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注目すべきフランス大統領選挙/テクノロジーが導く民主主義の崩壊?

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◾️ 米国大統領選に似るフランス大統領選

決選投票が気になるフランス大統領選挙だが、何といっても焦点は、極右政党である国民戦線の党首、マリーヌ・ル・ペン氏の動向だろう。今のところ世論調査では、独立候補のエマニュエル・マクロン氏が優位でありその勝利は揺るがないと予想されている。だが、本当にそうなるのだろうか。私たちは、昨年2度も衝撃的な『ありえない』結果を見せられてきた。いうまでもなく、Brexit(英国のEU離脱)および米国の大統領選である。かつてのトランプ候補同様、ル・ペン氏も泡沫候補に過ぎなかったはずなのに、4月23日に実施された大統領選挙の第一回投票では堂々の2位だ。

その第一回投票は、すでにフランスにとって歴史的といえる結果となった。決戦投票に進んだマクロン氏もル・ペン氏も、いずれも既成政党の出身ではなく、これはフランス史上初めてのことなのだという。思えば、米国の大統領選挙で見せつけられたのも既存の伝統的な政党(共和党と民主党)の崩壊だ。特にトランプ氏を最終的に大統領候補に選ばざるをえなかった共和党に至っては、実質的に党の体をなしていなかった。民主党でも、『共産主義者』とまで疑われたサンダース候補の躍進ぶりは凄まじく、最後の最後まで善戦してヒラリー・クリントン候補を脅かした。

トランプ候補、サンダース候補共に、党こそ違えど、既存のエスタブリッシュメントによる『ワシントン政治』に反旗を翻し、それが多数の有権者の支持につながったわけだが、今のフランスも前回の大統領選挙当時の米国と非常に似通った構図になっている。ル・ペン氏がトランプ候補のフランス版なら、共産主義者に支持され、若年層の有権者の間で人気があるというジャン=リュック・メランション氏は、サンダース候補にそっくりだ。第一回投票では20%近くの票を獲得し、決選投票にも残りかねない勢いだった。

決戦投票に残った、元銀行家のマクロン候補は親EUで、主要政党、大物政治家の支持を受けており、ワシントンやウオールストリートから支持されていたクリントン候補にダブって見えるし、ル・ペン候補が地方の農村部やラストベルト(錆びついた工業地帯)の支持を得ていることも、トランプ候補に重なって見える。決選投票を前にして、優勢を伝えられるマクロン候補だが、こうなると、同じく選挙前には優勢を伝えられていたクリントン候補のように見えてしまうのは、少々穿ち過ぎだろうか。確かに、米国大統領選挙は集計の手法が異なる州ごとの集計であり、総得票数で300万票近く上回っていたクリントン氏が敗北してしまうような特殊な仕組みである点はフランスとは異なる。

だが、何より、政治的な対立構図の背景にあるフランスの国民感情に目を向ければ、米国同様、ポピュリズムが国を覆っており、有権者は論理より『感情』によって動かされやすい状態にある。火をつければあっという間に燃え広がりかねない危うい心理状態にあると見られる。

◾️ フェイクニュースとビッグデータ分析

米国で、トランプ大統領誕生に預かって大きく貢献したのが、大量に投下されたフェイクニュースとビッグデータ分析だ。フェイクニュースについては、一つには親ロシア政権誕生を目論むロシアの戦略的な仕掛けが話題となったが、今回のフランス大統領選挙でも、すでにロシア発の大量のフェイクニュースが投下されているようだ。

一方で、ビッグデータ分析のほうだが、トランプ氏の背後で暗躍したケンブリッジ・アナリティカというコンサルティング企業が大番狂わせに大きく貢献したとされ、しかも、英国のEU離脱の国民投票の際にも、EU離脱派が同社のデータ分析を活用していたことが明らかになっている。そして、すでにフランス大統領選挙でも背後で活動していると伝えられる。

米国大統領選挙におけるフェイクニュースの発信についても、ケンブリッジ・アナリティカの関与があった可能性は高いという。というのも、ケンブリッジ・アナリティカの大株主は、著名ヘッジファンドのルネッサンス・テクノロジーズで財を成した米国の大富豪、ロバート・マーサー氏であり、そのマーサー氏はトランプ大統領の側近、オルタナ右翼のオンラインメディア『ブライトバート・ニュース』で責任者を務めた、スティーブ・バノン氏のパトロンである。『ブライトバート・ニュース』はフェイクニュース発信で非難されたことはご存知の通りだが、トランプ選対に入る前のバノン氏はケンブリッジ・アナリティカの取締役だったというから、一蓮托生を疑いたくなるところだ。

ケンブリッジ・アナリティカについては、『兵器化されたAI宣伝マシーン』と高く評価される一方で、『証拠に乏しいまやかし』と非難する向きもある。だが、現在のようにSNS等で大量分析データを入手できれば、かなりの程度、選挙民の分析や、操作が可能であることについては、マーケティング等でユーザー・市場分析に関わった経験のある者にとっては常識の範疇といえる。同社は米国成人2億2000万人のデータベースを所有し、それぞれに対して4,000から5,000にもおよぶデータ要素を習得しているという。そして、データベースを他社の大量のデータとつないで、個々人のプロファイルをより鮮明に浮かび上がらせる。データが大量にあって、分析のためのCPU能力が幾何級数的に向上を続ける現代のデータ分析が可能にする範囲は、おそらく一般人が想像出来るレベルをはるかに上回っていることは確かだ。

心理学者のダニエル・カーネマンが2002年にノーベル経済学賞を受賞して以来、非常に注目を浴びるようになった『行動経済学』から派生する幾つかの成果など、昨今ではかなり広範に受け入れられるようになってきている。

(例えば、マーケティングでもすでに実践に取り入れられている、行動心理学の手法については、次のサイトを参考にして欲しいが、もしご存知なければこの機会に熟読してみることをおすすめする。http://liskul.com/wm_bpsychology28-3342  )

特に、昨今のように、個人のプロファイルが詳細に特定され、操作する流路があり*1、しかも操作される側が、『理性』や『論理』ではなく、『感情』に動かされやすくなっていれば、その効果は通常に倍加して効果的に機能すると考えられる。(経済は『感情』で動いている、というのが行動経済学のテーゼでもある。)

もちろん、昨今、このような手法を駆使するのは、ケンブリッジ・アナリティカに限られない。米国の社会心理学者、ジョナサン・ハイト氏はオバマ前大統領の大統領選当時の指名受諾演説や就任演説にこそ『感情の動員』のオーソドックスな手法が見られ、大衆には“感情の押しボタン”が5つあり、従来、共和党は5つのボタン全てを押すのに対し、民主党は3つしか押さなかったが、民主党候補のオバマは5つのボタンを全て押した結果、大統領に当選できたという。トランプ大統領側ばかりが注目されるが、クリントン候補の側も、同様のコンサルティング会社を起用していたことは知られている。

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