記事

北朝鮮の新型中距離弾道ミサイル?:高度2000kmのロフテッド軌道で発射実験

北朝鮮が弾道ミサイル発射実験を行いました。

北朝鮮による弾道ミサイルの発射について(第2報)(2017/5/14 防衛省)

北朝鮮西部:亀城(クソン)付近から東に向けて発射。800km飛翔して海に落下させたようです。

20170514missile from kusong

特筆すべきは、ミサイルが到達した高度です。防衛省の発表等では、2,000kmまで達したとのことです。2016年6月に中距離弾道ミサイル「ムスダン」を1,414kmという高度まで打ち上げたことがありますが、今回はそれを大きく上回る高さで、いわゆるロフテッド軌道で発射されたようです。

ロフテッド軌道とは?

ロフテッド軌道発射とは、「角度をつけて高く打ち上げ近くに落とす」軌道をたどる発射方法です(下記イメージ)。

ロフテッド軌道

ロフテッド軌道で発射されると、迎撃可能な高度に標的が降りてくるまで待たなければなりません。標準の軌道(最小エネルギー軌道)と比べて落下速度にそれほどの違いは出ませんが、待っている分だけ対処時間が制約されることになり、迎撃作業が難しくなります。

ミサイル防衛が難しくなる?

ただ、難しくはなりますが不可能というわけではなく、限られた時間の中でどれだけ対応できるか、という状況になると思います。

現行の「SM-3ブロック1A」の射程は1,200kmで、到達高度は500km(600kmという資料も)、速度は秒速3〜4km。今日のように弾道頂点が1,000kmになると、頂点付近で迎撃することはできませんが、2011年4月の実験で秒速4kmを超える中距離弾道ミサイルの迎撃に成功しています。

現在日米で共同開発中の「SM-3ブロック2A」は、迎撃高度が1,000kmを超えるとみられます(2,350kmという資料も)。最小エネルギー弾道で飛翔する場合はもちろん、ロフテッド軌道で飛翔する弾道ミサイルであっても弾道頂点付近で対応できるようになります。米軍はブロック2Aを2018年までに配備する予定で、自衛隊でも2021年には更新されます。

新型ミサイルか?

今回のミサイルが発射された場所(クソン)や同じロフテッド軌道での実験ということから、報道を聞いた際には中距離弾道ミサイル「北極星2号(KN-15)」かと思ったのですが、モントレー国際大学院/Arms Control Wonkのジェフリー・ルイス氏の見解によると、4月の軍事パレードで登場したばかりの新型ミサイルではないかとされています。

憂慮する科学者同盟(UCS)のデビッド・ライト氏もまた、ルイス氏と同じく新型ミサイルの実験ではないかと指摘しています。さらに、今回のミサイルが標準的な軌道である最小エネルギー軌道で発射されれば、射程は4,500kmに達すると分析しています。

20170514missile range UCS
(David Wright, North Korea’s Missile in New Test Would Have 4,500 km Range, USC, 2017/5/13)

クソンから4,500kmというと下図の範囲内となります。

missile range

グアムが収まる中距離弾道ミサイル(IRBM)ということになりますね。

米太平洋軍(PACOM)も「今回発射されたミサイルは大陸間弾道ミサイル(ICBM)ではない」と発表しています。

ロフテッド軌道実験の目的は?

北朝鮮がロフテッド軌道発射実験をする目的はそれほど込み入ったものではないと思われます。全力で試射したいものの、さすがの北朝鮮もICBMをフルレンジで試射して米国を徒らに刺激するのが悪手であるとの認識があるのでしょう。ロフテッド軌道能力を示すことで日本を脅かす意図はほとんどなく、北朝鮮にしてみればIRBM〜ICBM級の再突入体(RV)の耐熱試験が必要ですから、IRBMのロフテッド実験でデータをとりたい、というところだと考えられます。

◇ ◇ ◇
言うまでもなく、北朝鮮の弾道ミサイル発射は、国連安全保障理事会決議169517181874への明確な違反であり、いくら発射点から800kmの飛翔距離だったとはいえ、我が国の安全保障を脅かす重大な行為です。

なお、「ミサイルの着弾地点が日本よりロシア領に近く、ロシアを刺激することになるけど大丈夫?」とホワイトハウスが声明を出しているのは興味深いですね(2017/5/13 ロイター)。

メモ代わりの更新でした。

あわせて読みたい

「北朝鮮」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    デリヘルに素人専門が増えた理由

    PRESIDENT Online

  2. 2

    質問力なし 報道のTBSは死んだ

    和田政宗

  3. 3

    小池氏会見まるでイキった大学生

    キャリコネニュース

  4. 4

    自民は本気の小池氏を甘く見るな

    安倍宏行

  5. 5

    橋下氏 解散批判する野党に苦言

    橋下徹

  6. 6

    斉藤由貴に私刑行う週刊誌に疑問

    篠田博之

  7. 7

    小池氏登場で自民圧勝は不確実に

    近藤駿介

  8. 8

    北外相「米爆撃機撃墜の権利も」

    ロイター

  9. 9

    橋下氏 新党で延命する議員は害

    橋下徹

  10. 10

    北の日本攻撃ありうる歴史的背景

    ヒロ

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。