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「いつも上から目線」朝日新聞の楽しい読み方――時事芸人・プチ鹿島ロングインタビューその2

“時事芸人”のプチ鹿島さんが、新刊『芸人式新聞の読み方』を出しました。朝日、読売、毎日、日経、産経、東京の6紙のほか、スポーツ紙5紙、夕刊紙3紙を購読し、時事ネタの痛快さには定評があります。ときに「マスゴミ」とも揶揄される新聞を、どう使えばいいのか。第2回は「社説」をパロディとして読む方法。「ムリするな」と突っ込むポイントとは。全3回でお届けします。(聞き手・構成=須藤 輝)

■意識高く「時事ネタをやろう」と思ったことはない

プチ鹿島さん

――鹿島さんは日頃から新聞を何紙も取って「読み比べ」をされています。 いつから“時事芸人”という芸風を意識するようになったのですか?

僕は子供のころから時事ネタが好きだったんですよね。いまお笑いで「時事ネタを扱う」ってなると、「硬派だね」「社会派だね」とか言われて、すごくハードルが上がる印象がありますが、普段から「昨日こんなことがあったけど、お前どう思う?」って話をするじゃないですか。落語でいう「マクラ」みたいなもので、みんなと共有できるネタとして楽しんでいたはずなんですよ。

――「時事ネタ」という意識ではなく、最近あった面白い出来事として。

そうそう。だから硬派でも社会派でもなくて、いってみれば野次馬根性ですよね。もうひとつは、子供のころに、テレビで半信半疑の世界に親しんだのも大きかったと思います。ひとつはプロレス。もうひとつは『水曜スペシャル』の「川口浩探検隊シリーズ」です。どちらも見るときも、子どものころから「いや、待てよ。世間は嘘だインチキだって簡単に言うけど、知られていない真実の姿もあるんじゃないか」なんて考えていたんですね。そこはいまの新聞読み比べや情報収集の下地になっているかもしれません。だから、意識を高く持って「時事ネタをやろう」と思ったことはないんです。

――では、新聞を何紙も取るようになったのは、いつごろからですか?

新聞は、スポーツ新聞も含めて好きだったので学生時代から取っていたんですけど、芸人になってからは貧乏暇なしで忙しくなって、「東スポ」くらいしか読んでいなかったんですよ。2007年にそれまで組んでいた「俺のバカ」というコンビを解散してピンになって、しかもその前年からはフリーになっていたので、もう書き仕事でもなんでも、自分の得意な分野で仕事の依頼があったらいいな、と考えてブログを始めたんです。

――いわば宣伝のために。

そうです。加えて、将来どこかに連載を持つことになったとき、ネタ切れを起こすのを避けるために「どんなにネタがなくても週に2、3回は必ず何か書く」というのを自分に課して、勝手に練習していました。その中に新聞の社説をパロディにする「嘘社説」というのがありました。そのためにあらためて朝日新聞を取りはじめたんです。それが7、8年前のことですね。

■「面白い」はゲラゲラ笑うだけじゃない

――なぜ朝日新聞を?

日本の新聞の中で最も権威もあって、かつネタにもされやすいからです。朝日は、よくゴシップ紙や週刊誌に「また朝日はこんなこと書いて……」などといじられるので、そういう情報が出る前に、まっさらな状態で読んでおこうと。要は、この記事のこのへんがまた茶化される、あるいは褒められるだろうな、というアタリをつけるために朝日新聞を取ったんですけど、そうしたら社説が面白いわけですよ。最初は「なんでいつもこんなに上から目線なんだろう?」と思いました(笑)。

――どこまでも偉そうですよね。

しかも、文体も小難しいじゃないですか。このとき、「新聞社の偉い人が、暖かい部屋でいい椅子に座って地球の裏側のことを心配している」と思うと腹が立ってくるんですが、「大御所の師匠が若手に説教を垂れている」と思うと、途端に面白く読めるようになったんですよね。「また師匠が、大して興味もないのにムリしてコメントしているよ」みたいな。それから他の新聞の社説も読むようになったところ、見事に論調が違うので、そこから読み比べにハマったんですよね。

――鹿島さんの“時事芸人”としての視点は、そうした読み比べの中で培われていったのですね。

自分は芸人なんですが、ネタをやるだけではなく、ほかの芸人のネタについても話すことがあります。現在、同じく芸人であるマキタスポーツ、サンキュータツオと「東京ポッド許可局」というラジオ番組をやっていますが、その前身になった自主配信のポッドキャストでは「昨日の『M-1グランプリ』を見てどう思った?」といったことを話題にしていました。これがお笑い好きの人にウケたんですね。2008年から自主配信していたのですが、そのおかげで、2013年からTBSラジオのラジオ番組になりました。

そのとき、あらためて「面白い」には二種類あることに気付いたんです。つまり、ゲラゲラ笑うという意味だけではなく、興味深いという意味もある。どちらも芸人の仕事なのですが、テレビで放送される「M-1グランプリ」が前者だとすれば、僕らが自主配信していたのは後者だったんですね。

――ネタ自体を笑うのではなく、そのネタの見方や解釈を提示するという「面白い」もあるわけですね。

そうです。自主配信を通じて、特にネット上では後者の「面白い」が支持されることを、まざまざと感じました。「じゃあ、僕らの芸風って、新聞や時事ネタにも応用できるんじゃないか」ということで、ニュースそのものよりも、ニュースがどう報じられているか、という部分に興味を持ったんですよね。

――それが「社説のパロディ」というネタにつながるのですね。

そうなんですよ。僕は子供のころからプロレスが好きだったんですが、まさにプロレスは試合の勝敗よりも、「試合の見方」を楽しむものなんです。どんな視点で物事を見るかという点は、プロレスに鍛えられましたよね。僕の場合は、その見方をプロレスから新聞にスライドさせただけかもしれません。

■野球場も“左翼”と“右翼”で見え方が違う

――見方の提示というのは、スポーツ新聞にも通じますね。たとえばデイリースポーツであれば、どれだけ阪神タイガースが負けても、その試合での阪神の「活躍」を報じています。

スポーツ紙と購読者の需給関係は理想的ですよね。デイリーは2016年の開幕戦の翌日、一面に金本知憲監督の笑顔をバーンと載せてきたんですけど、試合は阪神が負けているんですよ。でも、デイリーを買う人は、そういう作法をわかっているし、それを愛しているわけですよね。その意味では、スポーツ新聞の読者は非常に情報リテラシーが高いといえます。

――新聞の「芸風」をわかったうえで付き合っている。

それを「偏向」と言い始めるのは無粋ですし、もったいない。もっと言えば、巨人ファンはデイリースポーツを読んだほうがいいし、アンチ巨人の人はスポーツ報知を読めばいいんです。そうすると、同じ試合でも報じられ方がまったく違うのがよくわかります。実際、スポーツ新聞を楽しんでいる人はそれをやっているんじゃないですかね。

――特にネットでは、自分にとって心地よい情報だけに接していると、視点が偏ってしまいますしね。

いまは自分にとって不都合な情報をシャットアウトしがちですよね。たとえばTwitterでは気に入らない人をブロックしてしまう。それよりも、あえて敵陣営が何を書いているかを見るほうが、面白いはずなんです。いわばスポーツ観戦みたいなものですよ。野球場でもレフトスタンドとライトスタンドで、見える景色が違うじゃないですか。ずっと同じ席に座っていると、その視点が固定化されちゃうんで、たまには席を移動する。それも結局は野次馬的な視点なんですけど、僕はそこを大切にしていますね。

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プチ鹿島
1970年長野県生まれ。大阪芸術大学放送学科を卒業後、大川興業に所属 。お笑いコンビ「俺のバカ」での活動を経て、フリーとなる。2012年からオフィス北野所属。スポーツからカルチャー、政治まで幅広いジャンルの時事ネタを得意とする「時事芸人」としてラジオ、雑誌を中心に活躍している。著書に『教養としてのプロレス』、『東京ポッド許可局』(共著) がある。

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(聞き手・構成=須藤 輝 撮影=プレジデントオンライン編集部)

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