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庶民から見る北朝鮮問題の急所

トランプ政権下のアメリカが空母の北朝鮮近海への派遣、中国への圧力(=北朝鮮への経済制裁の強化)などを通して、北の核兵器開発放棄を求め強硬手段に訴えているが、結果は見えない。

アメリカの狙いは北の核放棄がほぼ絶対の焦点であり、政治の安定は優先順位が低いとみられる。
一方、中国はむろん北の核放棄は望むところではあるが、優先順位のトップは政治の安定なので、核放棄と政治の安定が両立不可能ならば、とりあえずは政治の安定を支持すると思われる。

少なくとも現状では北朝鮮の金政権は、核開発を放棄するつもりは全くないので、アメリカと中国のゴールは微妙に一致しないまま事態は進行すると見込まれる。

今後の考えられるシナリオは

①アメリカが手を引く。
②北朝鮮が核開発を放棄する。
③中国・アメリカが圧力をかけ続け、北朝鮮を追い詰める。

①と②は可能性が低い。
アメリカが何の理由(おとしまえ)もなく、振り上げたこぶしをおさめることは考えにくいし、過去の言動から見て金政権が核開発を放棄する(と宣言する)可能性はさらに低い。

③の可能性が最も高いが、③の事態がさらに進行した場合、どのような事態に至るのかは皆目見当がつかない。

アメリカがどこまで先読みしているかはわからないが、おそらく何も考えていないだろう。

今月号の「選択」にランド研究所のブルース・ベネットという人がこの問題を語っているが、全くお話にならない。何も考えていないと判断して妥当かと思われる。

北朝鮮の脅威を傍観せず、具体的行動を起こすという(アメリカの)意思は強い。そこには軍事介入も含まれる。
と言いながら、
米国が攻撃すると、北朝鮮は米側の攻撃がこれで終わりか、まだ続くのか判断のしようがない。即座に韓国や日本への全面的報復攻撃に踏み切るだろう。米側の意図がどうであれ、外科手術(空爆)は大規模な戦闘の引き金になる可能性が高い。今はそこまでの準備はない。
と角度の違うことを言う。また、
北朝鮮には資本家、起業家がたくさんいるので、こういった人たちが中国の協力で金政権を打倒できるかもしれない。
と夢物語し、
金政権が倒れれば、日本をモデルにして復興計画を遂行するので、日本経済は恩恵を得る。
などと、愚にもつかないことを言う。

アメリカは朝鮮戦争でもベトナム戦争でもイラク戦争でも、何をやっても戦後処理(統治=おとしまえ)にことごとく失敗する国なので、長期的ビジョンなどあるわけがないと思った方がよい。

もし、北朝鮮への追い込みが厳しくなり、「大規模な戦闘」に至った場合、(ミサイル攻撃もそうだが)最も懸念されるのが難民問題である。

予想もつかない数の難民が周辺にあふれる。
日本も例外ではいられない。

内閣府の事態対処専門委員会が韓半島有事の際の難民受け入れについて2006年にシミュレーションしている。http://japanese.joins.com/article/j_article.php?aid=83408

報告によれば、10~15万の難民が避難してくるとされるが、大村の入国管理センターや近隣の公的宿舎を合わせても数万の収容人員しかない。また、福利厚生や就業支援などの具体的政策が策定されているわけではないので、混乱は必至である。

さらに対馬経由で玄界灘を渡って大量の不法避難民が流入する可能性も高い。
やっかいなことに、北朝鮮には20万を超える特殊部隊要員がいるので、戦闘員が難民に化けて侵入する可能性が高いし、おそらく本当の難民と特殊戦闘員を区別することは困難だろう。
特殊戦闘員が国内で何をするかはわからないが、末広亭で落語を聞いて帰るわけはない。

ミサイルは防げても、難民を防ぐのは困難を極める。
ミサイルは技術的な問題だが、難民は人道的・法的(さらに言えばマンパワー的)な問題だからだ。

したがって、今の時点で最も避けるべき方向は「大規模な戦闘」へと至る道であり、そのために日本が積極的な役割を果たす契機は必ずある。(と信じたい。)


蛇足
ランド研究所のベネット氏の発言の意図には、ミサイル防衛システムやイージス艦などを買わせようとするところにあるのかもしれない。このアメリカの強硬策自体、防衛関連の「ビジネス」への誘導だという説は全く荒唐無稽とは言えない。シリアで使ったミサイルの会社がトランプの関係者だったという報道もあったことだし。

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