き盛りのビジネスパーソンにはあまり関係がないと思っているかもしれないが、油断するが故に陥りやすい落とし穴もある。

夏期も冬期も食中毒は発生する

 昔から6月に入ると「食中毒の時期到来」と話題になる。たしかに、かつては、気温も湿度も高くなる6月くらいから食中毒が増え、涼しくなる10月を過ぎるまでは高い発生率が続いていた。衛生環境が整っていない時代には、高温多湿の日本では、この時期に食中毒が多発することは避けられなかったであろう。

 しかし、冷蔵庫が普及し、流通システムが発達し、保存料などが開発され、食品の安全性に関する環境が整ってきてからは、とりわけ夏場に食中毒が多発するという強い傾向は見られなくなった。このところ、毎年大きな話題となるノロウイルスによる食中毒は、12月がピークとなる。

 一般的に、食中毒は原因から見て、大きく3つに分類することができる。

1:細菌を原因とする食中毒
2:ウイルスを原因とする食中毒
3:その他(自然毒や寄生虫や化学物質など)

 1の細菌には、サルモネラ属菌、カンピロバクター、腸管出血性大腸菌、ブドウ球菌、ボツリヌス菌などがある。これらは「生物」なので、水分が多く(湿度が高く)、生育に適正な温度がある夏場に多く発生する。一方で、2のウイルス(ノロウイルスなど)は、厳密にいうと「生物」ではないので、生育に適正な気候条件とは関わりがないために、夏場に多く発生するわけではない。むしろ、体温の低下でヒトの抵抗力が下がったり、カキなどの貝類を食べる機会が増えたりという「食べる側の都合」によって、冬期に多く発生すると考えられている。

 これらの内容について詳細を知りたい人は厚生労働省の報告【※1】を見てほしい。

獣肉の「生食」は絶対にダメ!

 食中毒の予防はきわめてシンプルだ。肥満症などのように「長年の食習慣の積み重ねであるがゆえに一朝一夕にはどうにもならない」というわけではない。細菌の場合は「つけない」「増やさない」「やっつける」の3原則を徹底すればよい(ウイルスの場合は「生物」ではないので「持ち込まない」「広げない」「つけない」「やっつける」と少しややこしくなる)。

 さらには、食中毒を予防するために、食品の購入から摂食までに気をつけたい「6つのポイント」というものも提供されてある【※2】。これらは、主として、家事を預かる人向けの注意事項。きわめて重要なポイントだが、ここではとりわけビジネスパーソンが陥りやすい点に絞ってお伝えしたい。

 まずは何といっても「生食」を避けることだ。細菌は「生物」なので十分な加熱(75度で1分以上)によって殺すことが最大の「無害化対策」だ。日本には刺身という、世界でもまれにしかない食文化があるが、加熱をしていない「生食」が食中毒の最大のリスクであることには変わりがない。魚介類を生で食する刺身は、生産から喫食まで、きわめて高度な知識と技術に裏打ちされた経験者によって、はじめて(比較的)安全に食べられる食文化だ。教育や経験が十分ではない臨時従業員が提供する「生もの」はけっして安全ではないことを肝に銘じよう。

 牛肉の生食を法律で禁じたときに「食文化を法律で規制すべきではない。個人の責任において食べられるようにすべきだ」という意見もあったが、そもそも日本には「獣肉を生で食べる食文化」が定着しているわけではない。そのことよりも、O-157などという命に関わる食中毒予防を法律で定めるのは当然であろう。肉(筋肉)よりもさらに危険性の高い内臓類(レバーなど)を生食するなどは、論外である。

 牛の生食を規制すると、法律では規制されていない豚や鶏の生肉を食べたりする人がいるようだが、これらもけっして安全だというわけではないので、避けるほうが賢明。

魚介類の「生」にも厳重に注意

 魚の生食、つまり刺身はどうだろうか? 前述したように、たしかに日本には魚を生で食べる食文化があり、そのための知識や技術が蓄積されてある。しかし、外食産業や流通産業の形態が大きく発展・変化したために、魚介類の生食にも(新しい?)リスクが生じてきた。生産地でしか食べられてこなかった魚介類が、はるか遠くの大都会でも提供されるようになると、食品中の細菌類が増殖して食中毒の可能性が高まることは十分に考えられる。

 また、生産地とは異なる食べ方をすることによっても食中毒のリスクが増すケースもある。たとえば、ホタルイカは寄生虫の食中毒が知られているため、地元では生で食べることがほとんどないのだが、「生食嗜好」が強い東京地区では生で提供されることが少なくない。「うちのホタルイカは新鮮だから」という言葉に釣られてたくさん食べると、寄生虫に当たる可能性も高くなる。生きているホタルイカにも寄生虫はいる。

 最近、アニサキスという寄生虫の食中毒報道が増えてきた。サケやイカなどに寄生することが知られている。十分な加熱や冷凍、あるいは包丁などで切ってしまえばほぼ死滅する。北海道でイカの刺身をイカソーメンと呼ばれるくらいに細く切るのはアニサキス対策の知恵だと考えられている。同様に北海道では、サケの刺身もルイベと呼ばれる冷凍ものしか食べない。

 都会のサケの刺身も解凍もの(つまりはいったん冷凍ずみ)のはずなので大丈夫ではあろうが、客の中には「サケは刺身で食べてもOKなんだ」と誤解する人も出てくるだろう。ちなみにアニサキスなどの寄生虫は、わさびや酢などでは死なないので、これらは予防対策にはならない。

 貝類、とりわけ生食することの多いカキにも気をつけたい。市販されているカキには「生食用」と「加熱用」がある。勘違いをしている人があるようだが、この両者は「鮮度の差」ではない。「細菌数の差」である(より正確にいうと、大腸菌数が一定数以下の海域で生育したカキが「生食用」)。なので、いくら鮮度がよくても「生食用」と書いてないものは必ず加熱して食べる必要がある。極端な話、海に遊びに行って、潜って岩ガキを見つけて採取したとする(違反だが)。これは細菌数が不明なので、とれたてだからといって生食してはいけない。

 さらにいうと、「生食用」のカキは細菌数は少ないが、ウイルスを持っていないという保証はない。生食用であっても、たとえばノロウイルスを保持しているために食中毒を起こす可能性もある。「それじゃ、生ガキは食べられないじゃないか!」と憤慨する御仁もおられようが、「ごくごく少量にしましょう」とお答えするしかない。ちなみに私は、生ガキは大きなものなら1つ、小さなものでも3つ以上は食べない(この数値に科学的根拠はない)。

食中毒予防の基本は「加熱して食べる」こと

 冒頭に書いたように、食中毒の「重篤な被害者」は子供・高齢者・病人に多い。健康な成人は食中毒患者とはなっても、大事には至らないことが多い(体調が悪かったり、原因によっては大事に至ることもあるが)。なので、【※1】【※2】にあるような食中毒予防対策を律儀に実行するのは、現実的ではなかろう(もちろんやるに越したことはない)。

 健康な成人でなおかつ多忙なビジネスパーソンといえども「これだけは気をつけてほしい」というのが生食を避けることである。生食をしたからといって必ずしも食中毒になるわけではないが、「いたずらに生食をするという食習慣」が身についてしまうと、体調がよろしくないときにもついつい生食をしてしまって大事に至るリスクが高まる。

 本人が健康体であるために、食中毒の原因となる細菌やウイルスを持っていても症状が出ないこともある(無症状キャリアという)のだが、子供や高齢者や病人にうつしてしまうこともある。また親の食習慣は「生食」に限らず子供に強く影響するので、判断力を持たない子供が平気で「生食をする」ようになる危険性もある。

 食べ物は「基本的に加熱」して食べる、という習慣を身につけたい。

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