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大きな節目を迎えた大相撲 - 赤坂英一 (スポーツライター)

 今年、大相撲に大きな世代交代の波が押し寄せている。平成29年(2017年)は恐らく、のちに角界を振り返ったとき、「あの年を境に歴史が変わった」と言われる重要な節目になるかもしれない。

 最大の〝歴史的快挙〟はやはり、1月の稀勢の里の初場所優勝、日本出身力士としては貴乃花以来14年ぶりとなった横綱昇進である。稀勢の里は3月の大阪場所でも優勝、新横綱の昇進場所優勝は1995年の貴乃花以来22年ぶり、史上8人目の快挙。加えて、日本出身力士の2場所連続優勝は98年の貴乃花以来19年ぶりでもあった。これを大袈裟に表現するなら、朝青龍、白鵬らモンゴル人横綱に10年以上席巻されていた〝花のお江戸の大相撲〟を、やっと日本人の手に取り戻したのが稀勢の里だったと言える。

 久しぶりに日本出身横綱が誕生して、両国国技館は沸きに沸いた。稀勢の里の土俵入りでは白鵬、日馬富士、鶴竜をはるかに上回る歓声が上がって、親方衆の間から「これほどの盛り上がりは若貴時代(若乃花、貴乃花両横綱時代)以来」という声も聞かれたほど。

 では、これから稀勢の里を中心とした日本出身力士の全盛時代になるのかというと、事はそう単純ではない。3場所連続優勝のかかっていた今月の夏場所11日目、稀勢の里はかねて悪化していた左肩の周辺、左上腕二頭筋の損傷で休場。約1カ月の通院加療が必要であることが明らかになっている。7月の名古屋場所に万全な状態で出場できるか、今度は大事を取って最初から全休するべきなのか、予断を許さない状況だ。

 過去、ケガによって満足な相撲が取れなくなり、引退に追い込まれた横綱は多い。その最たる例が、ほかならぬ稀勢の里の前の日本出身横綱・貴乃花だった。右膝半月板損傷を押して出場した2001年の一月場所で優勝し、時の小泉首相に「感動した!」と言わしめたが、右膝を悪化させてしまい、この直後から大相撲史上ワーストとなる7場所連続休場。1年以上休んだあげく、03年の初場所を最後に引退を余儀なくされたのだ。

 稀勢の里に雲竜型の土俵入りを指導、継承した大乃国(現芝田山親方)も、晩年は故障に泣かされた。大関時代まで〝横綱食い〟で鳴らし、一度もカド番を経験したことがないほどの強さを誇ったものの、自らの横綱昇進後は相次ぐ故障により、休場が6場所、負け越しが1場所、一桁しか勝てなかったのが4場所(途中休場を含む)。その芝田山親方はいま、稀勢の里の身を案じてか、横綱の地位を守るには受けて立つ取り口を変えたほうがいい、という趣旨の発言をしている。

 しかし、ここで稀勢の里が長期休場にでも入れば、せっかく日本出身横綱の誕生で盛り上がっているムードが一気にしぼんでしまいかねない。夏場所で1年ぶりに優勝した白鵬も、魁皇の持つ歴代最多記録1047勝の更新(現在1036勝)、通算優勝40回(現在38回)到達を目指すと宣言。このモンゴル人大横綱にまた日本出身力士が食われやしないか、私のような日本人の好角家は大いに気になるところだろう。

髙安を中心とした新たな世代が台頭

 そこへ、大相撲の流れを変えるポイントになりそうな力士がもうひとり現れた。夏場所で3場所連続2桁勝利を収め、勢いに乗って日馬富士も撃破し、関脇から大関への昇進を決定づけた髙安である。稀勢の里と同じ田子の浦部屋の弟弟子で、日本人の父、フィリピン人の母を持つハーフ力士だ。「今後はこの髙安を中心とした新たな世代が台頭してくるのではないか」と、ある親方はこんな観測を相撲記者たちに披露している。

 「例えば野球の世界では、フォークやスライダー、つい最近ではツーシームなど、時代によって流行する球種が変わるだろう。相撲にも似たような傾向があって、これまでは白鵬や稀勢の里のような四つ相撲が主流だった。しかし、今後は髙安のような突き押し相撲が主流になる可能性がある。実際、御嶽海、大栄翔など、髙安と同じスタイルの相撲を取る若い世代が増えているからね」

 ちなみに、御嶽海も髙安と同じ日本とフィリピンのハーフだ。新大関・髙安をはじめとする彼ら〝第3勢力〟が日本出身横綱とモンゴル人横綱の〝抗争〟にどう割って入るのか。これからの土俵は群雄割拠。様々な個性と世代のぶつかり合いが繰り広げられることになりそうだ。

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