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ビットコインをはじめとする仮想通貨がナイアガラ 通貨発行権を牛耳ることを夢見るアナーキスト達が跋扈しているうちは仮想通貨はメジャーになれない

ビットコインをはじめとする仮想通貨が軒並みナイアガラ状態になっています。

仮想通貨は「勝手に鋳造量を増やして、その価値を薄めることが出来ない」ので、政府が出す通貨より安全だと考える人たちが居ます。

またひとつの主体が、中央集権的にそれをコントロールするのではなく、分散型(distributed)なので安全だと考える人たちも居ます。

歴史を紐解けば、政府から市民の手に貨幣鋳造権を移譲しても悪い事は起こるし、分散型通貨にも不便な点は幾らでもあります

だからそれらの特徴を「こっちのほうがゼッタイに良い」と考えるのは、単に歴史を知らない無知。

かつてアメリカには8,370種類のドル札が流通していました。

その理由は昔、銀行の設立は各州の許可制だったからです。したがって「この人は信用できる」、あるいは「この紙幣は信用できる」という評判をユーザーから獲得できる者であれば、自ら通貨の発行権を握ることができたのです。

このような「あの人は信用できる!」という評判のことをgood faithといいます。なお、faithには信頼という意味の他に信仰という意味もあり、「これは安全だ!」という思い込みが、いかに盲目的信心と紙一重か? ということを物語っています。仮想通貨の世界では、それがデジタルに置き換わっただけです。

これらの通貨発行者は、連邦政府などから監督、指導されていませんでした。(これは現在の仮想通貨の状況と酷似しています)

すると「これ以上、通貨を発行するとキケンです!」というような忠告をする人も居なかったわけで、ユーザーの盲目的な信頼さえ獲得すれば、輪転機でどんどん自分の紙幣を印刷し、流通させることが出来たのです。

なお、当時のシステムと現在の仮想通貨を比較すると、当時の方がまだマシだったという評価をすることができるかも知れません。なぜなら、昔、アメリカは金本位制度だったので、「ドルの価値は何処へ行っても同じ」はずだったからです。

しかし現実にはアメリカ経済全体の発展のペースより、金生産のペースの方が遅かったので、決済に必要な通貨量に対し、金貨は全く不足していました。

西部劇に出て来るような無法地帯を、沢山の金貨を抱えて旅行することは不便です。かといって、どこかの銀行が発行したうさんくさい紙幣は、他州へ行くと、そもそも受け付けてもらえないか、もしそれを受け付けてもらったとしても、大きなディスカウント、つまり価値を割り引くことを要求されたのです。

商人が、このようにディスカウントでしか取引をしなかった背景として「たぶん、あそこの銀行は金庫にゴールドの準備がじゅうぶんでないにもかかわらず、裏付けになるゴールドの準備以上の紙幣を刷っている」という勘が働いているからです。そして多くの場合、それは事実でした。

このように通貨の価値自体が盲信によって維持されていたため、何かの拍子にその信頼が崩れると、しばしばパニックが起こりました

一例として1893年のパニックの際には360の銀行が倒産しました。その大半は、慌てた預金者が、「ゴールドで引き出したい!」と銀行の窓口で要求し、たまたまその店舗の十分なゴールドの準備がなかったので、「もうありません!」ということになった瞬間にその銀行の発行するドル札が無価値になったからです。

どんなに保守的に、正直な商売をしようとした銀行家でも、社会全体にパニックが走り、たまたま自分の支店のひとつでゴールドの準備と人々の換金要求がミスマッチを起こしたら倒産の憂き目にあったのです。

仮想通貨の中には、ちゃんとしたものもあるかもしれないけど、パニック時には無差別攻撃的に、全てがとばっちりをうけます。

よくビットコインをはじめとする仮想通貨の信者は「政府が勝手に通貨を発行するのは、けしからん」と言いますが、実は連邦準備制度理事会(FRB=アメリカの中央銀行)が出来たのは今から僅か103年前です。それ以前は、無法地帯だったのです。

「それじゃあいけない」ということで、苦心惨憺の末に、金融パニックへの反省として、FRBがこっそり設立されたのですが、「中央の権力」というものに対する猜疑心が当時も強かったので、結局、「中央銀行」とか「合衆国銀行」というような、権力をイメージさせる名称はつけられなかったのです。

仮想通貨で使用されるブロックチェーン・テクノロジーは、エレガントなシステムには違いありません。

しかし仮想通貨に対する僕のもともとの期待は、「スマホでサクサク決済できる」、「小銭を持ち歩かなくても良い」、「決済コストが極めて小さい」などの利便性が実現できるんじゃないか? という期待から出たものであり、政府の横暴から逃れる、キャピタルゲイン狙い……云々の議論は、僕にとってはどうでもいいんですね。

それより「FRBは、けしからん」というような反政府主義者やアナーキスト達が仮想通貨ブームに関与している事の方が、よっぽど憂慮すべき事のように思います。

まっとうな方法で、いまの社会の仕組みの中で富を築くことができなかったので、バーチャルな世界で「逆転」を夢見る……そういう痛い連中ばかりが跋扈している間は、仮想通貨の未来は明るくないです。

一例としてビットコインの処理速度は、パスモより10倍以上も遅い(笑)

これをまずなんとかしてくれないと、ビットコインが世界にあまねく普及するなんてコトは、到底、期待できないわけで。

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