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国際情勢理解できぬ韓国との溝は深い ―条約、協定、日韓合意、北朝鮮問題― - 屋山太郎

 韓国の新大統領に選出された文在寅大統領にはつくづく失望させられた。他に立候補した2人についても、何も期待できなかった。3人に共通するのは2015年12月28日に日韓両首脳によって合意された戦中の慰安婦問題について、“再交渉”を強調していたことだ。この合意は「最終的かつ不可逆的な解決」を確認したものである。

 1965年に両国で結んだ日韓基本条約と経済協力協定は「5億ドルを支払って戦中、戦後の財産や貸借問題を清算する」主旨である。慰安婦が損害を賠償して貰いたければ、韓国政府に請求するのが条約・協定の主旨である。日本が条約をチャラにできるなら在日韓国人の在日資格を取り消すこともできる。この条約・協定にも拘わらず、韓国は慰安婦の損害賠償を求めてきた。宮沢内閣の河野洋平官房長官は、何の証拠も無かったにも拘わらず、「強制性があった」と認めて何十億円かを支払う言い訳とした。これに象徴するように歴代内閣も何らかの理由をつけて資金を与えた。考え方の根底には「隣人だから優しくしていれば仲良くなれる」という日本人の甘さがあるからだ。中国人や韓国人には「恩に着る」というような常識などないのである。

 そこで安倍首相は国際的に公開して「これで全て終わりですよ」という場面を作って10億円を支払ったのである。米国は即座に日本の態度を評価した。しかし今回、大統領立候補者が3人とも「日韓合意」の「再交渉」を公約に掲げた。失職したとは言え、自国の大統領が国際的に約束したものを「無効だ」と主張する神経を日本人は理解できないだろう。日韓両国民の間にはそれほどの溝があると認識しなければならない。溝は永久に埋まらない。

 安倍首相は文大統領の就任に当たって電話会談した際、敢えて「未来志向の付き合いをしていこう」と強調した。韓国大統領は代々、未来志向と言いつつ過去の蒸し返しに終始したからだ。 金大中・盧武鉉時代から韓国の対北外交は資金や物資を与えて北をなだめるというもので、文大統領は「すぐに南北で共同経営する開城工業団地を再開する」と述べた。国連が制裁を更に強化しようとしている矢先にこの発言である。韓国人の発想は傍若無人、周囲の事情は全く目に入らないのである。

 就任前、中国をボロクソに言っていたトランプ大統領が今、中国と仲良くやっているのは何故か。通貨の“元”安を非難していたトランプ氏は黙る代わりに、中国の北対策を見守っている。中国が北からの石炭輸入を止(や)め、原油供給も止めている。この兵糧攻めを厳しくやれば北は数ヵ月しかもたないと言われる。中国は北朝鮮を崩壊させたくない。かと言って核開発を止めさせるだけでは米国が納得しない。誰に核管理を委ねるかは目下、米、中が協議中だろう。このような場面で、韓国が「米、中の仲介役をやる」ような役割があると思っているのか。国際情勢音痴そのものだ。(平成29年5月17日付静岡新聞『論壇』より転載)

屋山 太郎(ややま たろう)
1932(昭和7)年、福岡県生れ。東北大学文学部仏文科卒業。時事通信社に入社後、政治部記者、ローマ特派員、官邸クラブキャップ、ジュネーブ特派員、解説委員兼編集委員を歴任。1981年より第二次臨時行政調査会(土光臨調)に参画し、国鉄の分割・民営化を推進した。1987年に退社し、現在政治評論家。「教科書改善の会」(改正教育基本法に基づく教科書改善を進める有識者の会)代表世話人。 著書に『安倍外交で日本は強くなる』『安倍晋三興国論』(海竜社)、『私の喧嘩作法』(新潮社)、『官僚亡国論』(新潮社)、『なぜ中韓になめられるのか』(扶桑社)、『立ち直れるか日本の政治』(海竜社)、『JAL再生の嘘』・『日本人としてこれだけは学んでおきたい政治の授業』(PHP研究所)など多数。

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