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バロンズ:トランプ・バンプは、トランプ・スランプに取って代わるのか

Barron’s : Could The Trump Bump Turn Into The Trump Slump?

バロンズ誌、今週のカバーはアマゾンの快進撃に負けずとも劣らない小売大手を掲げる。百貨店大手はアマゾンの隆盛の陰で店舗閉鎖に追い込まれるものの、同誌は電気製品小売大手ベスト・バイ、卸売大手コストコ、リフォーム関連のホーム・デポやロウズ、高級百貨店ノードストローム、パーティー関連小売のパーティー・シティ、オークション大手サザビーズ、そして世界最大小売のウォルマート(アルファベット順)の成長余地が高いと指摘した。詳細は、本誌をご覧下さい。

当サイトが注目するアップ・アンド・ダウン・ウォールストリート、今週はトランプ政権をめぐるロシア疑惑が与える主要な政策への影響を取り上げる。抄訳は、以下の通り。

トランプの主要議題、不利な状態に=Handicapping the Trump Agenda.

政治は政策とは違う。前週までのトランプ政権に関わるニュースはこの基本概念を裏打ちし、一連の流れを受け連邦捜査局(FBI)長官は解任され、ロシア問題の捜査では特別検察官が指名された。

金融市場は、ほぼ反応薄だったと言える。17日には、コミー前FBI長官のメモでトランプ大統領がフリン安全保障担当補佐官の捜査を断念するよう要請したことが伝わり大幅安を迎えた。しかし、その後はトランプ大統領がロシア問題の捜査妨害を否定し一連の捜査を”魔女狩り”と批判したことから息を吹き返し、17日の下落分を打ち消しつつある。コミー氏の前にFBI長官を務めていたミュラー氏が特別検察官に就任したことも、すっぱ抜き合戦を沈静化させる材料となり得るとの見方も一部であったようだ。

S&P500、17日の下落分は取り戻すも開けた窓はまだ埋められず。
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(出所:Stockcharts

トランプ大統領が初の外遊で中東へ赴いた19日、ワシントン・ポスト紙ロシア問題の捜査の手が”ホワイトハウスの上席顧問で大統領に近い人物”に及んでいると報道し、ニューヨーク・タイムズ紙はトランプ大統領がラブロフ露外相やキスリャク露大使と会談し機密情報を共有した10日、コミー氏について「変人」とからかい更迭については「大いなる喜びだった」と明かした、と伝えたものだ。

トランプ大統領の外交がをめぐり様々な憶測が浮上する一方で、市場にとって重要なことは政治ではなく政策である。

ヒルトップ・セキュリティーズのチーフ・ストラテジストであるマーク・グラント氏は、トランプ大統領誕生を予想した数少ない一人で米株に買い推奨を行った人物である。そのグラント氏は今や立場を変え「トランプ氏の主要議題は水泡に帰すか、最善のシナリオでもかなり先になって実行される程度だろう」と悲観的だ。さらに「トランプ・バンプ(トランプ大統領の側近をめぐる政治問題で停滞する状況)はトランプ・スランプに取って代わる」と予想、”過大に約束にして結果は期待外れ(over-promising under-deliver)”の状態を見込む。

弾劾を加味せずともこうした見方が浮上するなか、マーケットでは、トランプ政策を支持する一方で胸焼け材料に乏しい”ペンス大統領”の誕生が囁かれ始めた。

弾劾になるかは別として、概して政治的スキャンダルは20世紀において米株相場に大きな影響を与えなかった。例えば1921〜24年にかけハーディング大統領政権下で発覚した汚職事件、1998〜99年に弾劾裁判となったクリントン大統領の時代に、米株は強気相場を謳歌していたものだ。

ニクソン大統領時代となれば、話は別だ。当時はインフレ上昇とドル安に伴い連邦準備制度理事会(FRB)が引き締めサイクルにあり、1973年の第4次中東戦争も重なって長きにわたる景気後退に喘ぎ、弱気相場に突入した。ただしエバーコア・ISIのエコノミストであるスタン・シップリー氏は、当時のファンダメンタルズが背景にあり必ずしもワシントンの政治が金融市場を動かしたわけではないと指摘。その上で「政治の話題を認識しつつ、焦点をファンダメンタルズから逸らすな」と忠告する。

ゴールドマン・サックスのアレック・フィリップス氏によると、混沌のなかに希望の光が現れたという。フィリップ氏いわく「特別検察官の指名により信頼できる捜査が進行すると見込まれ、2018年度予算や債務上限引き上げ交渉の期限である9月30日を超えて財政交渉に支障をきたすリスクが後退した」ためだ。ロシア問題の捜査が長引き政策面で停滞が予想されるものの、カウエンのクリス・クルーガー氏はミュラー氏の特別検察官指名を受け民主党が”大事件”として取り上げるリスクを排除すると読む。

2018年度予算の詳細は、トランプ大統領の外遊中は行政管理予算局(OMB)のマルバニー局長に委ねられる。ホライゾン・インベストメンツのチーフ・ストラジテストであるグレッグ・バリエール氏は、国内支出の大幅削減と利上げを仮定していない成長3%予想をにらみ「共和党からも徹底的な反発を受ける」と予想。詳細の予算案は来週24日に公表してすぐ、否決されたも同然になる見通しだ。

トランプ政権の柱である税制改革の行方が不透明な状況で、トランプ大統領と共和党の支持率は低下中だ。GSのフィリップス氏は、1962年に遡って世論調査と選挙結果を分析した上で「2018年に共和党は下院で23議席失い、民主党が過半数を握ることになる」と予想する(筆者注:現在の議席数は共和党が238、民主党は192、空席4)。中間選挙でどうなるかは別として、税制改革の不透明性は高まるばかりだ。

FRBの金融政策は、年内あと2回の利上げが見込まれていたが巻き戻されつつある。FF先物市場によると、12月の利上げ織り込み度は44.1%へ後退した。ただし、6月の利上げ織り込み度は97.5%と100%に近い。RDQエコノミクスのジョン・ライディング氏とコンラッド・デクアドロス氏は、政策の変化と独立した金融政策の必要性を説くと共に利上げの重要性を強調していた。

年内あと2回の利上げ予想が後退すれば、4.5兆ドルに及ぶバランスシート縮小の道筋にも影響を与えよう。17日にS&P50が急落した時には、米債利回りも低下した。米2年債と米10年債の利回り格差は40bpまで縮小、米大統領選挙前の水準まで戻している。フラットニングは市場の利上げ観測、成長見通し、インフレ期待が巻き戻された証左だ。結局のところ、政治は経済見通しや市場に変化を与えうる。

——6月利上げはdone dealと見込む半面、ロシア問題が長引くリスクと共に税制改革やインフラ投資拡大、規制緩和など一連の政策が相当後ろ倒しになるとの予想から年内あと2回の利上げ見通しは減退気味です。4〜6月期国内総生産(GDP)の改善が期待されるものの、4月の新車販売台数からは個人消費の鈍化継続が意識され、頼みの住宅投資も住宅着工件数からは勢いに翳りがみられます。企業の設備投資に注目が集まり4月の鉱工業生産は良好な数字を叩き出しましたが、長続きするかは不透明。トランプ政権が提出する2018年度予算案を議会がすんなり通過させるはずもなく、ホワイトハウスに吹き付ける風は初夏にも関わらず冷たさを増しそうです。

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