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「答えに迷うな!堅持せよ!!」〜安倍政権よりよっぽど頭固くて復古調な朝日社説を愛でる

 朝日新聞の日替わり社説を愛でるの巻であります。

 昨日3日、憲法70年の憲法記念日の朝日新聞社説は、1面と12面に堂々2つの長文の社説を掲げています。

【1面の社説】

憲法70年 この歴史への自負を失うまい

http://www.asahi.com/articles/DA3S12921057.html?ref=editorial_backnumber

【12面の社説】

憲法70年 先人刻んだ立憲を次代へ

http://www.asahi.com/articles/DA3S12920934.html?ref=editorial_backnumber

 巻物のように長い2つの社説なのでありますが、読み解きはいたって簡単、たいしたことは主張していません。

 まず、一面社説では、安倍政権は憲法を痛めつけている、けしからんとお怒りです。

 そのような安倍政権の下で、憲法は今、深く傷つけられている。かつてない危機にあると言わざるをえない。

 集団的自衛権は9条を変えない限り行使できない――。この長年堅持されてきた憲法解釈を覆した決定に、「立憲主義の破壊」との批判がやまないのは当然だろう。

 安倍政権は戦争法案で憲法解釈を覆した、これは「立憲主義の破壊」であるとのたまいます。

 だいたい安倍政権には「謙虚さ」がない、「憲法そのものへの敬意」がないと決めつけます。

 安倍政権に欠けているのは、歴代内閣が営々と積み重ねてきた施政に対する謙虚さであり、さらに言えば、憲法そのものへの敬意ではないか。「憲法改正を国民に1回味わってもらう」という「お試し改憲」論に、憲法を粗略に扱う体質が極まっている。

 一面社説を引き継いで12面社説は「立憲」が全面に出てきます、タイトルからして「先人刻んだ立憲を次代へ」であります。

 ここもだらだら長いので大胆にはしょりますが、朝日社説に言わせると明治になって創られた「個人」という単語も憲法第13条に使われているのは「近代立憲主義の考え」からだそうです。

 個人、もその賜物(たまもの)の一つだ。

 「すべて国民は、個人として尊重される」。日本国憲法第13条は、そう定めている。

 根底に流れるのは、憲法は一人ひとりの人権を守るために国家権力を縛るものである、という近代立憲主義の考えだ。

 で、自民党草案は「個人」を「人」にしたとお怒りです。

 ところが自民党は、5年前に公表した憲法改正草案で「個人」を「人」にしてしまった。

 明治憲法を起草した伊藤博文は立憲の何たるかをちゃんと考えていた、とお嘆きです。

 明治憲法を起草した伊藤博文は、憲法を創設する精神について、第一に「君権(天皇の権限)を制限」し、第二に「臣民の権利を保護する」ことにあると力説した。むろん、その権利は一定の範囲内でしか認められないなどの限界はあった。

 だが、時代の制約の中に身を置きながら、立憲の何たるかを考えた伊藤の目に、今の政権担当者の憲法観はどう映るか。

 朝日社説は「立憲主義の思想をより豊かなものにして、次の世代に受け渡す」と高らかに結ばれています。

 70年前の日本国憲法の施行で改めて命が吹き込まれたこれらの概念と、立憲主義の思想をより豊かなものにして、次の世代に受け渡す。いまを生きる私たちが背負う重大な使命である。

 ・・・

 昨日3日の朝日新聞社説、憲法70年の憲法記念日の朝日新聞社説は、 ご覧のように巻物のように長い2つの社説なのでありますが、読み解きはいたって簡単、たいしたことは主張していませんのであります。

 キーワードはただひとつ「立憲」「立憲主義」であります。

 立憲主義とは「憲法は一人ひとりの人権を守るために国家権力を縛るものである」(朝日社説)との考え方であり、それゆえに安倍政権は憲法を守るべき、「立憲主義の思想をより豊かなものにして、次の世代に受け渡」(朝日社説)せ、との主張です。

 スバラシイ。

 安倍政権はそんな大切な立憲主義を破壊していると批判しているのであります。

「集団的自衛権は9条を変えない限り行使できない――。この長年堅持されてきた憲法解釈を覆した決定に、「立憲主義の破壊」との批判がやまない。

 スバラシキ論理であります、ピュア(純粋)な感じが、立憲「原理」主義とも表現できましょう(そんな可愛くないかもですが)。

 さてそんな憲法70年の憲法記念日の昨日、安倍首相は読売新聞に憲法9条3項に自衛隊の保持を明記する、憲法改正案を電撃的に発表いたしました。

 その内容の是非はここではあえて問いませんが、その改正案提案理由は極めて「立憲主義的」であります。

 改正項目については、戦争放棄などを定めた現行の9条1項、2項を維持した上で、憲法に規定がない自衛隊に関する条文を追加することを最優先させる意向を示します。

 現状憲法の支配下にない自衛隊を明文化することで完全に法の支配下に置く、極めて立憲主義的提案であります。

 現状7割を超す学者が違憲状態であるとし、しかし9割を越える国民がその存在を肯定している自衛隊のこの非「立憲」主義的立ち位置を、一気に精算しましょう、という提案です。

 まさに安倍首相は9条を加憲して「立憲主義の思想をより豊かなものにして、次の世代に受け渡」(朝日社説)せんと、提案したのであります。

 ・・・

 さて翌5月4日。

 朝日社説からは見事に「立憲」の2文字が完全に消え去ります。

 朝日はたった一日で社説から「立憲主義」をすてるのでございます。

(社説)憲法70年 9条の理想を使いこなす

http://www.asahi.com/articles/DA3S12922579.html?ref=editorial_backnumber

 社説は冒頭の5つの文で結論を付けています、すげえ今度は理解しやすいです、答えに迷うな、「憲法9条を堅持」しろ、です。

 戦後70年余、平和国家として歩んできた日本が、大きな岐路に立たされている。

 台頭する隣国・中国と、内向きになる同盟国・米国。北朝鮮の核・ミサイルによる軍事的挑発はやまない。

 日本は自らをどう守り、アジア太平洋地域の平和と安定のために役割を果たしていくか。

 答えに迷うことはない。

 憲法9条を堅持し、先の大戦の反省を踏まえた戦後の平和国家の歩みを不変の土台として、国際協調の担い手として生きていくべきだ。

 安倍首相が極めて具体的な自衛隊に対する憲法改正案を掲げました。

 ある意味とても「立憲主義」的にです。

 そうしたら、わかりやすいですね、朝日社説はもう立憲主義など理屈はこねません

 社説の結びを読んでください、理屈じゃない、「9条は日本の資産である」です。

 9条は日本の資産である。

 そこに込められた理想を、現実のなかで十分に使いこなす道こそ、日本の平和と社会の安定を確かなものにする。

 なるほど、スバラシイ。

 実にわかりやすい、前日あれほど使用していた「立憲」が、今日の社説には一回も「立憲」という単語が登場しないのです。

 前日はリッケン、リッケンとあれほど理屈にうるさかったのに、立憲的な安倍提案が発表されたらたった一日で、答えに迷うな、9条は日本の資産だ、と急遽ド「根性論」に転換、九条の「そこに込められた理想を、現実のなかで十分に使いこな」せと、もはや意味不明の激を飛ばすのであります。

 ふう。

 朝日編集室よ、君たちの方がよっぽど頭固くて復古調じゃないのか?

 朝日新聞の日替わり社説を愛でるの巻でありました。

 やれやれです。

(木走まさみず)

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