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中国の顔に泥を塗った「北朝鮮ミサイル発射」その狙いは?〜田原総一朗インタビュー

母の日にあたる5月14日の早朝、北朝鮮が新型の弾道ミサイルを発射した。ミサイルは日本海に落下したが、高度が2000キロ以上に達したと見られており、国際社会に大きな波紋を投げかけた。再び高まる北朝鮮をめぐる緊張関係。今後の動きをどう見ればいいのか。田原総一朗さんに聞いた。【田野幸伸(編集部)・亀松太郎】

北朝鮮の「ミサイル発射」は対アメリカを想定

AP
いま、この時期に北朝鮮が弾道ミサイルを発射したことで一番困っているのは、おそらく韓国の新大統領、ムン・ジェイン(文在寅)だろう。彼は大統領選の中で「平壌を訪問したい」と言っており、北朝鮮と友好的な関係を築こうとしていた。今回のミサイル発射は、その出鼻をくじかれた格好だ。

それから、同様に困惑していると思われるのが、中国の国家主席である習近平だ。5月14日は、北京で「一帯一路」構想の国際会議が開幕した日だ。中国が新しい経済圏構想を打ち出そうとする重要な国際会議だが、その日の朝にミサイルを発射するとは、まるで中国の顔に泥を塗るかのような行為といえる。

今回のミサイルは新型の弾道ミサイルとされ、北朝鮮は「大型の核弾頭を搭載可能」と発表している。弾道ミサイルは、大気圏からいったん外に出て再突入した際の弾頭の耐久性が問題になるが、その性能も上がっている可能性がある。

今回の飛行距離は約800キロだが、実験のために高く打ち上げているので、実際には4000キロほど飛ばすことができるとみられている。もう少し距離が延びれば、大陸間弾道ミサイル(ICBM)と呼べるクラスになる。北朝鮮の金正恩は今年1月に「ICBMの開発の最終段階に入っている」と表明したが、それが現実味を帯びてきている。

ICBMとなると、北朝鮮のミサイルがアメリカ本土まで届くということだ。つまり、北朝鮮は韓国や日本ではなく、アメリカを直接想定して、ミサイル開発を進めている。今回の発射も、アメリカを強く意識しているはずだ。

今井首相秘書官が中国を訪問した狙い

今井尚哉 内閣総理大臣秘書官(共同通信社)
アメリカのトランプ大統領は2週間前の5月1日、ブルームバーグのインタビューで「適切な状況になれば金正恩と会談してもいい」と発言している。このときは、大統領報道官が「条件が整っていない」と否定していたが、今回のミサイル発射で状況はさらに悪化した。

北朝鮮の狙いはどこにあるのか。

考えられるのは、核やミサイル開発を進めることで、アメリカにプレッシャーをかけていこうという戦略だ。「我々と真剣に交渉しないと、こういう実験をどんどん重ねていくぞ」という姿勢だ。

ミサイル発射の約1週間前には、ノルウェーのオスロで、北朝鮮外務省の高官とアメリカの政府関係者が非公式に接触したと報じられた。つまり、北朝鮮は強硬な態度を見せながら、外交による解決の道を探っている。

それに対してアメリカがどう応じるかだが、トランプは北朝鮮の問題を中国に委ねようとしているように見える。北朝鮮の貿易は対中国が9割を超えていて、中国との関係が悪化すれば経済が立ち行かない。そこで、トランプは中国に北朝鮮への輸出をやめろと要求している。

トランプは大統領選の最中、中国はひどい為替政策をしていると批判していたが、当選後は特に厳しい対抗措置を取っていない。これは、中国に期待しているということだ。

そうなると、難しいのは日本の立場だ。いま日本政府はある危機感をもっている。北朝鮮問題でアメリカが中国に期待するようになると、日本の存在価値が軽くなるのではないか、と。

ちょうどこのミサイル発射と同じころに、自民党の二階幹事長が訪中し、16日には習近平主席と会談したが、そこには安倍首相の懐刀と言われる今井秘書官も同行していた。

今井秘書官が中国に行った最大の目的は、習近平主席の来日を実現させることだと言われている。なんとか今年中に日本に迎えたい、そうしないと日本の立場が弱くなってしまうというわけだ。

今井秘書官の中国への派遣には、安倍首相の必死な思いが現れている。

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