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過去の"重大事件"にピンと来ない若者たち

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■神戸連続児童殺傷事件から20年

神戸連続児童殺傷事件において最後の被害者となった土師淳君(当時11歳)が命を奪われた日から、ちょうど20年が経過した今年5月24日、淳君の父である守さんは手記を公表した。

当時中学生だった犯人の少年A(犯行声明文では「酒鬼薔薇聖斗」と自称)は、2015年に作家ワナビー感満載の手記『絶歌』を突然発表。遺族・被害者に事前説明などもないまま出版されたことから、多くの批判を集めた。同書の出版以降、守さん夫妻は淳君の命日ごろに酒鬼薔薇から毎年届く手紙を受け取らないようにしたという。

この事件は20年前の日本を激震させたが、大事件というものは、その当時子どもだった人や生まれていなかった人にとっては、どうもピンと来ないものであるらしい。

■「何がすごかったのですか?」

最近、2つの過激派関連事件がクローズアップされた。まずは1971年の「渋谷暴動事件」。そこで警官を殺害し、放火をした罪などで指名手配されていた中核派の大坂正明と見られる男が、広島市内で公務執行妨害により5月23日に逮捕された。次に、1974年から1975年にかけて、三菱重工業東京本社ビルなど財閥系企業や大手ゼネコンの建物が次々に爆破された「連続企業爆破事件」。この事件で殺人などの罪に問われた東アジア反日武装戦線の大道寺将司死刑囚が、5月24日に多発性骨髄腫により死亡した。

この2つの事件について、1973年生まれで現在43歳の私にはリアルタイムな記憶がない。成長してからの伝聞で「そういうことがあったらしい」程度のことは知っているものの、詳細を深く把握しているわけではない。たとえば後者の事件については、『狼の牙を折れ 史上最大の爆破テロに挑んだ警視庁公安部』(門田隆将・著)を通じて多くの情報を得ることができる。だが、多くの同世代にとっては、正直なところ、あまりなじみがない事件だろう。ましてや、現在の若者にはまるでピンと来ない出来事だと思われる。

同じように、先述した神戸の事件や、1995年に頻発に報じられたオウム真理教関連の事件についても、若者のなかにはその重大性や社会的な影響に、どうもピンと来ていない人が多い。「何がすごかったのですか?」「なぜあなたたちは、そんなに熱っぽくこれらの事件について語るのですか?」と尋ねられることもある。

そこで今回は、オウム真理教、神戸の事件の際に20代前半だった人間が感じた、当時の衝撃を敢えて振り返ってみたい。たとえ当事者ではなくとも、その頃の空気を知っている者は“語り部”として、当時の状況を後進に伝えることが必要かもしれない──そんなふうに考えるようになったからだ。

■「松本サリン事件」の“松本”を曲解していた人

過去にあった大きな出来事について、自分なりに語り継ぐということを意識し始めたきっかけのひとつは、長野県松本市へ行ったときの経験である。

オウム真理教は、長野地方裁判所松本支部官舎を狙い、化学兵器として用いられる神経ガスのサリンを撒いた。これにより事件直後に7人が死亡(最終的には8人が死亡)した。官舎の脇を歩いていたとき、私が「ここが1994年夏に起きた松本サリン事件の舞台となった場所ですよ」と同行していた30代前半の女性に伝えたところ、彼女は「えっ? どういうことですか?」と聞き返してきた。

私は彼女の質問の意味が分からなかったので「いや、どういうことってどういうことですか?」と尋ねた。すると彼女はこう言う。

「オウム真理教の教祖だった麻原彰晃の本名は松本智津夫であり、オウムの一連の事件はその松本が首謀者だから『松本サリン事件』というのだと思っていました」

■松本が首謀者だから「松本サリン事件」?

つまり、「松本サリン事件」という上位概念がまず存在し、その下に「地下鉄サリン事件」があると思っていた、というわけだ。私が「松本市で死傷事件があったから『松本サリン事件』と言うのですよ」と答えると、彼女は「えっ? ウソでしょ? 本当ですか?」とスマホで検索をはじめた。そしてほどなく、「あっ、本当ですね……。そういうことだったのですか……」とようやく納得したようだった。

彼女は松本サリン事件の発生当時、11歳だった。それを思えば、このような曲解もやむを得ないのかもしれない。とはいえ大人になった現在、それなりに社会問題に興味を持っている人物であり、職業はライターなだけにそれなりに知識が求められる仕事をしているのだが、認識としてはこの程度だったのだ。しかし、それを「無知」と断じたいわけではない。各人が生きた時代や経験に応じ、知識や記憶の差はあるというだけの話だ。そしてだからこそ、人はきちんと過去の事実を把握しようとする姿勢を持つべきだし、できれば当時の世相や空気感も知っておいたほうがいいということだ。

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