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ウーバーvsリフト、ライドシェアビジネスの行方 - 土方細秩子

 今年に入り逆風続きの米ライドシェアサービス、ウーバー(UBER)にまたもや打撃。グーグルの自動運転部門であるウェイモがライバルであるリフト(Lyft)と自動運転についての提携を行う、と発表した。リフトは出資会社の一つであるGMとも自動運転の商用車利用についての提携を行なっており、2018年から米国内でのテスト運用を行う、と発表済みだ。

 ウェイモとウーバーと言えば、ウェイモを退職したレバンドフスキ氏が企業秘密を持ち出し独自の自動運転会社「オットー」を設立、その後オットーが6億8000万ドルでウーバーに買収され、結果的にウーバーがウェイモの機密情報を入手した、として裁判沙汰になっている。「敵の敵は味方」ではないが、ウェイモがリフトとの提携を発表した意図は、ウーバーに打撃を与えることも視野に入っているのは確かだろう。

 ウーバーは1月にトランプ大統領の移民排斥につながる大統領令に、ニューヨークのタクシー組合などが反発してデモを行なった際も営業を続けたことが批判され、「デリート・ウーバー(ウーバーアプリを削除しよう)」というボイコット運動につながった。その後もセクハラ問題の浮上など、イメージダウンに繋がることが続いている。

 このためウーバーは上場企業ではないにも関わらず、財務状況の発表に踏み切った。それによると2016年の取り扱い高は200億(約2.2兆円)ドル、売り上げ高は65億ドル(約7000億円)ながら、経常収支は28億ドル(約3000億円)の赤字である。2015年にはウーバーの経常赤字は60億ドルとも報道されていたから、「赤字額は減少を続け、黒字に転換するのは数年以内」というウーバーの主張には一見うなずける点もある。

 現状ではウーバーとリフトではまだまだ差がある。昨年の実績では「ライドシェアサービスを使用したことがある」という人の中で「ウーバー使用」が8割だったのに対し、「リフト使用」は2割だったとされる。

 しかし、リサーチ会社7Park Data社によると、2015年の第三四半期からの1年間を比較すると、ウーバー利用者の増加が200%だったのに対しリフトは246%、同社が調査した全米20都市のうち19都市でリフト利用者の増加率がウーバーを上回っていた。

 ただし、リフトの昨年の収支は6億ドルの赤字と報道されており、規模としてはウーバーより小さいため赤字も少なく見えるが、黒字企業ではないことも確かだ。しかしリフトのジョン・ジマーCEOは上場することを視野に入れている、とも語っており、ウーバーよりも早く上場、黒字転換する可能性も見える。

実際に2つのサービスは何が違うのか?

 実際に2つのサービスは何が違うのか。利用者の立場として比較すると、まずアプリはリフトの方が分かりやすい。ドライバーへのチップ、予約サービスを加えたのもリフトの方が先だ。ドライバーの質は双方ほぼ同じ、というかリフト、ウーバー双方に登録しているドライバーも多い。しかし、利用者の不満に対する対応は圧倒的にリフトが上だ。

 どちらもドライバーを評価するページがあるが、道を知らない、対応が無愛想、などで星3つの評価をつけたとする。ウーバーからは特にアクションがないが、リフトは直ちにメールが来て「なぜ星3つしか評価されないのか、ドライバーの何が問題だったか」を聞かれる。道を間違えたため遠回りになった、などと返答すると、その分として5ドルほどの返金が行われた。

 ウーバーのドライバー管理には問題がある、と指摘されている。カリフォルニア州では5月に入り、ウーバーに110万ドルの罰金を課する、と発表した。理由は「飲酒、ドラッグ使用などの疑いがある」と利用者から苦情が寄せられたにも関わらず、ドライバーに対し調査や処置を行なっていなかったことだ。またマサチューセッツ州では「ウーバードライバーのバックグラウンドチェックが完全ではない」と州が調査に入る可能性も指摘されている。

 ウーバーの最大の問題は、ライバルであるリフトの躍進にある。ウーバーにとっては2016年にGMがリフトに5億ドルを出資、というのは非常にショックな出来事だったに違いない。

 しかもGMと提携したことでリフトは「エクスプレス・ドライブ」という、リフトドライバーに登録し、フルタイムで働けばGMの新車がほぼ無料でリースできる、というサービスまで提供できることになった。これはライドシェアサービスのドライバーになりたいが自分の車は基準に満たないため使えない、という人々にとって大きなプラスとなる。

 また、ライドシェアサービスはBMW、GMなどの大手自動車メーカーも続々と乗り出している。乗車数が増えてもなかなか黒字にならないビジネスにとって、最後にモノを言うのは資金力、ということにもなりかねない。

 「ウーバーは壮大な実験」と言われることも多い。それまで存在しなかった新しいサービスを社会に定着させた、という功績は大きいが、今後も存在を続け黒字会社として生き伸びていけるのか、ウーバーにとっては今年が正念場となりそうだ。

 今年に入り追い風に乗ったリフトは一部地域での料金値下げなどのキャンペーンを続々と発表し、一気にウーバーに追いつき追い越そうという姿勢が見える。この2つのライバルの動向が、今後のライドシェアのあり方を大きく変えていく可能性もある。

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