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『日本人にリベラリズムは必要ない。』を読んで

■「憲法」を「聖典」と認識している人々の存在

 今年は70回目の憲法記念日を迎えたということもあり、最近の北朝鮮情勢も手伝ってか、メディアでも例年以上に憲法論議が盛んに行われているような気がする。もちろん、主題は憲法9条をどうするのか?ということであり、自衛隊の有無と憲法9条の関係がメインテーマとなっている。
 しかしながら、「自衛隊を軍隊と認めるか否か?」と問うた時に、「軍隊ではない」などと言う人は誰もいない。これは海外でも同様で、日本の自衛隊を「軍隊ではない」などと言う人は皆無だろうと思う。世界でも日本の軍事力は10位以内に入っているとも言われている(本書では4位と書かれていた)ので、誰がどう見ても軍隊以外の何者でもない。ちなみに北朝鮮は30位以下。
 ところが、憲法9条2項に「・・・陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」と書いてあるので、この矛盾をどうするのか?という議論が毎度、繰り広げられることになる。そして、いつも結果は有耶無耶になる。

 常識的に考えると、現在の自衛隊の存在は、明らかに違憲状態であるので、この矛盾を是正するためには、憲法を変えるか、自衛隊を無くすしかないことになる。しかし、軍事力を持たない国家などは有り得ないので、常識的には憲法を変えるしかない。
 これは子供が考えても、そう成らざるを得ない帰結であると思われるのだが、なぜか日本では聖書でもない憲法を少しでも変えることに拒絶反応(脊椎反射)を示す勢力が存在するため、全く事態が進行しない。いや、むしろ、「憲法」を「聖典」と認識している人々が存在しているがために変えることができないと言った方が正解だろうか。

■「リベラル」とは「隠れマルクス主義者」のこと

 前置きはこの辺にして、昨日、『日本人にリベラリズムは必要ない。』(田中英道著)という新刊を読んでみた。ちょうど、本書には憲法9条のことについてもタイムリーな話が書かれてあったので、レビューがてらに少し紹介しておきたいと思う。

 「3度の食事よりも○○が好き」という言葉があるが、最近の私の知的好物は、リベラル研究本の類いで、書名に「リベラル」と付く本は、大抵、目を通している。
 これまで何冊もリベラル研究本を読んできたが、本書はその中でも出色の出来映えで、3食とはいかずとも、1食抜いても読む価値が充分に有る本であり、蒙が啓かれたような気がした。(寝食を忘れてしまうほど夢中になって読んだという意味)

 「リベラル」や「リベラリズム」という言葉の定義から成り立ち、そして日本国憲法についても、テレビや新聞のような表層をなぞっただけの「How(どのように)」論議ではなく、思想的な「Why(なぜ)」にまで遡って平易に詳述されている。内容的にはディープでありながら、文章的には非常に解り易くシンプルに書かれていたのが印象的だった。著者があとがきで、「小難しい書物を捨てよ」と書かれていたことの意味がよく解る。

 本書のタイトルである「日本人にリベラリズムは必要ない」理由が、理論的に書かれており、これまでなぜ憲法9条を変えることができなかったのかも、歴史に秘された出来事を通してズバリ書かれている。「歴史に秘された」と言っても、陰謀論の類いではない。

 著者は「リベラル」とは「隠れマルクス主義者」であり「偽装された左翼」と位置づけている。元々は「左翼リベラル」だったものが、ソ連の崩壊を機に、「左翼」をカットして「リベラル」になったと書かれている。
 具体的に言えば、革命のターゲットを「経済」から「文化」に切り換えた。つまり、左翼は経済を破壊することが目的だったが、リベラルは文化を破壊することが目的になったということ。

 左派野党が何でもかんでも反対するという万年風物詩的な言動も、実は意味のある活動であり、「批判理論」というものが、そのベースになっているらしい。「批判理論」については『病むアメリカ、滅びゆく西洋』(パトリック・ブキャナン著)に詳述されている。

■「リベラル」という化粧言葉

 「リベラル」という言葉は、日本でもアメリカでも、「隠す」あるいは「化粧する」という目的を持って使用されてきたという経緯がある。日本の場合は本書に書かれてあった通り、「左翼」であることを隠すために使用された経緯があり、アメリカでは、ニューディール政策という社会主義的な経済政策を行うことで国民から毛嫌いされることを恐れて、当時の民主党が「リベラル」という言葉を使用した(化粧した)という経緯がある。大恐慌を境として、アメリカのリベラルもまた「自由」とは正反対の概念にすり替わってしまったわけだ。

 それ以前に、リベラリズムは、当初、啓蒙主義という考え方であり、西洋におけるキリスト教からの「自由」を意味するものだった。だから、日本人には向かないし、また必要のない思想だということらしい。

 昭和20年から22年の間に行われた『新憲法発布』『財閥解体』『農地解放』は民主主義運動ではなく、実は社会主義運動だったというくだりは興味深かった。1945年に社会主義者であったルーズベルト大統領が死去したことによって、偶然にも翌年、アメリカは反共産主義に舵を切り直した。しかし、当時、既に日本で行われてしまった社会主義運動によって生じた負の遺産は残り続け、現代の日本にも悪影響を与え続けている。
 本書を通読すれば、憲法を変えることができなかったことも、その悪影響の1つであることが腑に落ちる。是非、多くの人に読んでいただきたいと思う。

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