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空き家1000万戸を外国人が占拠する日――2020年「日本の姿」 - 牧野 知弘

 東京が56年ぶりの五輪を迎える2020年、政治や経済、国際関係はどう変化しているのか。スポーツや芸能、メディアや医療の世界には果たしてどんな新潮流が――。各界の慧眼が見抜いた衝撃の「近未来予想図」。

 金融緩和の追い風を受け、都心の新築マンションは一時、局地的な「バブル」現象が起こった。にわかに活況を呈した不動産市場の未来を、不動産コンサルタントの牧野知弘氏はどう見るのか。

(出典:文藝春秋2016年7月号)

増え続ける訪日外国人

 訪日外国人数の伸びが止まらない。日本政府観光局の発表によれば、2016(平成28)年4月の訪日外国人数は208万人と、単月としては前月の201万人を上回る過去最高値となった。

 昨年の訪日外国人による消費額は約3兆5000億円。「爆買い」と称されるようにそのインパクトは銀座の百貨店の売上を支え、地方でも豪華クルーズ船で訪れる観光客が1日に落とすお金は1寄港あたり約1億円にも上り、不況に苦しむ地域経済にとっても干天の慈雨となっている。

 日本政府は、こうした状況をふまえ、今年3月、これまで2020年2000万人としていた訪日外国人数の政府目標を大幅に上方修正。訪日外国人数と消費額をそれぞれ、4000万人、8兆円とした。

 近年の政府目標でこれほどの大幅上方修正を行った例はほとんど聞かれない。それだけ政府も訪日外国人による経済効果に期待を寄せている証拠とも考えられる。

空き家が外国人の住居に

「ニッポン、いいね!」と考える外国人旅行者の増加は、日本に「暮らしたい」という願望を持つ外国人が増加することを意味している。

 2020年、日本は溢れかえる外国人を取り込もうとする動きがますます顕著になることであろう。つまり、農業や建設業だけでなく、深刻化する人手不足を背景として、外国人労働者を積極的に雇い入れる動きが全産業に波及するのである。「合法」であろうが「不法」であろうが外国人労働者は日本で暮らしていくための住居が必要となる。彼らはどこに「住まい」を求めることになるのだろうか。

 空き家である。

5軒に1軒が空き家と化す


©共同通信社

 総務省「住宅・土地統計調査」によれば、2013年における我が国の空き家数は820万戸、総住宅数に占める空き家の割合(空き家率)は13.5%にものぼっている。すでに空き家は地方だけの問題ではなく、東京都の空き家は81万7000戸で都道府県別でその数は断トツ1位である。

 野村総研の予測どおりになると2018年には、空き家は1000万戸を超え、2023年で1397万戸、空き家率は21%、なんと日本の住宅の5軒に1軒が空き家という深刻な状況になっているはずだ。

持ち家は「困った住宅」になる

 特に深刻なのは、個人の持ち家の空き家が激増することだ。その数は2023年には500万戸を超えてくる。人口構成に占める割合の高い、団塊世代が続々後期高齢者の仲間入りをすることから、彼らがモーレツサラリーマンとして買い求めた都市部郊外の住宅地の空き家問題が勃発していることだろう。

 子供は都心部のタワーマンション住まい。親が住んだような郊外の家から通勤するなどというオールドファッションな生活を選択する子供はほとんどいない。それでも親が亡くなれば、彼らにとっては無用の長物でしかない「家」を相続せざるを得ない。

 空き家として放置することへのペナルティーも強化され、空き家のまま所有することが、重い負担になっているはずだ。人口の減少や働き手の不足が顕著になる中で、売却はもちろん、賃貸に供することもできない「困った住宅」が激増していることであろう。

「ヤミ民泊」が横行する

 彼らがそこで目を付けるのが「空き家活用」としての外国人への賃貸である。背に腹は代えられない。不法であるかどうかは、この際あまり関係がない。自らの経済状況を維持し、困った住宅の「問題先送り」を行うためには外国人であろうが、立派な「借り手」なのである。

 新法が制定される予定の民泊も、外国人労働者の格好の隠れ蓑になるであろう。新法ではカバーできない「ヤミ民泊」が横行するからだ。そもそも「ニッポン、いいね」で、日本の住宅を「爆買い」した外国人が、運用利回りを上げるために、多くの同朋を宿泊させる行為はすでに蔓延しているが、これらをすべて新法の中で規制することは不可能である。

 いっぽうで、「外国人慣れ」をしつつある日本人側にも外国人のこうした姿に対して、

「まあ、しかたがない」

 といったあきらめと寛容が生じている可能性がある。

 いままでは外国人といえば、「異質な人」で、彼らの行動は、国内では常に「目立ち」、監視される立場であったものが、「隣にいる普通の人」となってくるのだ。

不法滞在の外国人の増加で治安は悪化

 結果としての「空き家対策」となってしまった外国人居住が社会にもたらす影響はなんだろうか。

 1つは、外国人技能実習制度は、本来の趣旨とは裏腹に形骸化し、「不法」に働く外国人に対して、従来からの「移民は入れない」という政府方針に隠れて事実上黙認することになるであろう。

 そしてもう1つは、治安の悪化である。空き家だらけでコミュニティが失われてしまった地域やアパート、マンションなどでは急速なスラム化がすすみ、不法滞在の外国人で溢れかえる。少数派となった日本人が町や建物から逃げ出すことで、スラム化には拍車がかかることだろう。西側諸国の一員として行動する日本にもテロに対する危機は今以上に高まっていることが予想される。その時、この空き家に「巣食っている」大勢の不法滞在外国人の中に、凶悪なテロリスト集団が紛れ込まないとは、断言できない。

観光大国の危機

 かつて、不動産、特に一生をかけてローンを返済して取得した住宅は日本人にとっては間違いなく「資産」「財産」であった。皮肉なことに、この「財産」であったはずの住宅を相続した子供たちが持て余し、行き場のなくなった住宅が、結果として不法滞在を助長する現象が2020年、東京五輪閉幕の鐘とともに、日本の新たな社会問題として表舞台に登場することになるであろう。

 2020年訪日外国人は、おそらく政府目標である4000万人を楽々クリアすることであろう。しかし、これも皮肉なことであるが、日本の都市のスラム化、治安の悪化は外国人観光客の脚を日本から遠ざけることになる。ましてやテロ事件に日本も見舞われるようになれば、「インバウンド」というバブルはあっというまに雲散霧消してしまうかもしれない。営々と築いてきた観光大国への道の陰で、将来の日本に対する警鐘が鳴っているのである。

出典:文藝春秋2016年7月号

牧野 知弘(オラガ総研社長)

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