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加計学園問題、国家戦略特区が悪いのではない

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 国家戦略特区に5回提案して、4回通っている、認定NPO法人フローレンスの駒崎です。
 先日、「加計学園問題は、本当に問題なのか」という記事で、自身の経験を振り返り、加計学園問題が原因で特区での改革にブレーキが踏まれる懸念を示しました。

【悪者になる国家戦略特区】

 しかし、悪い予感は的中するもので、民進党は「国家戦略特区廃止法案」提出へ加計学園の獣医師学部新設の妥当性が、国家戦略特区制度自体の妥当性に話がすり替わってしまいました。
民進、加計問題巡り特区廃止法案提出へ
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS31H30_R30C17A5PP8000/
 そこで、おそらく国家戦略特区制度を日本で一番活用してきた立場から、巷で言われている「疑惑」について、改めて説明の補助線を引いてみたいと思います。

【内閣府が急かすことは悪いことか】

 今回、加計学園の案件において、内閣府が「平成30年4月開学を前提に、逆算して最短のスケジュールを作成し、共有いただきたい。官邸の最高レベルが言っていること」と文科省のお尻を叩いたことが問題視されています。

 「官邸の最高レベルが言っている」と内閣府が言うこと自体は、国家戦略特区が総理をトップとする仕組みなので、全く問題がないことは、先日の記事でお伝えしました。

特区スキーム図.png

 一方で、内閣府が急かすことはけしからん、ということですが、僕が出した国家戦略特区のケースでも、内閣府は「次の会議までにちゃんと納得のいく答えを出してきてください」と、厚労省等のお尻を一生懸命叩いていました。

 例えば、保育士試験の2回化の要望の時は、「保育士試験は、試験会場に大学を借りていて、それが夏休みだから安く借りられているけど、2回にすると安く借りられないから無理」という、「なんじゃそれ」という理由で厚労省は抵抗してきました。

 それが論破されると、今度は「試験を2回にしても、試験を受ける人の総数は変わらず、2回に分割されるだけなので意味がない」という謎理論で抵抗してきました。(結果としては試験の機会が増えたことで、総数も増えた)

 このように、規制を壊される側の省庁は、特区での規制緩和は嫌で、あまり理屈にもなっていない理屈を次々に繰り出しのらくら抵抗してくるので、内閣府側としては期限を区切って、議論を行っていくしかないのです。

【嫌われる国家戦略特区】

 「元文科事務次官の方が、国家戦略特区での決定に異を唱えていてスゴい」ということになっていますが、これも報道と現実の温度感の差が大きいように思います。

 エピソードをお話ししましょう。某省のある管理職の方とこういうやりとりをしました。

官僚:「駒崎さん。特区とかじゃなくて、普通に提案してくださいよ。僕たちも聞く耳持ってないわけじゃないんですから。」
駒崎:「でも、審議会でも提案しましたし、こうやって直接ご提案も差し上げています。にも関わらず、進捗が見えないので、国家戦略特区で出すしか道が無いのです」
官僚:「特区出したら、それこそ全力で抵抗しますよ」
駒崎:「なぜそんなに特区が嫌いなんです?」
官僚:「あいつら、霞ヶ関中の嫌われ者ですよ。何も分かってないのに、人の領域に土足で踏み込んできて・・・」

 この官僚の方はとても優秀な方で、いつもはそんなに激しい言葉遣いをする方でもなかったので、逆に印象に残りました。

 官僚の世界には、省庁間で厳密にナワバリに線が引かれていて、それを犯すことはタブーです。しかし、国家戦略特区は、そのタブーを犯し、省庁の縄張りにヨソ者が入っていて、「これおかしくない?」「意味あるの、これ?」とツッコミを入れていくわけです。

 国家戦略特区およびその担当者が、改革される側の省庁から嫌われるのも、よく分かります。けれども、では嫌われることは悪いことでしょうか?

 いえ、省庁に嫌われてでも、やらなきゃいけないことは当然あるのです。保育士試験は2回にしたことで、2回目試験合格者は保育士資格取得者の10%まで伸びました。

 僕も特区担当者も厚労省から嫌われていますが、保育士不足の今、やった方が社会にとって良かったのは明白だったと思います。

【決め打ちは悪いのか?】

 「加計学園ありきじゃないか」という批判もあります。これも、僕にはよく分かりません。世の中にはリスクを取って新しい事業をしよう、という事業者は多くはありません。

 例えば、僕たちが提案し、実現した要望に「往診16キロ制限の廃止」というものがあります。
 これは、医療機関が患者の家に行って診療する「往診」という行為が、なぜか16キロに制限されていた、というものです。

 なぜフローレンスが、この規制に頭を悩ませていたかというと、フローレンスは熱を出した子どもの家に保育士を派遣する「病児保育」を行っているのですが、安全のために医療機関と連携して、子どもの家に往診に来てもらっています。

 そうすることで、リスクの高い病児保育に、医療の手が入り、安全性が高まり、子どもたちの命が守れていくし、親にとっても安心だよね、となるわけです。

 けれど、その往診がなぜか16キロに制限されていて、フローレンスの病児保育のカバーエリアである首都圏全体に往診に行けない壁にぶち当たっていました。

 厚労省医政局に「なぜ16キロに制限しているんですか?」と聞いても、「この規制自体つくられたのが昔すぎて、理由が判然としません」ということで、根拠がよく分かりませんでした。

 ということで、特区に提案し、厚労省の大きな抵抗は受けましたが、内閣府の特区担当者がきっちり厚労省を急かして議論の場を設定し、最終的には16キロ規制が撤廃されたのでした。

 ここで注目したいのが、16キロ規制で困っている訪問型病児保育の事業者は、フローレンスしかいなかった、ということです。しかし、6000世帯の会員を持つ、全国最大の病児保育団体の病児保育の質が大きく上がることには、一定の公益性があると判断されたのです。

 また、未来においてもフローレンス同様に往診の仕組みを使って、病児保育や障害児保育の安全性を高めていくことが可能になりました。最初はリスクをとっている一つの事業者のためだけかもしれませんが、そこで明らかになった制度的矛盾を正すことは、後の後続事業者達にとってもメリットのあることではないでしょうか。

 もちろん、加計学園の場合は、京都の学校が手を上げていたのに、後から選考基準が示されて一つに絞られて、それは不当では無いか、ということなので、我々のケースと違うかもしれません。

 ただ、「特定事業者のためだけではないか」という批判自体の妥当性については、フローレンスのケース(やその他多くのケース)でも、「リスクを取って規制を突破しようという事業者はそもそもそんなにいない」ということを頭の隅に置いた上で、考えてもらいたいな、と思います。

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