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北米3大ローンの陰り

北米で仕事をしているとこの7、8年の金融政策にありがたみを感じないわけにはいきません。どうして北米はあのリーマンショックという深い落ち込みからこれほど見事な立ち直りをしたのだろうか、そしてこの拡大はいったいどこまで続くのだろうかと考えてしまいます。今後、その行方に変化があるとすればそれは政策によることもあるし大衆を取り巻くトレンド変化かもしれません。そんな中、先行きをふと弱気にさせる北米3大ローンのネタ話を紹介します。

まずはカナダの話をしましょう。1か月ほど前にカナダの民間住宅ローン会社、ホームキャピタル社が不正融資問題に絡み、住宅ローン貸付用資金として一般から調達していた高金利な定期預金に対して顧客の解約が急増、取付騒ぎのような事件が発生しました。そして株価は一日にして3分の1になります。預金は3週間で95%引き出され、現在は各方面から緊急融資を受けて企業再生を行っています。

通常、一般向け住宅ローンは銀行が提供するのですが、カナダの銀行ではアメリカのサブプライム問題を教訓として非常に厳しい審査や規制があります。そのため、新移民や自営業者はまずローンが組めません。与信が低い人を対象にローンを提供するのをセカンダリーマーケットと言い、カナダではホームキャピタル社のような会社が数社存在します。

そんな同社の不正融資は2015年に起きたものでCEOは辞め、問題自体は収拾していたはずですが、高騰するトロントの住宅市場を冷やしたいのか、今になり州当局が調査に乗り出したことで預金取り付け騒動になりました。一時期はカナダ版サブプライム問題かと同業他社の株価も崩落した経緯があります。

次にアメリカの話です。私は以前、SLMという学生ローン会社に投資をしているとこのブログで書いたことがあります。現在は全株売却済みです。アナリストはこぞって買い推薦していますが、私はこのビジネスにはやはり無理があると判断し売却しました。

SLMの前身は知る人ぞ知るあの政府系学生ローン、「サリーメイ」でクリントン政権の時民営化した悪名高き会社であります。というのはこの学生ローンは担保の確保に力点を置き、払えなければ親などからきっちり回収する仕組みになっています。つまり、学生ローンなのにリコースローンで払うまで追いかけられるのです。しかも返済に滞りがあると直ぐに契約約款違反に問われ、全額返済を迫られたり高いペナルティ金利を押し付けられます。悪く言えば日本でかつて悪役となった消費者金融のようなものでしょう。

ではなぜ、そんな学生ローンが跋扈するのか、といえばよい学校に入ることで将来をセキュアしたいというアメリカの若者の夢なのでしょう。アメリカの大学キャンパスに足を踏み入れれば日本とはあまりの規模の違いに驚くはずです。キャンパスのサイズも学生の数もその教育の仕組みもそして外国の学生との競合という意味でも勉強するための大学そのものであります。その上、エリート大学ならば授業料等で年間5-6百万円もかかる人生最大の投資が待ち構えています。今や1兆ドルを超える学生ローン残高が物語る教育の将来とは何でしょうか?

三つ目が自動車ローンです。ラジオでは自動車会社がローンとのセット販売を巧みに宣伝し、営業に力が入ります。しかし、アメリカに於いて年間1700万台も売れる市場の勢いが何時までも続くと考える方がおかしいのは誰もが分かっています。いつかは誰かがババを引くのだろうという声も聞こえてきます。自動車販売力がないところはローンがしやすいことを売りにしているためで不良債権率も当然上がることになります。

それよりもこのところの問題はリース満了の車両が中古市場で急増しており中古車市場が崩れ始めています。中古車市場の崩れが意味するものは下取り価格が思った金額に達しないということであり、販売の勢いを維持するには自動車販売会社の値引き攻勢が起こり得るということになります。日産は顕著な値引き攻勢会社で逆にそれをやりすぎて高級ブランド、インフィニティの値崩れが起きてしまっているとの話もあります。

上記三つのローンに共通するのは債権化して投資家に売却していることでしょう。そしてそのクオリティの低いものがあの有名なサブプライムローンです。勿論、今でも存在します。投資家は低い投資リターンに飽き、リスクオンムードの中、高い利回りを確保するためにはこのような投資をポートフォリオに入れざるを得ません。

これらは逆回転が始まればもちろん、あの時の二の舞が起こらない保証はどこにもありません。もちろん、北米のマーケットはあまりにも資金が潤沢でかつてよりシステム上の安全度も増しています。それでも比較的リスクテイカーの私でさえこんなニュースを気にし始めたのはそんな風を感じ始めたからなのでしょうか?

今、市場では夏から秋に強風が吹くかもしれないとささやかれ始めたようです。私も飛ばされないよう、準備をしたほうがよさそうです。

では今日はこのぐらいで。

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