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真の勝者は誰か ~加計学園問題を遠目に眺めて~

森友学園が懐かしくなるくらい、今度は連日、加計学園の問題が国会・メディアを賑わしている。

森(もり)から、加計(かけ)に来たので、次は「ざる学園」?と、蕎麦(そば)つながりのくだらない推測までしてしまう。 冗談はさておき、既に行間に書いているようなものだが、今回の一連の騒ぎについての私の正直な感想を書けば、「バカバカしい」の一言に尽きる。

私は、6年半前まで約14年にわたって国家公務員であったが、残念ながら(幸運にも?)、特区の担当をしたこともなければ、文科省への出向はおろか、同省の職員と一緒に仕事をしたことすらない。従って、読者諸賢以上に、本件について何か「すごい情報」をもっているわけではない。ただ、素人でも分かるのは、この問題は、本来、国権の最高機関である国会で、多大なる時間その他の資源を使って議論する話ではない、ということである。

私なりに理解する「ことの本質」を簡潔にまとめれば、以下のようになる。そもそも、既得権益層がガッチリと防御している分野において、少しでも穴を開けるべく出来たのが「特区」制度だ。したがって、当該分野においては、「さあ、既得権者の海に飛び込みます」と息巻く新規参入者があまりいないのが通例で、実現段階に近づくほど、どうしても特定のプレイヤーへの支援(随意契約)的な色が強くなるし、既得権益層は、既存のルールを楯に激しく抵抗する。

今回のケースに当てはめれば、獣医師会・教育界としては、本音では新規参入者が少なければ有難いと思っているところ、特区という形態で加計学園が参入してくるのは、一般論的には面白いはずがないし、手を挙げる学校はそもそも少なかったと推測される。そういう状況で、何とか獣医学部を新設するとなると、どうしても特定の学園・場所の支援的色彩は濃くなるし、既存のルールを楯に取る文科省も前例と違ったことをやるのは嫌がる、ということだ。

つまり、あからさまに贈収賄が行われている証拠でもあるならともかく、「忖度」「ご意向」というだけで問題なるなら、これはもう、特定案件の問題というよりは構造的な話で、それこそ、特区制度そのものをやめろ、ときちんと主張すべき話だ。開き直ったかのように悲劇のヒーローを演じている前川元次官などは、本音では特区制度そのものに反対なのではなかろうか。

私は個人的には、医者や獣医の数を医学部・獣医学部の定員を通じてコントロールすること自体に反対で、極端なたとえを書けば、どうして、食べれば人間の命にかかわるケースだってあるかもしれない牛丼屋の新規参入や数はさほどコントロールしようとしないのに、ここまでしゃかりきに、獣医学部の設置をコントロールする必要があるのか疑問に思っている。が、それはひとまずさておき、仮にお役所の権限の源泉でもある既存の規制は規制としてしぶしぶ認めるとしても、野党は、贈収賄に関わるような確たる証拠が出て来ていない本件をそこまで執拗に叩くのであれば、堂々と、特区制度そのものを止めろ、と構造的な解決を目指す主張をすべきだと思う。

繰り返しにはなるが、特区制度という、既得権益権者の群れの中に、一匹だけ元気の良い新規参入者を入れようという試みの中では、ほとんどの案件が今回のケースにあたるわけで、こんな調子だと、冒頭の冗談ではないが、国会の審議は、ほとんど、もり、かけ、ざる、たぬき、てんぷら、きつね、、、と、これで終わってしまう。野党は、国権の最高機関で仕組みを作りたいのであろうか、それとも、単にスキャンダル探しをしたいのであろうか。一体どういうつもりなのか。

____

さて、ここまで、国権の最高機関たる国会では、もっと中身のある議論をすべきだと述べてきた。「スキャンダル探し党」でも結成して堂々と国民の信を受けてスキャンダル探しに勤しむならともかく、そうでない限り、野党は、本来、どのように構造的に良い国を創る方向を目指すか、という具体的提案に注力すべきだと主張した。半ば確信犯的に、多くの国会の審議時間をスキャンダル探しに割く野党の責任は確かに重い。

ただ、事件の解決を目指す刑事のような目線、即ち、真に利益を得ているものは誰か、という観点で本件を眺めた場合、果たして、それは野党なのだろうか、とも思う。野党は、この騒ぎで本当に得をしているのだろうか。世論調査では、野党の支持率は上がっていない。安倍政権の支持率もさほど下がっていない。政治に関心を有している人たちからの目線はもっと厳しく、民進党にいる「優秀」だと思われていた議員も、結局は、単なるスキャンダル探しに熱を上げていると、半ば呆れられている。そして、野党の心ある議員も、そのことに気付いている。

となると、一体、真の勝者は誰なのか。私の仮説では2つだ。1つはメディアである。当たり前だが、メディアは、とにかく、騒ぎが起こって、注目が増し、テレビにしても新聞にしてもネットにしても、世間の耳目が集まることが大事だ。議論の質は関係ない。「上げて、落とす」というのがメディアの常套手段だが、上がりきった安倍政権は、落とせば注目を浴びる格好の的であり、これ以上の「商材」はない。

野党議員は、その先棒を担がされて、下手をするとそのことに気づきすらせず(自ら気づかないふりをして)、嬉々としている。私が敬愛する霞が関の先輩の鈴木寛氏(現東大・慶大教授)が、かつて「テレビが政治をダメにした」という象徴的なメディア批判の書を出していたが、全くメディアに国権の最高機関が乗っ取られているかのようだ。野党は、スキャンダルと言うメディアから渡される「麻薬」にたまに手を出すならともかく、固定の売人と麻薬常習者のような関係になってしまうと、これはもう終わりである。

もう一つの「勝者」は、日本の隆盛を快く思わない諸外国である。別に国際関係論におけるリアリズム派的立場を取らずとも、国際社会の常識的に、周辺国が栄えて喜ぶ指導者は少ないのは真理だ。古くは「遠交近攻」とも言われるように、近くの国の弱体化を図って、名実ともにコントロール下に置きたいと思うのは世の常である。

戦後、平和ボケの中で、日本は、かろうじて最低限のカウンターインテリジェンス(防諜)には取り組んでいるものの、それでも、各国のスパイやそれらと関係の深いメディア人その他がたくさんいると考えるのがある意味で当然だ。米国大統領という重要ポジションを巡って、プーチン大統領がかつて所属していたKGBとCIAが暗闘をしていると見れば、ロシアゲート問題もある意味で分かりやすいが、米国の覇権が揺らぎはじめた国際社会と、各国の素早い動きは甘く見ない方が良い。

____

いずれにせよ、加計問題を巡る賛否から透けて見えるのは、1)主に50代以上の既得権益層(M.ヴェーバー的には「ルールによる官僚支配」)とそれに群がる人々、と、2)主に40代以下の挑戦者層(同じく「変革期におけるカリスマ支配」)とそれを支える人々、との対立をうまく煽るメディアや諸外国勢力、上手に乗せられて踊らされている野党、という構図だ。国益・公益を第一に考える健全なる国民が取るべき態度は自ずと明らかであろう。

そんな中、やはり、国権の最高機関の構成員(政治家)の方々の国造りに向けての奮起と、その方々を選び見守る我々自身の猛省が必要だなぁ、と夜食の「そば」をすすりながら、半ばあきらめつつも、決して絶望せずに、弊社社員は、政策づくりや政治家の卵づくりに日々努めているところである。

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