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日本国民の七割ほどは「憲法改正に詳しくなく、どうでもいい」と思っている

 都議選も近いこともあり、各メディアで全国的&東京都民向けの予備調査が進んでいるところですけれども、設問によって毎回大きく結論がブレることで有名な「憲法改正に関する是非」も多くの媒体が調査項目に入れております。

 結論から言うと、どうも日本人はメディアや安倍政権・官邸が思うほど憲法改正について興味がないのだということになります。年金などの社会保障や、雇用・経済情勢に次いで出産・子育て、安全保障・外交問題の下に憲法問題が来る程度でして、みんな関心ねえんだなあとひしひしと感じる結果であります。

安倍首相「改憲の機は熟してきた、必ず一歩を踏み出す」:朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/articles/ASK515V5JK51UTFK00R.html

 2007年にNHKが実施した憲法改正に関する世論調査が下敷きになって、どっちに風向きがあるか検証することが多いようです。07年当時は憲法改正論議が盛り上がりを欠いている中で、ある意味で何もない状況で国民が憲法改正についてどう思っているのか、をきちんと訊いたという点でいろいろな思いが去来するわけであります。

憲法に関する意識調査 NHK 2007年
https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/yoron/social/pdf/071201_02.pdf

 第5問を見ればわかる通り、憲法を改正する必要があると答えた人は40.8%、改正する必要がないと答えた人は24.4%、どちらとも言えないその他が34.7%であって、単純な多数決で見たときは「憲法改正したほうがいいんじゃね」と思う日本人は多いとしても、憲法改正に必要な議席数を考えるとむしろ「どちらとも言えない」人たちがどう転ぶのかを見極めることが大事になってきます。だからこそ、この中間層の動向がどちらに傾くのかということを考えるうえでは、世論調査で憲法問題を聞き続けて日本人がどういう気持ちの変化を持っているのか知ることが重要だよという話になるわけです。

 ところが、今回予備調査の中で大きな動きが2つあって、片方が「繋がりやすい携帯電話に対するRDDサンプリングを実施し始めたこと(ただし前回数値との連続性は失われる)」こと、もう片方が「ネット調査やインタビュー方式など複数の調査を横断的に行って、意見のグラデーションを調べ量になった」ことがあります。

 前者は、従来のRDDでも充分バイアスの補正はしているけれどもやはり携帯電話で直接話が聞ける若い人(固定電話を持つ割合が高齢者に比べてとても低い)の意見を吸い上げられること、また後者は憲法改正に「賛成か、反対か」では賛成なり反対なりの回答をするけれど、その意見がどのくらい強固であるかがよう分からんところがあったのでこれからはもう少し細かく聞きましょうという流れになったことがあります。調査手法が進歩したというのもあるのですが、国民にとって憲法問題をどう受け止めるのかを判断するうえでは足りないピースを加えたいという強いニーズがあったということの裏返しでもあります。

 で、設問の文章や順番によっても前後するんですけれども、若い人に憲法問題に関する関心が薄いのは当然として、60代以上の男女ともに憲法問題に対する盛り下がりが観られるのが気になります。もっとも、彼らの差し迫った問題は孤独死・独居死に始まる医療年金介護といった社会保障関連が切実すぎるというのもある一方、実のところ、もっとも世間一般の時事問題から遠くなる世代が60代70代80代でもあります。実際、新聞購読を辞めてしまう世帯主の7割がリタイアした60代70代世帯であり、主たる情報源はテレビが圧倒的になっています。地味に安全保障問題に一番関心があるのが60代なのは、間違いなく朝の情報番組や昼のワイドショーで北朝鮮問題を煽られたからだと思ったりします。

 10年前に比べて「憲法問題に比べて大きく関心が失われている」というわけではなく、「もともとそれほど国民の主たる意識の中に憲法問題がなかった」のでしょう。先に挙げたNHKの調査では、第1問に「あなたは憲法問題に関心を持っていますか」と持ってきているので非常に関心がある18%、ある程度関心がある55%になりますが、年齢のバイアスを取り除き、設問を後ろのほうに持って行ってみるとどの調査でも関心があると回答するのは35%から40%弱ほどに下がってしまいます。あるいは、ほかの問題と並べて「この中で重要と思う問題を3つ、特に重要と思うものを1つ挙げてください」とすると、憲法問題が特に重要だと回答する人たちは一桁%真ん中になってしまうわけです。

 日本の未来を長期で考えたときに、憲法問題が日本の飛躍に障害となるのだ、だから国民の関心事項から遠かったとしてもいま安倍政権が取り組む価値があるのだ、という理屈はまあまあ分かります。戦後政治の中で、安倍内閣が最長の安定政権となり、敵失もあるとはいえ依然六割超の支持率を維持しているのは大事なファクターだとも思います。また、この安倍政権で憲法改正ができないのだとしたら、いったいいつ、誰がどう改正できるのか、という議論があるのも理解できます。

 「じゃあどう改正するの」という議論の中で言えば、先日の安保法制に関する事例や、昨今の共謀罪に関する議論を見ていると、お世辞にも精緻な論議が国会内で積み重ねられているようにも見えません。○○が必要だ、なぜならば、という詰めをしていくにあたって、まあ実際に施行されてしまえばそれほど大きな問題が起きないのだとしてもちゃんと国会で議論しておくことの大事さは私がここで述べるまでもないことです。

共謀罪の共謀
http://danblog.cocolog-nifty.com/index/2017/05/post-e95b.html

 国民の大多数はたぶん興味がないんだろうなあと思うような憲法改正においても、その機運をしっかりと高めて議論を積み重ね、日本の将来を見据えた憲法論に仕上げていくには、いまの安倍政権の一本調子の方法論だけでは厳しいのではないかと感じます。いつだか、自民党の改憲案がクソすぎて笑いものになったりしてましたが、あんまりフワッとした内容で改憲論を進めるとデッドロックになってもおかしくないのでもうちょっと考えたほうがいいんじゃないでしょうか。

やまもといちろうメルマガ「人間迷路」

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