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「全国学校事故・事件を語る会」 参加者が語る第三者委員会の問題点 (上)

 いじめや体罰による自殺、熱中症や部活動の事故など、学校で起きた事故によって子どもに後遺症が残ったり、死亡したりするケースがある。「全国学校事故・事件を語る会」は5月20、21の両日、集会を兵庫県神戸市内で開いた。テーマは、事故や事件が起きたあとに設置される「第三者委員会の課題」について。遺族3人が事例報告をした。交流会では、今年初めて、亡くなった子どもの「兄弟姉妹の会」も開かれた。

学校や市教委との温度差を埋めるためには

 2013年3月、奈良県橿原市立中学校の一年の女子生徒(当時13)が自宅から徒歩で数分のマンション7階から飛び降りた。生徒はいじめを受けていた。病院で担任は「やっぱり、クラスのことが原因なのか…」と言った。しかし、しばらくすると、校長が家庭の問題を匂わす発言をしていた。

 教頭は「調査は限界。証拠がないと調査しない」と言っていた。教育長も「アンケートは実施しない」としていた。加害者の親も通夜や葬儀で「これは事故死。自殺ではない。蝶々を追いかけて落ちたのよ」と言っていたことを覚えていると遺族の母親は語る。

「何度も調査をしてほしいと言ったが、なかなか動いてくれなかった」(母親)

 しかし、加害者の一人は無料通信アプリLINEのタイムラインで「私のせいでこうなった…」と書き込みをしていたことが後に発覚した。

 「加害者には腹が立つ。けど、なぜ、学校側は加害者に適切な指導ができないのか。反省する機会を奪って欲しくない」(同)

 その後に取ったアンケートの回答によって校長はいじめを認めることになる。しかし自殺との因果関係は「わからない」と発言していた。また、校長はアンケート結果を見せるといったが、「学校は?教育委員会のメッセンジャーでしかない。権限はない」と言い、見せないと言い出した。

 遺族は第三者委の設置を要望した。当初、市教委は「いじめと自殺の因果関係は低い」との見解だった。そのため、遺族の要望に対し「望むところだ」と対決姿勢を示していた。しかも、初会合は一方的に通知。委員の構成、時間、場所は秘匿して行われた。母親は初会合を「報道で知った」という。しかも、委員には市の顧問弁護士がいた。そのことで「中立公平ではない」と遺族側が抗議したものの、回答がないことから、遺族側は調査協力を拒否。それを他の委員と世論が後押しし、第三者委は解散した。

 「市の顧問弁護士は『訴訟の代理業務』として、遺族の親族の戸籍を『損害賠償請求訴訟提起準備のため」として、取得していたことがわかった。そのことが市議会で取り上げられ、市側の上層部が『訴訟に発展する可能性がある』との回答していた」(同)

 結局、新たな第三者委ができるのは11月。生徒からの聞き取り調査は出遅れた。

 「いじめ防止対策推進法が施行されて、学校事故対応の指針が通知されても、学校側の事故対応は改善されない。遺族は『学校で子どもに何があったのか』を知りたい、(遺族と)学校・教委側は、情報量、人脈、経済力がまったく違う。温度差を埋めるためにはコーディネーターが必要だ」(同)

自殺した女子中学生の母親(提供:渋井哲也)

第三者委はいかに公正中立を担保できるのか

2012年7月、新潟県立高田高校3年の男子生徒(当時17)が自殺した。背景には、顧問による指導があった。第三者委の報告書では「不適切な指導の中で、決定的な要因とは言えないまでも、決定的な契機であったと考えられる」とした。

指導の原因になったのは、ラグビー部員だった生徒が、女子マネージャーの仕事ぶりに不満を持ち、SNSに書き込みをしたことだ。それを知り、マネージャーは退部する。顧問は、マネージャーに批判的だった男子生徒を含む三人の部員を呼び出し、叱責をした。男子生徒を含む三人は納得しなかったものの、混乱を招いたことを部員全員の前で謝罪した。

 「(三人の)言い分はまったく聞かなかった。SNSに書き込んだ背景はまったく無視した。この学校では、インターネット利用の問題は異常な反応を示す」(父親)

この問題は解決したように見えたが、マネージャーの父親が学校を訪問。男子生徒への処罰を求めた。顧問は男子生徒一人のみを呼び出し、密室で指導した。この夜に男子生徒は自殺している。

自殺後、遺族が学校に電話をすると、「しかるべきときに伺う」と回答した。1ヶ月が過ぎた頃に学校側が家庭訪問し、「自殺の原因はわからない」と話した。ただ、その1週間後に学校側が県教委に提出した「学校事故報告書」では、自殺の理由を「自責の念」としていたことがわかった。しかも、事件翌日に、その理由にすることが決められていたというのだ。学校側は遺族に誠実な対応をしなかったことになる。

学校側は保護者説明会をしてない。部活の保護者だけに行った。

「事件そのものがなかったような対応だった。(夏休み中に亡くなったため)2学期の始業式に、通常であれば、何らかの言葉があるのが普通ではないか。にもかかわらず、何もない。始業式直後に、詰め寄る生徒もいたというが、学校側は生徒に口を閉ざしていた」(同)

遺族に事実を告げる生徒もいた。その情報をもとに、学校に質問しても、学校側は「指導に問題があったなどとは断じて認められない」と回答するだけ。県教委に再調査を依頼するが、聞き取りを行ったのは教員だけ。調査を行うことはなく、第三者委の設置を要求。14年6月に初会合が開かれた。

県教委は当初、「第三者委の設置目的は自殺の原因究明ではなく、学校の報告書の検証である」「委員の遺族推薦は、公正、中立、客観性に欠けるために認められない。公正、中立、客観性は教委が判断する」「設置要項の作成に、遺族の関与は認めない」「直接聞き取りの必要がある場合は、調査委員ではなく、県教委が行い、調査委に回答する」などと言ってきた。しかし、その提案には同意しなかった。

「諦めずに県教委と交渉した。遺族と県教委との面会は、すべて報道機関に公開することを条件にした。その中で設置要項と委員の人選方法を提案した。結局は、個人推薦ではなく、団体への推薦依頼という形になった。いかに公正中立を担保できるのかに尽きる」(同)

息子を亡くした父親(提供:渋井哲也)

毎回のように『公正・中立な立場です』と言われ続けた

2014年1月、兵庫県三木市立中学校1年の北芝隆晴さん(当時12)が4階教室の窓から転落し、亡くなった。警察は当初、事故、事件、自殺の3つの可能性を考えて捜査したが、遺族は「息子さんの性格からして、自殺はない」と一番に言われたという。大柄の体型ということもあり、担ぎあげて窓から落とすのは考えにくいともされた。亡くなって数時間経っても体温が38度以上あったことで、司法解剖は翌日に行ったが、原因不明のまま葬儀を迎えることになった。

学校はテレビで報道されてから全校集会を開いたが、保護者には連絡はなかった。そればかりか、市教委は、警察の捜査と逆行して、「いじめによる自殺の可能性」と記者会見をした。そのため、風評被害で同級生も苦しむことになった。葬儀が終わってからは保護者説明会が開かれたが、遺族には連絡してない。

その後、第三者委が設置されることになるが、委員には市立病院の医師が入っていた。市の利害関係者ではあるが、遺族はきちんと調べてくれるものと思っていた。

「毎回のように『公正・中立な立場です』と言われ続けた。事実の究明を息子のために早くしてあげたいと思っていた私は、あまり違和感を持たなかった」(母親・嘉代子さん) 

16年6月、第三者委は転落事故の原因について「インフルエンザなどウィルス性疾患脳症による異常行動が原因」とした。また、「当日の朝、発熱症状は呈しておらず。極めて予測不能な事態」と結論づけた。

ただ、アンケートでは体型をからかわれていたという記述があった。しかし、報告書の結論は「ウィルス性疾患の脳症」だった。嘉代子さんは「やはり病気やったんや。自殺じゃなかった」という気持ちと同時に、なぜ教室で一人にしたのかと思い始めた。しかも、亡くなったときに着ていた体操服が泥だらけだったことや、アンケートの証言と学校の説明の食い違いが納得できないでいた。数々の疑問が浮かんだ。

涙を流しながら報告した嘉代子さん(提供:渋井哲也)

「学校のアンケートも抜粋だけは見せてもらえた。第三者委の委員の弁護士さんもアンケートを取ったが、その内容は見ることができない。インフルエンザが急に発症して重症化するのか。病名がインフルエンザなのか、あるいは熱中症なのか。私にはわかりません。熱中症であれば、転落する直前の授業、体育の持久走で一体何があったのか知りたい」 

隆晴さんは亡くなった日、体育の授業で持久走を終えた後、「しんどい」と座り込んだ。担当教諭が男子生徒を見たとき、「大丈夫か?しんどいなら保健室へ行くように」といい、養護教諭にも声をかけた。その後、同級生が授業のために音楽室に移動。隆晴さんは教室で一人になった。そのときに転落したという。

いじめなのか、病気だったのかーー。嘉代子さんは第三者委のやり直しと、アンケートの開示請求をした。請求の結果は「非開示」だ。本当のことを知りたい。アンケート開示のための署名活動も行われた。現在、嘉代子さんは神戸地裁に民事訴訟を起こしている。

(続く)

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