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スマートウォッチが人の身体に問いかけ、どんな気分かを理解するようになる日がいずれやってくる

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著:Andrew McStayバンガー大学 Senior Lecturer in Media Culture)

(編注:この記事は、アップルウォッチの米国発売1カ月前である2015年3月10日に投稿された記事を翻訳したものです。)

 アップルの新しいスマートウォッチの最終的な内容が、同社主催のきらびやかな「Spring Forward」イベントでついに公開された。しかし、過剰な宣伝が一段と大きくなるいっぽうで、健康とセルフトラッキングに関して、そしてより重要であるかもしれない、我々の情緒的生活に対するウェアラブルテック企業の関心をめぐって、別の問題があがってきている。

 Apple Watchは運動を記録し、一日を通して我々の動きを追跡し、座っていない時間を評価し、あまりに長いあいだ座っていると、立ち上がって動き回るように知らせてくれる。ティム・クックの言った「座っていることは新しい癌だ」というせりふを忘れず、加速度センサー、心拍センサー、WiFiそしてGPSを駆使してこれを成し遂げる。 ペブルLGソニーサムスンモトローラなどから出ているスマートウォッチなど、市場にはすでにたくさんの商品が出回っている。もちろん、これらの企業にはアップルのようにすべてを黄金に変えてしまうマーケティング力はない。

 Apple Watchが失敗しようと、成功しようと、アップルの参入は、ウェアラブルデバイスを利用して、人々を取り込もうとする業界全体の試みに大きく貢献している。CCSインサイトによると、市場は2013年の970万台から2018年には1億3500万台に成長すると予測されており、またイギリスの小売業者、ジョン・ルイス(John Lewis)の報告書でも、健康とウェルビーイングのためのウェアラブル製品の着実な伸びが記録されいて、売り上げは2013年から395%増加している。ジョン・ルイスはテック通を対象としていないため、ウェアラブル製品の一般大衆市場のシェアについて妥当な指標を提示しており、こちらは注目に値する。

◆情報は力なり


 スマートウォッチやその他のセルフトラッキングウェアラブルの意義を知るためには、シリコンバレーと自己の定量化ムーブメントに注目する必要がある。これは、WIRED誌の編集者、ゲイリー・ウルフとケビン・ケリーが、「数値を通して自己を知る」こと、自己の定量化ムーブメントのようなモットー、哲学に関心のある、志を同じくする人々のグループに働きかけ、2007年頃にサンフランシスコで始まったものだ。自己の定量化では、データの分散化に対して非常に自由主義的な見解を持つことになり、人の心の状態、自主性と自立性は収縮されていき、そしてデータの使用に基づく先制的かつ予防的措置が必要となってくる。

 ウェアラブルにアップルが参入することは、市場が成長するにつれて避けられないことだが、健康へのより広範にわたる関心にも注目するべきだろう。ウェアラブルは予防予測技術を進めていく段階において、企業および国の医療サービスなどからの関心を反映させている。ウェアラブル技術に求められていることは情報、つまり消費者や患者の行動、健康、処方された治療法に従っているかどうかについての情報の提供だ。

 これは、職場のプレッシャー、人間関係、病気や肉体的なストレスが体に及ぼす影響などに端を発するかどうかを問わず、リアルタイムとリアルライフの状況下で、医療の自己問診の時代を迎え入れている。デジタル医療を支持する人たちが、医者・患者の関係が、家庭でのウェアラブルモニターとセンサーという手段を使ってどのように根本的に変わるか予測しているように、ウェアラブルはヘルスケアの物語のほんの一部に過ぎない。多くのスタートアップと並んで、アップルやグーグルなどの巨大テック企業は、こうした背景による医療サービスの再編成から生じてくる可能性について関心を持っていることは明らかだ。

◆考え行動する


 健康以外では、アップルの人の感情への関心が、Apple Watchの意義を理解する上で鍵となる。アップルのウェブサイトは、これまでなかった方法でつながる方法を約束している。Apple Watchを使っていたずら描きをしたり、他の人のいらずら描きを見たり、好きな人には、その腕時計を「タップ」して、その人のことを想っているということを示したり、リアルタイムで自分の心臓の鼓動を他の人に送ったりということが可能だ。

 Apple Watchの狙いはコネクティビティを利用し、遠くからでも親密さ、親しみやすさを伝えるためにアップル独自の言語を使い、たとえ距離があっても相手が近くに感じることができるようにする。本質的にはトラッキング技術であるものを、人間味あふれるものに変え、許容できるものにすることである。

 しかし、バイオメトリック技術には、文字通り感情的な側面がある。Apple Watchは、我々の感情に関するデータを評価、収集、利用する仕組み、つまり私が共感媒体と呼ぶものの一例と言える。これは、発話パターンおよび口調、身振り、注視方向、顔の表情、心拍数および呼吸パターンの解釈を通じて成し遂げることができるだろう。アップルの製品はこちらのサービスは提供しない(Apple Watchについての以前の発表では類似の約束をしていたが)。文字通り我々の身体反応を感じとる技術に関する壮大なアイデアの域を、それはまだ超えてはいないということだ。

 これまでのところ、オンラインの世界では、私たちが使用しする検索キーワードと我々がクリックするものを通して私たちの好みを理解しているが、共感媒体はまさに文字通り我々の反応を感じとる。これは重要なことだ。なぜなら、 気分、感情、または意識がはっきりしているかどうかなどを企業が把握することができるということは、我々の意思決定に影響を及ぼす可能性のある情報にアクセスできることになるからだ。

 Apple Watchに関するアップルのプライバシーポリシーはまだ公開されていない。個人の特定が可能な情報が第三者に開示されることはないと表明されることは確実であるいっぽうで、確認が必要なことは、集計されたバイオメトリックおよび感情データから得られること、そしてそのデータが最終的にどうされるのかということだ。これは、ほかの共感媒体やウェアラブル企業にとって重要な収入源だ。そして、アップルも同じ道をすすむのだろうか?

This article was originally published on The Conversation. Read the original article.
Translated by Conyac
photo gdainti/shutterstock.com
The Conversation

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