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日本から「ジェフ・ベゾス」を輩出するために必要な2つのこと

世界で最もリッチな人物は誰か──フォーブスが毎年、発表している名物ランキング「世界長者番付」の2017年版が先日公開された。

上位100人の国籍の内訳を見ると、トップはアメリカ人で36人。次いで中国の7人、インドの4人と続く。日本は2人。2年前に比べ、1人少ない水準だ。また長者番付上位の多くは、起業家、経営者が占める。つまり、上の事実は、日本企業の存在感が世界で薄まっていることを示している。

なぜ、そうなったのか。日本からビル・ゲイツ(ランキング1位)やジェフ・ベゾス(同2位)が生まれる可能性はないのか。早稲田大学ビジネススクール准教授の入山章栄氏は、2つの経営理論を用いて説明する。

「国内で勝ってから……」では遅い

日本企業の存在感が薄まっている理由の一つは明確だと考えています。それは、勝負するマーケットの大きさによるものです。

日本のGDP(国内総生産)成長率は頭打ちになっている状況。一方、世界を見ると、中国やインド、アメリカなどのマーケットはそもそも人口が多く、しかも経済成長を続けています。さらに言えば、ITなど様々な技術の発達で、国際間をまたいだビジネスが明らかに容易になってきています。

世界長者番付にランクインしているビリオネアの多くは、グローバルのマーケット前提の勝負をしています。しかし私の印象では、依然として日本の経営者・起業家の多くは「まずは国内で勝つ」ことを前提にしている。今の時代、「国内で勝ってからから海外へ」という考えでは遅すぎて、なかなか世界と闘えないのです。

カギは「ボーン・グローバル」にあり

では、どうすれば日本からビル・ゲイツやジェフ・ベゾスのような世界的起業家が生まれるようになるのか。もちろん簡単に説明できることではないのですが、世界の経営学で近年注目されている視点に、「ボーン・グローバル」(born-global)というものがあるので、それを使って私なりの視点を解説しましょう。

「ボーン・グローバル」とは、創業間もない段階からグローバルで展開することを目指し、事業戦略を設計するスタートアップ企業や起業家のことです。インディアナ大学のパトリシア・マクドゥーガル教授などを中心に、経営学ではここ20年間ほど注目されている分野です。

例えば、アマゾンやフェイスブックは早々に新興国でのビジネスに打って出るなど、早い段階からグローバル規模で事業を展開してきました。最近ならウーバーやエアビーアンドビーもそうでしょう。こう言った企業は、そもそも前提にしているマーケットがグローバルなので、ビジネスモデルが「はまれば」、会社が一気に成長し、資産総額も増えて行きます。

現時点でボーン・グローバル企業・起業家が生まれやすいのはアメリカのはずです。米国市場で成功することは、そのままグローバル市場での成功につながりやすいからです。アメリカは英語という世界共通の言語が使われますし、多民族国家ですから世界に広がる人脈を形成しやすい。そして、競争環境が厳しいことで知られています。

経営学では「レッドクイーン効果」と呼びますが、これは逆に言えば、アメリカで多くのライバルとしのぎを削って勝ち抜けば、それはそのまま世界市場で勝てる競争力につながりやすいのです。

いま日本で成功している経営者の中で、ボーン・グローバルに一番近い感覚をお持ちなのは、例えばビリオネア・ランキングで日本人トップ(34位)に立ったソフトバンクの孫正義さんではないでしょうか。

ソフトバンク自体は、国内で成功してから海外に展開しているので、ウーバーなどと比べればボーン・グローバルとは言えないかもしれません。しかし、孫さん自身は日本の高校を中退して渡米し、カリフォルニア大学バークレー校に進むなど、若い頃からグローバルな感覚を持っています。

1995年には米ヤフーへ出資、2012年には米スプリント買収、そして2016年の英アーム社買収と、国際進出も加速させています。大統領選の直後、ドナルド・トランプ氏と対話し500億ドル(5兆7000億円)の投資を決めたことも記憶に新しい。こうしたグローバル・レベルで大胆な動きができる経営者・起業家は、今の日本では孫さんを除いて数えるほどしかいないかも知れません。

「ネクスト孫正義」はこの2人!

とはいえ最近では、日本の若手の起業家の中でもボーン・グローバルの感覚を持つ方々が増えてきている印象を持っています。その代表は、メルカリ創業者の山田進太郎さんやソラコム創業者の玉川憲さんでしょう。フリマアプリのメルカリ、IoTプラットフォームを提供するソラコムは、両社とも世界のマーケットを視野に入れ、事業を展開しようとしています。メルカリは既に主要拠点をアメリカにしていますし、ソラコムも創業間もないにも関わらず、ドイツに進出しています。

もう一つ、世界的な起業家に重要な資質を示す理論は、「センスメイキング理論」だと私は考えています。ミシガン大学の経営学者カール・ワイクによって提示された考え方で、私も非常に重要だと考えています。この理論は、不確実性が高く、先のことがわからない時代に経営トップに求められるのは、従業員・顧客・投資家などのステークホルダーに対して「納得・腹落ちできるストーリーを語る」ことである、という考え方です。

日本企業の多くは、未だに「現時点での正確な分析」を重要視しています。「正確な答え」をビジネスに求めているのです。しかし、これだけ変化が激しく、不確実性の高い時代に、正確な答えを予測することはほとんど不可能です。

むしろ求められるのは正確性ではなく、「世の中の大きい流れはこういう方向だから、我が社の進むべき道はこうあるべき。だからこうやって一緒に進もう」と相手に納得できる語り方をして、ワクワクさせることで、人々を巻き込んでいくことが重要なのです。

孫さんはストーリーテーリングの能力が高く、人々を納得させる力が突出しています。孫さんに次ぐストーリーテラーは、ユニクロの柳井正さん(ランキング60位)、日本電産の永守重信さん(同522位)の2人でしょう。

よく、孫さん、柳井さん、永守さんは「ホラ吹き3兄弟」と呼ばれます。しかしこれは、3人とも強烈なストーリーテラーであるということを意味します。これからの起業家・経営者には、ボーン・グローバルの資質に加えて、このセンスメイキング理論の示唆する側面を期待したいです。既に海外で勝負しているソラコムの玉川さんが強烈なストーリーテラーになれば、さらに多くの人を巻き込んで、やがてフォーブスのビリオネア・ランキングに登場する日もあるのかもしれません。個人的には、それを期待しています。

[特集]日本長者番付 2017年最新リスト

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