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カンヌ映画祭 どうしてネットフリックスの快挙が「白紙」に戻されてしまったのか? 映像業界の大きな変化と「映画文化」 - 真魚 八重子

 いまや複数のオンライン動画サイトがしのぎを削る時代。目的に合わせてHuluやNetflix、Amazonプライム・ビデオ、U-NEXT等々を利用している方も、最近は多いかと思います。日本では地上波のチャンネルが、番組のオンデマンドを用意している場合も増えました。

 アメリカではストリーミングサイトが、ドラマや映画といった独自コンテンツを制作しており、それらが高い評価を受けているのが、近年の映像業界の大きな変化でしょう。


ネットフリックスのリード・ヘイスティングスCEO ©getty

Amazonプライムでは「もう自分の映画に出ない」ウディ・アレンがドラマを監督・主演

 元々、アメリカではケーブルテレビが独自に質の良いドラマを制作していました。人気が高くて長期シリーズ化しているHBOの『ゲーム・オブ・スローンズ』(11年~)や、AMCの『ウォーキング・デッド』(10年~)は、日本でも知名度高し。そういった個性的な番組の人気を受けて、アメリカの地上波局であるNBCが、カンヌ映画祭男優賞も受賞しているマッツ・ミケルセンを主演に迎え、『ハンニバル』(13年~)を制作。残酷描写がハンパないのに、簡単に観られるNBCが人喰い博士ハンニバルをドラマ化したのも、「地上波の限界に挑戦」と話題となりました。

 また、ケーブルテレビやストリーミングサイトの独自制作のドラマは、携わる監督や俳優に、映画界でも著名な人々が参加しているのに目を見張ります。早かったのは、HBOであのマーティン・スコセッシが製作した『ボードウォーク・エンパイア 欲望の街』(10年~)。スコセッシは映像形態にも敏感ですね。またAmazonプライム・ビデオでは、ウディ・アレン本人が監督・主演を務めるドラマ『ウディ・アレンの6つの危ない物語』(16年)が、日本でも今年になって視聴開始になっています。アレンは自分の映画にはもう出演しないのに、ドラマでは主演を張るなんて……。

 昔の感覚では、俳優がテレビ向け作品に出るのは、映画という第一線から脱落した都落ち感がありましたが、今やアカデミー賞俳優のマシュー・マコノヒーや、世界的なスターであるブラッド・ピットまでが、ケーブルテレビやストリーミングサイトの映像作品に主演する時代なのです。


ウディ・アレン ©getty

突然の出品“追加事項”条件「フランスでの上映」「3年間配信できない」

 そして、今年に入ってNetflixオリジナル映画である『オクジャ』と『マイヤーウィッツ ストーリーズ(ニュー アンド セレクテッド)』(原題)の2作品が初めて、第70回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門へ正式出品されることになりました。

『オクジャ』は韓国のポン・ジュノ監督作品。すでにハリウッド進出を果たし、クリス・エヴァンス主演の『スノーピアサー』(13年)を制作しています。『マイヤーウィッツ ストーリーズ』はノア・バームバック監督作。自主制作時代に才能を認められ、最近はメジャー俳優を主演に迎えた映画を作るようになりました。


Netflixオリジナル映画『オクジャ』6月28日(水)より全世界同時オンラインストリーミング

 カンヌ映画祭に、ストリーミングサイトが制作した映画が出品されるとは快挙です。それだけ、良質な作品が作られている現実は、映画祭側も無視できない状況なのでしょう。

 ところが、5月10日になってカンヌ映画祭は、2018年度以降の出品作品の条件に「フランスの映画館での上映を約束する」という追加事項を発表しました。そしてフランスには、「劇場公開から36か月間は映画をストリーミングサービスで配信できない」という法律があります。つまりNetflixが制作した映画はカンヌに出品すると、必ずフランスの映画館で公開され、そのあと3年も配信ができない……。


Netflixオリジナル映画「マイヤーウィッツ ストーリーズ(ニュー アンド セレクテッド)」(原題)2017 年配信予定

ストリーミングサイト製作の映画に限定した賞を設けてほしい

 門戸が開けたと思った矢先の出来事でした。確かに映画館での上映がされない作品に、劇場側が不服を抱いたとしても無理はないでしょう。暗闇の中、大きなスクリーンと音で観るという、映画の絶対の形が崩れるわけですから。もしストリーミングと劇場公開を同時に行ったとしても、家で観られる利便性を考えると、「映画は映画館で観る」というこだわりを持ったコア層しか、劇場に足を運ばない可能性も高いです。かといって、Netflix側がカンヌ出品作を、自社では3年もお蔵入りさせなければいけないというのも、到底ありえない話です。やはり映画館とストリーミングサイトが、互いの利権を侵さない配慮がまずされるべきだったのでしょう。

『オクジャ』と『マイヤーウィッツ ストーリーズ』は、2017年度出品作なので上述の追加事項は適用されませんが、とりあえず、来年からはストリーミングサイト制作の映画が、カンヌ映画祭に出品されることはなくなりそうです。大変進歩的な出品決定だったのに、白紙に戻るのは残念な展開です。また改めてストリーミングサイト制作の映画に限定した賞を設けるなど、革新的な判断が行われると、カンヌも一層華やかになるかと思うのですが……。


70回目のカンヌ映画祭 ©getty

(真魚 八重子)

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