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本格化する北朝鮮の脅威への対応-すべてアメリカ頼みしかない厳しい現実-

危険度を増す北朝鮮核ミサイル

 毎年5月の連休中のワシントンD.C.における議員交流は、通常は日米韓の3ヶ国なのだが、今回は5月9日の韓国大統領選挙が控えていたので韓国は不参加、日米間だけで行われた。外交の1番のテーマはもちろん北朝鮮問題である。韓国議員がいればもっと突っ込んだ率直な意見交換ができただろうが残念だった。日米両国にとっても深刻な問題なのは同じである。

 

外交は政権交代を機に変る

 5月14日早朝、何回目かのミサイル発射実験が行われ、日本はお決まりの菅官房長官記者会見、安倍総理のぶら下がりインタビュー、NSC(国家安全保障会議)開催と、形式的対応が報じられた。しかし、北朝鮮にとっては日本の抗議記者会見など、どこ吹く風であろう。まず目指す相手は文在寅・新韓国大統領であり、トランプ大統領である。

 外交は今や首脳外交が中心となり、首脳同士の信頼関係が重きをなす。従ってその変わり目、つまり政権交代で停滞する外交の突破口になることが多い。今回を例にとれば、北朝鮮は 朴→文 、オバマ→トランプ への交代で、少しは北朝鮮包囲網を軟化してほしいと願っているはずである。北朝鮮の最近の度重なる核・ミサイル実験も、新しい段階に入る今後の外交交渉への圧力も意識してのものである。そして、今回は中国が今年一番の国際会議と力を入れる「一帯一路」会議の開幕日であり、石炭の輸入禁止等の経済制裁を強める中国への牽制の狙いもある。

防衛はプロが取り締まる

 トランプ大統領は、選挙期間中からオバマ政権なり、従来のアメリカの対応は北朝鮮に対しては何ら有効な結果をもたらしておらず、全面的に変えていく必要があると述べてきた。そのとおりであり、フロリダで習近平主席と二国間首脳会談の途中にシリアを攻撃したのも、北朝鮮への威嚇の一環であり、公約どおりに北朝鮮政策を変えたのだ。習近平に対しても中国が何もしないなら、アメリカとしても次の一手を講じなければならないというプレッシャーを直接、強烈な形でかけたのである。あまりにもできすぎたシナリオである。

 経済外交は、やっとライトハイザーUSTR代表が国会承認を得て全閣僚クラスが出揃ったが、各省のトップはまだ任命されていない。それに対し、防衛関係はトップもプロが就き、軍の組織はそのままでありきちんと動き出していることがわかる。

国内の支持を得やすい軍事的成果

 トランプ大統領は最初から国内に多くの敵が存在する。それを一気に味方に引きつけるのに一番手っ取り早いのは外交的成果、なかんずく軍事的成果である。現にシリア攻撃は、つい最近までの政敵ヒラリー・クリントンからも支持を得ている。この次の一手として北朝鮮をねじ伏せて、どんなものだと大見得を切りたいのだろう。どこの国の国民も自国の戦果に酔い、支持をしがちなのだ。燻る北朝鮮問題も、アメリカが軍事力を行使するとなると、意外に国民の支持を得てしまう可能性がある。危ういことに日本も若者を中心に右傾化している。

アメリカも自国防衛のために動き出す

 ミサイル発射実験は何度か失敗している。アメリカも今の段階ではとてもアメリカ本土には到達しないことを十分承知している。しかし、それを目指していることは事実である。だからこそ真剣に取り組み始めたのである。日本を守るためだけでなく、自国防衛が先にあり、そこに日本も並んでいるにすぎない。

 一方、今までのミサイル発射実験からすると日本は完全に射程距離内に入ってしまい、北朝鮮もまずは日本の米軍基地を標的にすると公言するぐらいである。それでは日本はどういう防備が必要か。残念ながら、一にも二にもアメリカに頼るしかなく、中国にも本格的経済制裁をしてもらい、柔らかく核ミサイルなどを持たないように仕向けていくしかない。つまり、外交手段しかないのである。

アメリカの攻撃に怯える北朝鮮

 アメリカ側は、議員も外交・防衛関係者の誰一人として、先制攻撃はありえないと否定した。しかし一方でティラーソン国務長官は、「あらゆる選択肢がテーブルに載っている」と北朝鮮に圧力を高めている。これに北朝鮮は怯えているに違いない。アメリカが怖いのだ。5月14日未明の発射は800Kmも飛び、高度も2000Kmを超え成功したようである。高度が高くなるとイージス艦からの迎撃ミサイルでは撃ち落としにくくなる。

 ただ、アメリカを安心させるために、つまり当面アメリカ本土は標的になりませんよと知らせるためにわざと失敗したり、飛距離を伸ばさないようにしている可能性もあるという。国際政治・外交は本当に騙し合いであり、息を抜けない。

アメリカが本当に警戒するのは日本の核武装

 日本の柔な外交陣にこんな神経戦はできそうもない。それよりも何よりも、脅しのネタになる核がない。だから、格好いいことをしたがる政治家や軍事関係者は、いつも日本も核保有すべしという極論に走る傾向がある。トランプ大統領が選挙期間中に日韓核保有容認論にちらっと触れたが、今は誰も何も言わない。それこそアメリカが最も恐れて警戒することだからである。

 力もあり、何をしでかすかわからない国という点では、実は日本のほうがもっと恐れられているのである。つまり、アメリカには日本が軍事国家になり、いつかアメリカにも牙を向けてくるかもしれないという不信感があるのだ。だから、今もあまりにタカ派路線に傾倒する安倍首相への疑念が消えない。

北朝鮮が安倍一強を補強

 北朝鮮の脅威が安倍政権のタカ派路線を後から支えているのである。もっと言えば、2012年秋の自民党総裁選の時に党員投票では、石破・安倍の順になったが、民主党政権の尖閣列島問題での対応のつまずきが2人のタカ派候補の得票増につながっている。その意味では安倍政権の誕生は、対中、対韓、対北朝鮮がらみで日本周辺が慌しくなっていることが後押ししたのかもしれない。

 そして、その延長線上で今の高支持率がある。つまり、日本周辺がキナ臭くなっており、国民は少々荒っぽくとも安定した政権でないと緊急対応ができないので、仕方なく安倍政権に頑張ってもらうしかないと思っている節がある。つまりは、自民党にも他に人がおらず、まして他の党では頼りなくて話にならないということなのだ。他の頼りない党の一員として忸怩たる思いである。

原発が北朝鮮の標的になる危険

 一部マスコミは、今回の出来事をXデーはいつかとか、まるでワイドショーのように扱っている。ところが、アメリカの関係者は北朝鮮もそんな暴挙に出ることはなく、アメリカの先制攻撃もないと、意外に静かだった。それよりもトランプ色の出る予算とオバマケアの廃止で国会がてんやわんやだった。

 政府は北朝鮮のミサイル発射を受けて電車を止めた。しかし、それでは日本の不安をかき立てるだけで何の防備にもなっていない。本当に日本に攻撃を与えるなら、原子力発電所を攻撃してくる可能性もある。むしろ止めるには原発のほうが先だといわれるのももっともなことである。

東アジア情勢が急展開する可能性

 北朝鮮が仮に暴挙に出るとしても、同胞である韓国に核ミサイルを向けることはあるまい。北朝鮮のTVが公言しているように、憎き日本が標的になることは間違いない。アメリカの原子力空母カール・ビンソンが日本近海に来たりして、今も緊張が続いている。アメリカもICBMを南太平洋に向けて発射し、北朝鮮への更なる威嚇に余念がない。

 文在寅大統領は、日本に対して敵対的だが、北朝鮮に対して融和路線をとると明言している。朝鮮半島の平和のために全力を尽くし、必要とあらば平壌に出向き、金正恩と会談することも厭わないとしている。

 自衛隊は安保法制の下で、いつでも外国に出ていく準備ができている。しかし、朝鮮半島が戦闘状態になり、韓国の在留日本人が危機に瀕しても、日本の自衛隊が救出のために韓国に入ることは、韓国が許さないだろう。ここでも日本はアメリカに頼るしかない。せっかくの安保法制が、周辺事態の朝鮮半島では働かないことになる。

 こうした状況の中で、日本がどう立ち振る舞うかが極めて重要になってくる。ここ数年が、日本外交の正念場である。

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