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「グローバリズム」は「キャピタリズム」ではなく「コミュニズム」

■グローバリズムは一種の共産主義

 トランプ大統領が誕生してから、「保護貿易」や「自国優先主義(自国ファースト)」という言葉が叫ばれるようになり、これまでグローバル経済を礼賛してきた経済学者や評論家達は肩身の狭い思いをしているかに見える。

 ほんの少し前までは、ボーダーレスになった(=国境が無くなった)世界で、ヒト・モノ・カネが自由に動き回る社会こそが理想だと思われていたが、ここにきてグローバリズムの問題点や矛盾点が多く取り沙汰されるようになってきた。

 「グローバリズム」という言葉を聞くと、どこか資本主義や自由主義の延長線上に存在するような感じがするし、実際に多くの人が、現在でもそう思っているのだろうと思う。しかしながら、「グローバリズム」とは、国境の無い世界で、そこに住む人々が、皆、均一化(平等化)していくことを理想としているわけだから、よくよく考えてみると、これは一種の共産主義に近い思想でもある。

 グローバリズムの問題点を一言で述べるとすれば、それは、「平等性を求めるあまり、公平性が失われた」ことにあるのだと思う。

 資本主義は基本的に一物一価の「公平性」を追求するシステムなので、「平等性」を追求するグローバリズムは資本主義の延長線上にあるシステムではないとも言える。

 しかし日本では、共産主義者がグローバリズムを批判していたり、資本主義者がグローバリズムを礼賛していたりするのでややこしい。

 「公平性」に重きを置いた反グローバリストと、「平等性」に重きを置いた反グローバリストは、全くの別物なので注意しなければいけない。

■労働者を逆差別してきたグローバリズム

 例えば、同じ仕事能力を持った日本人と中国人がいたとしても、人件費が10倍も違うと競争にならない。グローバリズムでは、この問題を「人件費が違うのだから仕方がない」と片付けられてきた。まるで人件費の高い国が「」で、人件費の安い国が「」であるかのように。しかし、能力が同じであるのに、人件費が安い方だけに仕事が流れ、人件費の高い方には全く仕事がいかないというのは、個人の公平性を考える上では、極めて重大な問題である。

 同じ環境における人件費の高低で仕事の行き先が決まるのは仕方がないが、環境が全く異なる国家間の人件費の違いで仕事の行き先が決まるというのは、平等であっても公平ではない。

 あるいは、その日本人の能力が中国人の2倍だったとしても日本人は仕事を得ることができず中国人ばかりに仕事がいくとなると、個人の能力や努力という資本主義社会で最も重要な要素が全く意味を為さないことになってしまう。国家間の格差を無くすために個人の能力が無視されるというのでは、社会主義そのものだとも言える。

 人件費が高い国といっても、誰も好き好んで人件費の高い国に生まれているわけではない。同じように、人件費が安い国といっても、誰も好き好んで人件費の安い国に生まれているわけではない。人的資質を無視し、環境(物価や人件費)の違いだけで労働者を逆差別するシステム、残念ながら、それがグローバリズムの実際の姿だったとも言える。

■グローバリズムの必然だった「金融緩和」

 そういったグローバル経済下の歪な環境(物価や人件費の違い)を調整するという意味合いで行われてきたのが先進国(人件費が高い国)における「金融緩和」政策だった。グローバル経済下では、少しでも自国の通貨を安くすることが善と成り得た理由はそこにある。資本主義下におけるバラマキ政策は批判の対象となるが、グローバル経済下では話が違ってくる。それは単なるバラマキではなく、個人の努力ではどうすることもできない環境格差を埋めるために必要な政策だった。

 そんな切羽詰まった状況であったにも拘らず、頑として金融緩和を否定していた人々というのは、何だったのだろうか?と思う時がある。

 生まれた国の人件費が高いという理由だけで、能力が有るにも拘らず逆差別されてきた労働者、そんな労働者に対する慈雨としての「金融緩和」を否定していた人々というのは、きっと、一生食うに困らない金融資産を有した資産家達だったのだろう。もし、そうでないとすれば、グローバリズムを全く理解していなかった人達なのだろう。

 少し意地悪に言うなら、彼らは「ヘタに金融緩和などを行って、ハイパーインフレにでもなれば、私の一生遊んで暮らせるお金が紙クズになってしまうではないか!」というような底意を持っていた人々だったのかもしれない。

■トランプ大統領のジャパンバッシングは的外れ

 トランプ大統領が安倍総理に親近感を感じるのは、金融緩和を行ったことによって円安となり、中国に流れていた仕事の一部が日本に戻ってきたという実績を評価してのものだろうと思う。安倍総理がそこまで理解した上で金融緩和を行ったのかどうかは判らないが、アメリカ人から観れば、結果的には自国ファーストを実践した人物に映るのだろうと思う。

 ところで、個人の能力や製品が優れていれば、正当に(公平に)評価されるのが資本主義でありトランプ大統領の目指す反グローバリズムであるのならば、トランプ大統領のトヨタ批判は的外れもいいところとなる。

 例えば、同じ性能のアメリカ車と中国車が市場に出回って、人件費の安い中国車だけが売れるというのであれば、それは是正しなければいけない問題かもしれないが、現状ではそれほど人件費が違わないアメリカと日本を比べて、日本車が売れ過ぎているという批判は筋が通らない。ほぼ同じ土俵で競争しているのであれば、能力の違い、車で言うなら性能の違いで評価しなければ辻褄が合わないことになる。反グローバリズムであるからこそ、先進国同士の競争は正当に評価しなければいけない。

 先述した通り、グローバリズムの問題点は「平等性を求めるあまり、公平性が失われた」ことにある。世界中の労働者が同一の環境で競争するという社会の到来は、結果としては理想の社会では有り得ても、そこに行き着くためには手段を選ばないというような狭量な考えを持つようになると、世界経済(特に先進国の経済)は疲弊し、労働者は困窮し、理想の社会とは似ても似つかないディストピアを招くことにも成りかねない。

 「平等」を追求するか「公平」を追求するかの違いで、社会は大きく変わってしまう。「平等」思想が世界を覆い、闘争と破壊を齎した20世紀を反面教師とすれば、グローバリズムの本質が「平等」であった場合、その行き着く先は、極めて厳しい世界である可能性が高い。

 その危険性に気付いたトランプ大統領であるのならば、「公平性」をこそ旨としてほしい。

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