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民主主義という究極のポピュリズムを制す「かわいさ」

■冷血な人殺しでも人気絶大なプーチン大統領

2000年3月、ボリス・エリツィン大統領の後任としてウラジミール・プーチンがロシアの第2代大統領に正式に選出されたとき、ある方が新大統領を評して「何十人も人を殺してきた目をしてる」と言われたのが今でも忘れられません。

当時、プーチン氏は政治家としても大統領候補としても世界的にはほぼノーマークで、元KGBの優秀なスパイという以外ほとんど情報がありませんでした。プーチン大統領就任により、ゴルバチョフ、エリツィンと続いた民主主義ロシアがどうなってしまうのか、という危惧を多くの人々が抱いたと思います。

しかしプーチン大統領は、現在世界を震撼させているトランプ大統領の「ロシア・ゲート」も含め、自らのスパイとしての経験と手腕を最大限活かして政権を維持。白昼堂々とホテルに核物質を送り付けたり、夜のニューヨークのビルから突き落としたりと、独創的かつ強引な手法で反対勢力陣営の人々を排除していく様子も、これまでの民主主義国家の政治家像を大きく逸脱しています。

最近では、ウクライナ問題でプーチンを説得するためにわざわざクレムリンまで出向いた独メルケル首相に会う際、メルケル首相が大嫌いな大型犬連れで登場して威嚇するなど、ある意味、トランプ大統領にも通じるパフォーマンス政治家という側面ももっているようです。

ただし、ソ連時代ならいざしらず、現在のロシアはいちおう民主主義国家で、大統領も国民選挙で選ばれます。強引かつ強圧的な手段で治世するプーチン大統領が国民に恐れられ忌み嫌われ、人気も低いかというとそれがまったくの逆で、2012年の大統領選挙時には、63.6%と約2/3の得票。現在の支持率は90%近いとも言われます。

しかも毎年、「プーチンカレンダー」なるものが発売され大人気。上半身裸で釣りをしている写真や、映画スターさながらにサングラスにラフなジャケットで歩いている様子に混じって、花をもってポーズを決めたり、猫や犬と戯れていたり、まるでアイドルスターのようです。

このカレンダーを誰が買っているかは写真を見れば一目瞭然でしょう。ロシアの女性たちに圧倒的な人気を誇るのもまた、プーチン大統領の一面なのです。

■「かわいい」政治家に投票してしまう私たち

私たちが選挙で投票行動をする時、意識するかしないかの程度の違いはあっても、最も重点が置かれるのは「政策」ではなく、実は「政治家の人間性」であると私は思います。

比例区では政策で政党を選ぶ人も多いかもしれませんが、小選挙区で所属政党の政策に共感はできても、外見や話し方に嫌な感じをもってしまう候補者より、支持政党ではなくても好感をもてる候補者に投票した経験のある方は決して少なくないのではないでしょうか。

しかし、実際にはその候補者がどんな人間かは顔に書いてありません。もちろん本人や推薦人はいかに候補者の人間性が素晴らしいかを強調するでしょうが、その言葉が必ずしも事実とは限らないのです。

そこで私たちが人間性を判断する基準は、性別を問わず、その候補者に「かわいさ」を感じられるかどうかになります。単にハンサムであるとか美人であるとか(もちろん容姿は良いに越したことはありませんが)にとらわれず、その人を「かわいい」=「人間として好ましい」と思えるかどうか、が問題となってくるのです。

声や話し方、言葉の使い方、しぐさ、表情など、その人の内面からにじみ出てくるようなかわいらしさは、いくら頑張って作ろうと思っても決してマネできるものではありません。逆に、プーチン大統領のように実際には冷血な殺人者であっても、ふとした拍子にこぼれる笑顔などに、女性をはじめ一部の男性もかわいらしさをつい感じてしまうのです。

■「かわいい」政治家はしぶとい。

そのような視点で世界の民主主義国家の政治家たちを見てみると、興味深い事実が浮かび上がります。

つい先週の選挙でフランス大統領に選ばれたマクロン氏ですが、すでに欧州メディアが盛んに報道している情報によると、誰にでもすぐに好かれ(悪い言葉で言えば「取り入って」)相手の信頼を得ますが、それを裏切る場面も多々あったとされます。24歳年上の略奪愛妻と連れだって歩くマクロン氏の計算し尽くされた笑顔と、政党の創立者である実父を追放し、政党内で重責を担う姪との不仲も伝えられるル・ペン氏のドヤ顔とを比べたら、どちらが「かわいい」かは一目瞭然でした。

同じことは、昨年の米大統領選のクリントン氏対トランプ氏との闘いにも言えます。どこにもつけいる隙のない完璧なクリントン氏と、暴言・放言には事欠かず、何度も自爆しながらも子どもっぽい野次を飛ばすトランプ氏。憎まれガキのようなその態度は、ある意味、「かわいい」と言えないこともありません。

そして日本。

小泉純一郎元首相が大変女性に人気があったのは周知の事実ですが、現在の安倍晋三首相と麻生太郎副首相兼財務大臣のコンビが、ここまで長く政権の中心に存在している理由がわからない、という男性にはぜひもう一度きちんと研究していただきたい。

昭恵夫人も言っている通り、自民党の中には彼らより立派な経歴や学歴をもっている方々がごまんといますし、間違っても安倍総理や麻生副総理のような漢字の読み間違いはしないでしょう。しかし、この2人は、現在の自民党議員の中では際立って「かわいい」のです。恐らく小泉元首相が自分の後任に安倍首相を指名したのも、この「かわいさ」が大きな理由だったのではないかと私は推測しています。

同じことは稲田防衛大臣にも言えます。

彼女はウルトラ・ライトともいえる思想の持主ですが、まだ、当選一回目の頃の講演会で、あの舌ったらずの声で1時間以上にわたり「南京大虐殺はでっちあげ」「慰安婦の強制連行はなかった」との持論を滔々とぶつのを聞いたとき、私はただただ目が点になっていたのにもかかわらず、同じ会場で一緒に聴いていたおじ様たちは、まるで魔法にかかったようにうっとりと彼女の話に引き込まれていました。渡部昇一氏が会長を務める「ともみ組」という後援会組織もあり、まるで芸能人のファンクラブのように熱心に彼女を応援しています。

国会で涙ぐんでさんざん叩かれた稲田大臣ですが、ともみ組の支援者たちにとっては、その涙さえ好ましいものに映っているでしょう。その意味で、かわいい政治家ほど叩かれても叩かれても強力な支援者たちの支えによって蘇る、打たれ強い、しぶとい政治生命をもつのだと思います。

■政治家は自分が有権者に与える印象についてもっと研究すべき

SNS時代、「聡明な」「仕事ができる」「強い」だけの政治家がもはや大衆の共感を得ることができないのは、昨年のアメリカ大統領選、今年のフランス大統領選の結果をみても明らかです。(余談ですが、メルケル首相は恐らく再選を果たすと思います。彼女も非常に優秀な政治家ですが、難民問題にみせた情の厚さや、市井のおばさん然とした風貌がかわいらしさを醸し出しているからです)

そんな中、多くの選挙民が求めるものは、現在のさまざまな問題を解決し、将来の日本を形成していくための政策のみならず、「この人なら信頼して政治を任せたい」と思える人柄、つまり「かわいさ」です。

残念ながら、野党のみならず自民党の中にさえ、なかなかそれを真剣に考え実行している人がいないように思えます。(この点、マクロン大統領は非常に長けていると欧州マスコミは報道しています)

民主主義とは、良くも悪くもポピュリズムの政治形態です。

政策の立案は企業経営でいう「戦略」にあたりますが、それを実現させるための「戦術」の一環として、選挙ポスターのときだけ考えるのではなく、日ごろから自らの「かわいさ」をどうアピールしていくのか、真剣に研究して実践してほしいのです。それが最終的には最大の目標である政策の実現につながるのですから。

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