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GWに遠出しないあなたにオススメ!宇野維正氏が語る海外ドラマ最前線

最近海外ドラマが気になる、でもそこまで熱心に追いかけてない。そのくらいの温度感の知り合いに「とにかく『ハウス・オブ・カード』は死ぬほどおもしろいから絶対見るべき」とか「好みにもよるけど、とりあえず『ゲーム・オブ・スローンズ』と『ファーゴ』は外せないんじゃない?」とか、現在もシリーズとして続いている作品の名前を挙げると、大体返ってくるのは次のような言葉だ。「で、それ何シーズンまでいってるの?」。

Netflix、Amazonビデオ、Huluを筆頭とするストリーミング・サービスが普及して、ボタン一つでファースト・シーズンから気軽に見られるようになったのは画期的なこと。でも、いざ覚悟を決めて最初から見始めて、「ヤバい、これおもしろすぎる」と自宅で超盛り上がりながら、「でも、これみんな5年前に見てるんだよなぁ」なんて思いがふとよぎったりしたら、ちょっと興醒めなのもわからないではない(それでも先述したドラマは見て損はないと断言します)。

というわけで、「海外ドラマの最前線」に素早く追いつきたい人、あるいは単にゴールデン・ウィークに遠出の予定がなくて暇な人に送る「今、ストリーミング・サービスで見ておきたい最新海外ドラマ」をここにセレクト。ちゃんとゴールデン・ウィーク中に完走することができるように、まだファースト・シーズンの作品、もしくはワン・シーズンで完結している作品に絞りましたよ!

・『13の理由』(Netflix)

他のストリーミング・サービスと比べてNetflixが優れているのは、(オリジナル作品の充実と、その前提としての戦略的・積極的な作品への投資もさることながら)オリジナル作品が世界同時に一斉に解禁されること。これは、映画の新作だと本国から数ヶ月遅れは当たり前、場合によっては半年や1年遅れて公開されることも少なくない日本人の我々にとってあまりにも画期的である。

特に、高評価の作品はSNSであっという間に世界中に話題が拡散されて、各ジャンルにその影響が及んだり、二次創作的な作品が生まれたりするこの時代。どんなおもしろい作品であっても、日本には入ってくるのが2年も3年も遅れては、流行るものも流行らないのである(Netflixが日本に上陸するまでソニー・ピクチャーズが日本での権利をほぼ塩漬けにしていた『ブレイキング・バッド』や『ハウス・オブ・カード』がそうだった)。

そして、まさに今「世界中のSNSで最もたくさん呟かれている」(Fizziology調べ)ドラマが、ハイスクールでのイジメ問題を真摯なリサーチとユニークな手法で描いた『13の理由』だ。2007年に出版されてベストセラーとなった同名小説に「救われた」という超人気セレブ・セレーナ・ゴメス(子役時代にイジメを受けていたという)が映像化の企画を温めてきて、Netflixオリジナルドラマとして実現した本作。ティーン向けのドラマだと侮っていると、そのクオリティの高さに驚愕するはず。

日本でもティーンムービー、ティーンドラマは数多く作られているが、アメリカと日本の決定的な違いは、学内での出来事だけでなく、ちゃんと親子関係も丁寧に描いていること。つまり、本作は若者にとって切実なだけでなく、子を持つ親にとっても重要な示唆を与えてくれる。もっとも、内容(描写ではなく)があまりにも刺激的すぎて、カナダの一部の地域では学内で本作についての議論をすることが禁止されたというニュースも先日報じられた。それほどまでに、本作は社会現象化しているのだ。

『13の理由』というタイトル通り全13話の本作は、主人公が自殺したクラスメイトの女の子から受け取ったカセットテープを1話に1本ずつ聴いていき、その真相に近づいていくという物語形式で進んでいく。作品を見ながら、きっと誰もが「一気に全部聴けよ!」と思うのだが、その心の声はそのまま「一気に全部見ちゃえよ!」と自分自身への言葉となって返ってくる。わざわざ翌週の放送を待ったり、レンタルショップに借りに行ったりすることなく、その気になれば最後まで一気に見ることができるのがストリーミングでのドラマの醍醐味。

ちなみにドラマを一気見することを英語のスラングでは「Binge(ビンジ)」といい、今や海外では誰もが使う一般用語となっている。視聴者にそんな「ビンジ」を要求する作品のメタ構造も含め、『13の理由』は現時点における最先端にして最高峰のドラマと言っていいだろう。

・『ウディ・アレンの6つの危ない物語』(Amazonビデオ)

海外ドラマにあまり詳しくない人でも「最近は映画界のトップ・ディレクターやトップ・アクターが次から次へとテレビドラマに参入しているらしい」って話はなんとなく耳にしているだろう。でも、一昨年「あのウディ・アレンがAmazonとテレビシリーズ製作の契約をした」という第一報が届いた時は、さすがに映画界全体に衝撃が走った。現在81歳、映画界きっての偏屈者にして、いまだに1年1本のペースで新作を撮り続けているウディ・アレンは、世界中の映画監督がテレビドラマに参入したとしても(実際に現在ほとんどそれに近いことが起こっているが)、最後まで映画館のスクリーンで上映される作品にこだわり続ける監督の一人だと誰もが思っていたからだ。

そんな『ウディ・アレンの6つの危ない物語』、いざフタを開けてみると、どこを切ってもウディ・アレン作品としか言いようがない作品となっていた。こちらも『13の理由』同様、タイトル通り全6話で構成されているのだが、一つ一つのエピソードが23〜4分ちょっとという短さ。よく考えるまでもなく、20分×6で約2時間と、「実は普通の映画のサイズじゃないか!」とツッコミの一つでも入れたくなってくるのだが(それでも90分前後の作品が多いウディ・アレン作品としては異例の長さだ)、そんな茶目っ気も彼らしい。

いきなりジェファーソン・エアプレインの曲とウッドストックの映像から幕を明ける(ウディ・アレン作品なのにジャズじゃなくてロック!)本作は、人気シンガー兼女優マイリー・サイラスが演じる指名手配中の政治運動の活動家が、ウディ・アレン自身が演じる老脚本家の家に転がりこんでくるところから物語が始まる。

革命を標榜する過激な思想に感化された若者と、ニューヨークに住むインテリでブルジョワの老人。基本的にはそんな世代間ギャップをテーマにしたドタバタ・コメディなのだが、ウディ・アレンは表面的に若い世代への無理解ぶりを演じながらも、若者たちに向けられた視線はどこか優しい。実はこの作品、舞台は60年代でありながら、そこにはウディ・アレンによる激動する現代のアメリカ社会に対する「一体我々はどこで間違ってしまったのか?」という深い考察がベースにある。その後味は上質にして、ほろ苦い。

・『スニーキー・ピート』(Amazonビデオ)

現在の世界的な「ドラマ全盛期」への大きなターニングポイントの一つとなったのは、間違いなく(前述したように日本以外のほとんどの国で)2008年から2013年にかけて放送された超傑作ドラマシリーズ『ブレイキング・バッド』だった。2014年にハリウッド版『ゴジラ』が公開された時、主人公の父親を演じた役者を見て「この冴えないルックスのオジサン、どうして主演クラスの扱いなんだろう?」と思った人もいるはず。あのオジサンこそが、『ブレイキング・バッド』で高校の化学教師でありながら大物ドラッグ・ディーラーへとのし上がる主人公ウォルターを演じたブライアン・クランストンだ。

本作は、そんなブライアン・クランストンが製作総指揮(エピソード8では監督も)に乗り出した一作。当初彼自身は出演することは考えていなかったとのことだが、Amazonビデオは「ブライアン・クランストンの出演シーンを毎回作るように」という条件付きで製作にゴーサインを出したという。そのくらい彼の顔は、ドラマ・ファンにとって「信頼の証」となっているのだ。

「ずる賢いピート」(スニーキー・ピート)と名付けられた本作は、刑期を終えてシャバに出てきた天才的詐欺師&スリの主人公が、刑務所内で知り合った男(ピート)になりすまして、ギャングの追っ手から逃れるという物語。

最初のエピソードを『モンスター上司』などで知られるコメディ映画の俊英セス・ゴードンが監督していることからもわかるように、『ブレイキング・バッド』よりも少々コメディ要素が強く、演出的に凝ったところもあまりないが、物語に張り巡らされたミステリーとそれを徐々に明かしていく精密なプロットは超一級品。現在のアメリカのドラマ界のアベレージの高さを見せつけられる。今回のシーズン1の高評価を受けて、早々にシーズン2の製作も決定した。

『ブレイキング・バッド』関連作品としては、同作に出てくる悪徳弁護士を主人公にしたスピンオフ作品『ベター・コール・ソウル』(Netflix)も相変わらず凄まじいクオリティと完成度を誇っているが、『ベター・コール・ソウル』は既にシーズン3に突入している上に、その作品世界を存分に楽しむにはその前に『ブレイキング・バッド』を完走しておかなくてはいけない。その点、『スニーキー・ピート』はまだ始まったばかり。誰でも気軽に見始めることができる作品としてオススメしておきたい。

BLOGOS編集部
宇野維正(うの・これまさ)
1970(昭和45)年、東京都生まれ。映画・音楽ジャーナリスト。「ロッキング・オン・ジャパン」「CUT」「MUSICA」などの編集部を経て、現在は「リアルサウンド映画部」で主筆を務める。著書に『1998年の宇多田ヒカル』『くるりのこと』(共に新潮社、2016年)。

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