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ヨーロッパの憂鬱と国民投票

 先週は海外で大きな選挙が2つ行われた。フランス大統領選挙の決選投票では、マクロン候補が当選し、お隣の韓国大統領選挙では、「共に民主党」のムン・ジェイン(文在寅)候補が当選した。ムン新大統領の外交も含めた基本的スタンスがまだはっきりしていないこともあり、今回は論評を避けたい。

 フランスでは下馬評通り、新興政党アン・マルシェ!(前進!)代表のマクロン氏が、FN(国民戦線)のルペンに大差をつけて勝利した。EU離脱を仄めかしていたルペン氏が破れたことで、昨年のイギリス国民投票によるEU離脱と、その後のドミノ現象に一定の歯止めがかかったことで安心感が広がり、ユーロが市場で高くなった。

 しかしまだ安心できないのは、マクロン新大統領の議会での支持基盤が、極めて脆弱な点である。自らの政党アン・マルシェ!は出来たてのホヤホヤであり、議席もほとんどない。しかし中道系の複数政党で連立することや、6月の下院議員選挙で大統領選挙の余勢を買って、アン・マルシェ!が議席を伸ばせば、一定の足掛かりは出来る。

 一方の国民戦線は、大統領選挙ではルペン氏が巧妙に右翼的要素を隠して善戦したが、議員選挙となるとそれが出来ない。過去の右翼的イメージが拭えないまま選挙に突入すれば、議席が伸びる要素はあまりないのではないか。予断は許されないが、マクロン大統領の中道政策には安定と安心が伴うだろう。

 しかしなお、我々が気をつけて観察すべきは、ブレグジットをはじめとする反EUの動きに、EU自体がどう対応して行くかである。難民や移民対策の見直しだけでなく、各国の多様性を無視して官僚的に指令を出し続ける体質の見直しも不可避である。そうしなければEUの未来はとても暗いものになるだろう。次の試金石は9月のドイツ連邦会議選挙であり、EUの守り神・メルケル首相が踏みとどまれるかどうかだ。

 もう一つはネットの力も借りたポピュリズムが、国民投票に悪さをしないかどうかだ。EU離脱ノーが勝利すると思われたイギリス国民投票が、土壇場でひっくり返ったこと。イタリアのレンツィ首相が、上院の権限を弱める憲法改正国民投票を行ったところ、これも見事に予想が外れて否決、政権交代を生み出してしまったことはテイクノートしておかなければならない。

 ワイマール憲法下で度重なる国民投票によって台頭したナチスドイツの教訓から、ドイツでは今も憲法改正のための国民投票制度を、敢えて導入していない。我が国は既に憲法改正国民投票を重要な手続きとして組み込んでいるが、ポピュリズムに翻弄されないためには今後どうするか、叡智を集めなければならない。

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