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時速1000キロ、イーロン・マスク提案の夢の乗り物 - 土方細秩子 (ジャーナリスト)

 中東ドバイでの計画など「グローバル・チャレンジ」と名付けた世界中での計画を進めているハイパーループ・ワン。ロサンゼルスに本社を置く同社は、テスラCEOイーロン・マスク氏が提案した未来の乗り物を実現するために設立された。チューブの中を高速でカプセル型の乗り物を走らせるもので、最高時速は1000キロとなる。


ハイパーループ・ワン

 現在北ラスベガスで実験路線を着々と建設、今年6月下旬にも有人での走行実験が始まるが、そのテストチューブの地元であるネバダ州が米国で初の路線実現に賛同を示している。4月17日、州、州交通局などがハイパーループ実現に向けての法的な障壁を取り払うことで合意した、という。

 ネバダ州が現在考案中なのはラスベガスからレノまでの454マイル。人だけではなく貨物輸送にも用いることで、観光集客とともに物流面にも役立てよう、という計画だ。ラスベガスは人口増の多い街であり、物流面でもネバダを起点あるいは終点とする貨物量は2015年で1億3200万トン、金額にして1650億ドルだが、2045年には年間1億9100万トン、3050億ドルに増加すると見られている。またレノはテスラのギガファクトリーがある場所で、関連事業などで今後のビジネス需要が高まることが予想される。

 またネバダと言えば米国初の高速鉄道建設計画をラスベガスービクタービル(カリフォルニア)間で進めていたが、パートナーの中国企業グループとの契約が実行されず、頓挫している。今後この路線でもハイパーループ導入が検討される可能性が高い。

 もう一点、ハイパーループにとって強力なパートナーが生まれそうだ。日本でも当日配達が運送会社に負担になっている、と報道されたアマゾンだ。ロンドンで開催されていた港湾交通に関するコンファレンスで、ハイパーループ・ワン社のグローバル・フィールド・オペレーション担当の上級副社長、ニック・アール氏がアマゾンの当日配達で協力する可能性について言及した、というツイートが流れた。

 ただしハイパーループ・ワンでは「現時点でアマゾンとはいかなる提携関係にもない」とこの事実を否定している。これについては詳細が待たれるが、可能性の面からは全くない、とは言い切れない。元々ハイパーループはその速度に人体が耐えうるのか、という議論があり、人よりは貨物輸送として実現する方が早いのでは、と言われていたためだ。配達ドローンなど、様々な方法でのスピード物流を追求するアマゾンにとって、ハイパーループ網を利用して広い米国土をカバーしよう、と考えるのは自然なことにも思える。

 もしアマゾンとハイパーループ・ワンの提携が本当に実現すれば、アマゾンというスポンサーがつくことでハイパーループが米国全体に設置される可能性は飛躍的に高まるだろう。

 一方でハイパーループ・ワンのグローバル・チャレンジに呼応する形で、現在米国で11の自治体や企業、大学グループなどから路線敷設の提案が行われている。これはハイパーループが「ビジョン・フォー・アメリカ」と名付ける米国内での計画の一環だ。グローバル・チャレンジには世界中から2600もの提案が寄せられたが、その中から実現性が高いものを厳選した。国内での実際の計画はこの中からさらに2つか3つの路線が選ばれる予定だ。ネバダルートもこの中の一つである。

 まだテストチューブの運用さえ行われておらず、成功するかどうかさえも分からない段階でこれだけの注目度というのはまさに一つの現象とも言える。国際的にはドバイに続き、インドもハイパーループ敷設に興味を示し、すでに政府関係者とのサミットも行われている。

集まった資金は総額で1億6000万ドル

 組織の充実もまた注目されるところだ。昨年10月の時点で、元ウーバーのCFOでありグーグルの会計担当でもあったブレント・キャリニコス氏をチーフ・ファイナンシャル・アドバイザーとして迎えることを発表した。また5000万ドルの追加融資を取り付け、これまでハイパーループ・ワンに集まった資金は総額で1億6000万ドルとなった。

 実現に向けて、法的な問題も様々な面から解決する必要があるが、ハイパーループ・ワンはすでにワシントンDCでロビー活動を展開、法律面の障壁を取り除くよう強く求めている。「実現すれば米国に全く新しいインフラをもたらす」という主張だが、まずはテストチューブの友人実験、そしてアマゾンの今後の動きなど、注目すべき点は多い。

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