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トヨタ社長の苦悩……

昨日も触れましたが、トヨタ自動車の業績が急減速です。その「続き」です。


※会見する豊田章男さん

17年3月期の営業利益は前期比30.1%減、今期はさらに19.8%減の予想です。いったい、14年~16年3月期までの3期連続最高益の勢いはどうしたのか。

トヨタで何が起きているのか。この急減速を、どう見ればいいのでしょうか。昨日も書きましたが、その背景に円高があるのは、間違いありません。しかし、それだけでしょうか。

昨日、社長の豊田章男さんは、減益の原因として、為替とともに「構造的な問題」をあげ、「大きくなり過ぎたことがいちばんの問題である」と語りました。対策としてカンパニー制を導入しましたが、まだ導入して1年が経ったばかりで、効果が出てきませんよね。

大きくなり過ぎたことは、構造的な問題を引き起こしているだけではないんですね。そこには、巨大企業の“宿命”ともいえる問題が存在しているんです。豊田章男さんは、昨日の会見の席上、「責務」という言葉を何度か口にしました。

「トヨタは、“R&D(研究開発)”“設備投資”“株主還元”ともに一兆円規模で続けてきております。そのことを持続的に継続していくことが、ステークホルダーとともに持続的に繁栄していく一つのトヨタの『責務』だと思っております」

“R&D”、“設備投資”、“株主還元”、合わせて3兆円規模を支出する「責務」は、じつに大きい。「大きくなり過ぎた」ことによって、社会から求められる「責務」も、いまや巨大なんですね。

これを全うするのは並大抵のことではない。いまや、トヨタが躓けば、“日本経済”が躓くというのは、もう間違いないですからね。

つまり、トヨタの社員は、想像を絶する“重荷”を背負っているんですね。トヨタという会社も、「大きくなり過ぎた」結果“感応力”が落ちているようです。例えば、トヨタ自身の“相場観”の狂いです。

私は、トヨタ関係者が、技術や市場などの「“相場観”をしっかりと見ていきたい」、と口にするのを何度も聞きました。

そもそも“相場観”は、内向きでは養えません。外に目を向け、消費者の声を聞き、競合他社や異業種、世界の動向など大きな流れを読み取る力が必要だからです。

トヨタは、HV(ハイブリッド)のあまりの成功体験から、内向きになり、いつの間にか“相場観”が狂ってしまっているのではないでしょうか。

EV(電気自動車)への出遅れは、その最たる例といえるのではないでしょうか。

トヨタが世界初のHV(ハイブリッド車)「プリウス」を発売したのは、1997年です。以後、「プリウス」をはじめとするトヨタのHVは大ヒットし、世界で累計900万台以上が販売されています。

この成功体験が、EV(電気自動車)への出遅れにつながった。つまり、HV技術を高く買い過ぎたあまり、EVに投資すべきタイミングを逸したのではないか。

トヨタは、「HVやFCVの技術を極めていれば、EVはいつでもつくれる」という説明を繰り返してきました。

テスラ・モーターズのEV「モデル3」が、約40万台の予約があることについて、あるトヨタ役員に感想を聞いたところ、「ご同慶の至り」と、言外にテスラは40万台のEVをどのようにして生産するのか…と実現の難しさを皮肉る発言をしたものです。

少なくとも、日産やテスラ、フォルクスワーゲン、BMWなどのEVが存在感を増すなかで、トヨタは、EVの波に乗り遅れているように見えます。あわててというかようやく昨年12月に社長直轄の「EV事業企画室」を、立ち上げましたよね。

「いつでもEVをつくれる」という考えは、正直、甘かったのではないでしょうか。プラットホームも違えば、製造ラインも変更しなければつくれませんからね。

“相場観”の狂いは、技術だけではありません。コスト意識も、トヨタ社内と他の自動車メーカーとでは、いまや大きな差があるといわれます。17年3月期の決算では、営業利益が減少した要因として、「諸経費の増加ほか」が5300億円にのぼります。このあたりに、大企業特有の“緩さ”が垣間見えるようにも思われます。

実際、提携したスズキやダイハツ、マツダと比較すると、トヨタはさまざまな面で“緩さ”が見られると、トヨタの幹部から聞きました。

2014年3月期から3期連続の過去最高益で、トヨタは、いつの間にか“緩み”が生じたと同時に、あまりにもトヨタは大きくなり過ぎて、組織が重くなってしまっているのではないでしょうか。今一度、目を外に向け、あるいは客観的視点をもって、自己認識を改めるべきときではないでしょうかね。

昨日決算発表をする豊田章男さんを観察していると、その表情は厳しかったし、“笑顔”がまったくなかったんですね。超巨大企業の苦悩が顔にはりついていました。

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