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「悲劇のヒロイン」でもあった"アジアの歌姫"テレサ・テン

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テレサ・テンさん死去から22年

香港のテレサ・テンファンクラブ
台湾・台北市から車で1時間。最北端・金宝山墓地に〝アジアの歌姫〟として人気だった台湾の歌手、テレサ・テンさん(本名=鄧麗筠)は眠っている。台北市内と太平洋が一望できる墓地で、その入口の地面にはCDを形取ったモニュメントがあり、テレサさんの曲が日本語と北京語、そして英語の3ヶ国語で1時間毎に流れる。多くのファンは、そこで在りし日のテレサさんを偲ぶ。

テレサ・テンさんが亡くなったのは1995年5月8日夕刻のことだった。タイ北部のチェンマイに休暇で滞在中、気管支ぜんそくの発作による呼吸困難で急死した。まだ、42歳という若さだった。

「テレサ・テン急死」

ショッキングなニュースは日本中を一気に駆け巡った。しかも、その亡くなった日は90年に死去した父親の命日でもあった。

…それから22年という年月が経った。

「時の流れに身をまかせ」「つぐない」「愛人」「別れの予感」…。テレサ・テンさんの作品は、今でも「記録」と共に「記憶」の中に残り、歌い継がれている。

テレサさんはチェンマイに、亡くなる1ヶ月ほど前——4月2日から「保養のため空気のいい土地」という理由から滞在していた。宿泊していたホテルは一泊1200ドル(当時の日本円で約10万2000円)の最上階プライベートルーム。恋人だった(フランス人の専属カメラマンの)ステファン・ピエール氏(当時32)と一緒だった。

ピエール氏は7年来の恋人だったと言う。過去に香港やパリに滞在していた時も同棲生活を送っていたそうだ。ある情報では、テレサさんは1000万円以上もするカメラ機材を買い与えていたとも。

憶測が飛び交ったテレサ・テンの死因

訃報を知ったピエール氏は救急搬送されたチェンマイ市内のラム病院に駆けつけ、テレサさんの亡骸から片時も離れず付き添っていたという。そこで台湾や香港の芸能記者がテレサとの関係を質問したところ「突然に殴りかかってきた」と言われる。「テレサの急死で情緒不安定になっていたのかもしれない」。そんなこともあってか当初、死因については「さまざまな憶測が飛び交った」と現地芸能記者は振り返る。

亡くなる前の旧暦の正月(2月上旬)頃から風邪で体調を崩していたという情報もあった。現地芸能記者がラム病院で担当していたスメット・ハンタクン医師に問い質すと「94年12月にも激しい発作を起こして危篤状態に陥っていた」ことを明かしていたという。

いずれにしても国民的歌手だったテレサさんの急死は台湾、香港の放送や新聞は連日トップ項目で扱われ、日本以上の過熱ぶりとなった。現地の音楽関係者によると、その内容は「アジアの歌姫の急逝を悼む内容がほとんどだった」と言うが、その一方で5月10日付の台湾「民生報」や香港「電視日報」などが、テレサさんに「愛滋病(エイズ)」の噂があることを大々的に報じたことから大騒ぎとなった。

「急死だったことからタイ当局が司法解剖を求めたんですが、親族がその要求を拒否したんです。そういったこともテレサさんのエイズ説に拍車をかけたようです」(週刊誌記者)。

「電視日報」は、テレサさんは香港の女性映画監督と同性愛関係にあったと伝え、「これまでもエイズの噂が頻繁に出ていた」と、何と女性監督の顔写真入りで報じていた。また、同紙によると、テレサさんはかつてこの件の取材に関して「否定も肯定もしなかった」と言う。

テレサ・テンの2人の兄
そういった噂に対して、テレサさんの実兄のフランク・テン氏は一蹴。「テレサは9歳の時からぜんそくを患っていた」と、死因がぜんそくによる発作だったことを強調した。

ところが、台湾でテレサさんの音楽や思想面で相談に乗ってきたと言う左宏元氏が「彼女は練習の時はマイクを口につけて歌っていたが、ぜんそくなどに見られるような呼吸声は全く聞いたことがなかった。ぜんそくなんかで死ぬなんて信じられない」と語ったと言われ、疑惑を一段と深めた結果となった。

結局、エイズ説については、スメット医師が「100%、気管支ぜんそくの発作が原因だ」と断言したしたこともあって、次第に「死因に疑問を呈する記事は消えていった」(芸能関係者)。

テレサさんの遺体は、遺族の要請で5月11日深夜に台湾・台北松山空港へと空輸された。

前述した通り、台湾では国民的歌手だったこともあって、急遽「台湾政府葬儀委員会」が発足、5月28日に台北市第一殯儀館で国葬並みの葬儀が行われた。参列者は台湾はもちろん日本をはじめアジア各国からファンが押し寄せた。その人数は3万人以上にも及んだというから、日本でいうと石原裕次郎さんや美空ひばりさん…、さらに尾崎豊さんやX JAPANのhideさんと同等だったかもしれない。

テレサさんの遺体は火葬ではなく土葬となった。

「土葬は手続きが面倒な上、厳しい。しかも台湾は狭い土地柄から土葬用の土地を取得するのは相当の資金を必要とする。功績のあった人物や高官、財閥などしか土葬をおこなってこなかった」(現地の関係者)。

棺は台湾の旗と国民党旗に包まれていた。

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