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障がい者の働き方をドラスティックに変える!「はたらくNIPPON!計画」の挑戦

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撮影:蟹 由香

福祉施設で働く障がい者が得る月額工賃は、全国平均で1万数千円といわれており、自立して生活することが困難となっている。

日本財団は、こうした状況を改善するべく、新たな障がい者就労支援プロジェクト「はたらくNIPPON!計画」を立ち上げている。このプロジェクトに携わる日本財団ソーシャルイノベーション本部国内事業開発チームチームリーダーの竹村利道氏と、このプロジェクトのモデル事業の一つであり、花の販売などを行っている株式会社ローランズの代表取締役・福寿満希氏に話を聞いた。

「憐れを売って価値が売れていない」

撮影:蟹 由香

竹村:日本財団では、様々な助成事業を行っていますが、その中で最も多いのは障がい者の就労支援事業です。しかし、正直に言って、その中には失敗や反省点もあります。これは日本財団の会長も公言していることです。

大まかに言いますと、この10年間で2000件ほどの事業に200億円程度の助成をしましたが、そのほとんどが軽作業。人里離れた場所で障がい者の方が背中丸めながら働いている…といった事業でした。

こうした状況を根本的に見直そうというのが、「はたらくNIPPON!計画」というプロジェクトなのです。一つ一つの事業にじっくり取り組み、障がいがある人の仕事ぶりをドラスティックに変えていこうと考えています。

現在、福祉事業所の場合、事業がうまくいかなくても、障がい者のある人を雇用しているだけでお金が入ってくるしシステムになっています。それに甘んじている全国1万8000ヶ所の事業所がある。売上がなくとも、障がい者の工賃が月に1万数千円でも「俺らはとりあえずメシが食えちゃうよね」というのが福祉事業所の状況なのです。そのため、これまでの助成のあり方では、極端に言えば、「憐れを売って価値が売れていない」という状態になっていました。

そうした状況を変えて、事業者はもちろん、そこで雇用されている障がい者の方に自立をしてもらおうということが「はたらくNIPPON!計画」の特色になっています。

福寿:私たちローランズは元々、福祉事業者ではなく、普通の企業としてスタートしています。障がいを持つ方と雇用契約を結ぶ「A型」という形で事業を始めた際に、様々な福祉事業所を見学させていただきました。しかし、正直言って、制度の枠組みのなかでやる限り、商品としての付加価値が高まっていくイメージを持つのは難しいと感じました。

私は、前職でプロ野球関係の仕事で選手の社会貢献活動に携わっていたのですが、そうした活動もボランティアだと続きにくいことがわかりました。つまり、選手の引退やスポンサーの契約満了でお金が途切れた時が活動の終わりになってしまうケースがとても多い。プロジェクトを通じて夢をもってきた子供たちが、活動が終わってしまうことで夢を見失ってしまうケースもあるのだと知りました。それを通じ、プロジェクト自身がお金を生み出して、しっかり自力で回っていく仕組みが必要なんだなと思いました。

だからこそ、国の制度がどのように変わっても、障がい枠スタッフの雇用を守っていけるようにという意識を持って取り組んでいます。

実際、ローランズでは適正に応じてにはなりますが、原則として、ほぼ全般の業務を障がい枠スタッフに任せています。商品である花の製作、受発注、梱包作業などまずはすべて経験してもらいます。その中で、個々人の特性に応じて、適正なポジションを任せていく形になります。

現実問題として、健常者だけでやってしまった方が、業務の効率はいいでしょう。こちらから指示を出さなくても、自分で考えて仕事が進んでいくという部分もあるかもしれません。

しかし、「花が好き」「この会社がいい」という思い入れなど、業務効率よりも大事な部分というのもあると考えています。「ここじゃなくても、どこでもいいし」と考えている健常者の方と仕事するよりも、多少効率が悪くても、仕事や会社に対する思い入れがある人と働く方が、こちらとしても力をもらえるところは多くあります。

竹村:多くの福祉施設では、健常者の側が悪気なく、“障がい者のための仕事”を作ってしまう。障がい者を何とか主役にしようとするあまり、ティッシュの袋詰や箱折りといった軽作業をしてもらうことになってしまうところがあります。

しかし、ローランズの場合には、まず花屋として市場に受け入れられることが前提です。5月にオープンする新店舗ではカフェとしても展開しますが、こうした事業が市場に受け入れられるからこそ、そこで働く障がい者も胸を張って、しっかりとした賃金と社会で必要とされる実感も得られるのだと思います。そういう意味では今までの助成事業の形態とはまったく次元の違う仕事になるだろうと思っています。

福寿:私は、障がいのある従業員たちの失敗も大切な経験だとおもっています。むしろ私たちが最大限にフォローするので、多くの失敗をしてもらいたい。ただし、「その時どうするか」がとても重要です。「配慮はするけど優遇はしない」というスタンスで臨んでいます。

そうすれば、ローランズから離れてもやっていけるスキルやノウハウを持つことが出来ますし、例えば身寄りがいなくなって、1人で生活していかなければならなくなった時も生きていける。そういう人になって欲しいと思っているので、それなりに厳しい「教育」という観点をもって接しています。私たちからすると、それは愛情以外の何ものでもありません。

「福祉だからではなく商品がステキだから買う」

撮影:蟹 由香

福寿:ローランズの場合、「この商品を障害のある方々が作っているので、買ってください」という見せ方はしていません。「福祉だからではなく商品がステキだから買う」「買った商品が、実は障がいを抱えた方が作ったものだった。こんなステキなものを作れるんだ」というように入り口を変えていきたいと考えているのです。

実際に、私たちの会社で障がい者が働いているということを知らずにご利用くださるお客様も多いです。なので、反応としては、商品やサービスに魅力を感じて購入していただいた後に、「障がいのある方がこれを作ったなんてすごいわね」と言っていただくという順番になります。そこから理念にも共感して、継続的にご利用頂いているというケースも多いです。

竹村:福祉に長年取り組んでいる人の多くが、悪気なく障がい者に優しすぎて、「傷つく体験をさせてはいけない」と思い込んでいるところもあるのではないでしょうか。業界の中では、「社会に理解が足りない」という前提になっていますが、福祉業界側が、必要以上に配慮している部分もあるように思います。東京都内の福祉施設の90%が多摩地区にあるという事実にも、それは現れているのではないでしょうか。

なので、今回原宿という都心のエリアにローランズの店舗が出来ることには非常に大きな意味がある。こうした場所で、しっかりとして事業として自立できれば、顧客の側も「あそこって障がい者が働いている店だよな」と特別視しないようになるのではないかと思います。

[ PR企画 / 日本財団 ]

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