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旧日本軍慰安婦を上回る”国連PKOの闇”は解消できるのか

国連PKOに関して犠牲者300人以上のレイプや性的虐待が発生

[ロンドン発]ロンドンにあるシンクタンク、国際戦略研究所(IISS)で5月9日、「武力紛争調査(Armed Conflict Survey)2017」の結果が発表された。シリア内戦やメキシコ麻薬戦争など世界中で起きている紛争による犠牲者は2014年の18万人、15年の16万7千人から16年は15万7千人まで減少した。

しかし、シリア内戦による犠牲者は昨年、5万人を記録。内戦が始まった11年からの合計では29万人にのぼり、犠牲者数では4年間続いた1990年代のボスニア紛争の2倍以上に達している。

こうした深刻な状況を受け、日本を含む125カ国以上が国連が世界中で展開する16のミッションに合計11万7千人の要員を派遣している。国連PKO(平和維持活動)の年間予算は約80億ドル(約9100億円)。しかし、武力紛争を抑えるには政治的にも組織的にも十分とはとても言えないのが実態だ。

イギリスの大学キングス・カレッジ・ロンドンの紛争・安全保障・開発調査グループで責任者を務めるマッツ・バーダル(下の写真の左端)は「国連PKOによる政治的な紛争解決を目指すためには、持続的かつ組織的な限界に注目する必要がある」と指摘する。

「武力紛争調査2017」の結果が発表された国際戦略研究所(筆者撮影)

しかし、国連PKOには、それ以上に深い闇がある。同じキングス・カレッジ・ロンドンの客員教授アンドリュー・マクラウドが質問に立った。「国連事務総長(当時、潘基文)は昨年3月、国連PKOに関して311件のレイプや性的虐待があったことを認めた。他の国連の活動を含めると、その数はもっと膨らむ」

南スーダンなどの武力紛争地では武装グループによる性的暴力が横行し、本来なら国連PKO部隊がこれを阻止する任務を負っているのだが、PKO要員によるレイプや性的虐待が後を絶たないのが悲しい現実だ。

まず、現事務総長アントニオ・グテーレスが今年2月に出した報告書を見てみよう。

国連PKOや特別政治ミッションの要員によるレイプや性的虐待の報告は計103件。このうち被害者が子供だったのは実に47件。難民を支援する国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の要員による被害が26件、国連パレスチナ難民救済事業機関は8件、国連児童基金(ユニセフ)3件、国連開発計画2件と国連関係だけで145件、判明している被害者は少なくとも311人にのぼっている。

国連安全保障理事会から権限を委任された国連以外の部隊による被害も20件ある。

キングス・カレッジ・ロンドンの客員教授アンドリュー・マクラウド(筆者撮影)

人権弁護士で国際援助隊員(エイド・ワーカー)だったマクラウドは旧ユーゴスラビアやルワンダの内戦で赤十字社の国際委員会と働き、05年のパキスタン震災では国連の緊急協力センターで責任者を務めた。マクラウドは「これは氷山の一角だ。国連の人道支援活動に関して起きたレイプや性的虐待で起訴されたケースはこれまで1件もない」と国連のリーダーシップの欠如を厳しく指弾した。

1990年代後半からまったく事態が改善していない

前事務総長の潘や現事務総長のグテーレスが発表した報告書や内部監査部(OIOS)の内部調査をもとに、国連PKOと特別政治ミッションに関連するレイプや性的虐待の報告件数と、それ以外の国連活動を加えた数字をグラフにしてみた。カウントの仕方がそれぞれ微妙に異なっているので多少間違っているかもしれないが、大体こんな感じになる。

提供:木村正人

昨年4月、米上院外交委員会の公聴会で委員長ボブ・コーカー(共和党)が「もし国連PKO部隊がわが町に派遣されると知ったら、即座に仕事を中断して次の飛行機に乗って帰宅し、妻や家族を守るだろう。そんな国連の活動に私たちの税金が使われているのに、事態は一向に改善しない。事務総長はいったい何をしているのか。こんな国連の無能な指導者を放置したままで良いのか」と怒りをぶちまけたことがある。

国連PKO米国特使イゾベル・コールマンもこう指摘した。「性的な搾取と虐待は1回につき1~3ドルの対価や、兵士への割り当ての一部である卵2個と引き換えに行われている。レイプした後、金を渡して合意の上で性行為を持ったように見せかけている。これは05年の国連報告書にある記述だが、10年以上経っても何も変わっていない」

国連PKO絡みの少女買春、性的虐待が非難されだしたのは1996年以降だが、事態は全く改善されていない。最近の報告事例をみると――。

・04年12月、アフリカ中部ブルンジで国連PKOの兵士6人が子供への性的虐待容疑で停職
・05年1月、国連PKO部隊1万人が派遣されているコンゴ民主共和国で13歳の少女がPKO兵士に性的虐待された疑惑をきっかけに調査開始。04~06年に140件の性的虐待が行われていたことが判明
・10年、コートジボワールで食料の見返りに8人の少女がベナン人PKO兵士と性行為
・11年、ハイチでウルグアイ人PKO兵士4人が18歳の少年をレイプし、録画した映像を投稿
・13年、マリで少なくとも4人のPKO兵士に女性がレイプされる
・14年、中央アフリカで3人の少女が縛られ、フランス軍の司令官によって犬との性交を強いられる
・15年6月、ブルキナファソで2人のフランス人PKO兵士が子供2人に性的虐待を加えて停職
・15年8月、中央アフリカで、PKO兵士が少年と父親を殺害し、少女に暴行した事件が発覚。現地のPKOトップが引責辞任

「児童性的虐待に関して国連は言い逃れできない」

前事務総長の潘はPKOトップ、司令官とテレビ会議を開いて規律の徹底を指示。国連総会も、少女売春や性的虐待、レイプに関与したPKO部隊の派遣国の国名を公表することで合意した。マクラウドに何が問題なのか質問した。

――問題の核心は

マクラウド:「コフィー・アナンも、潘もPKO部隊の性的虐待について対策を講じると表明してきたが、この20年間、事態は何一つ変わっていない。事務総長のリーダーシップが求められているが、何も行われなかった。PKO部隊だけではなく、国連の職員も同じ問題を起こしている。国連は数百ものレイプや性的虐待が起きていることを認めているのに、ただ一人として刑務所に入っていない」

「国連が送っているシグナルは一体どういう意味を持つのか。これは小児性愛者の犯罪に対して国連は寛容であるというシグナル以外の何物でもない。国連はカトリック教会に次ぐ小児性愛者の巣窟だ。いやカトリック教会より多いかもしれない」

――国連事務総長のリーダーシップに問題があるのか

マクラウド:「その通りだ。私はいくつも対策を提言している。職員やPKO要員を採用する際、小児性愛者であるかどうか特別なチェックが必要だ。小児性愛者を見逃さない内部告発制度の確立、子供へのレイプ犯罪に対するDNA検査の実施と法的免責の剥奪、国際刑事裁判所に国連職員やPKO要員を訴追する権限を与え、被害者の難民登録を認めるなどの対策が講じられなければならない。しかし有効な対策は取られていない。国連は問題を深刻にとらえていないからだ」

「児童性的虐待に関して国連は言い逃れできない。国連は部隊を派遣した国を非難しているが、そうではなくて国連事務総長のリーダーシップに帰せられる問題だ。国連の中で内部告発しようとすると、解雇される傾向が見られる」

「グーグルに『国連、食料、セックス』と入力して検索すれば、どれだけ多くヒットすることか。卵をエサにPKO要員による少女買春が行われている。同じような問題が国連ではなく民間企業で起きていたら、このように黙認されるのか。国連は小児性愛者に免罪符を与え続けている」

国連PKO要員や国連職員には刑事免責が認められていることが、レイプや性的虐待が横行する温床になっている。旧日本軍慰安婦の問題は国連で何度も何度も糾弾されてきたが、国連は「日本の過去」をほじくり返すより、今も公然と繰り返される性的収奪にストップをかけるべきだろう。

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