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【北朝鮮危機】トランプと習近平は「金正恩」を取り除けるか?~田原総一朗インタビュー

日本の隣国・北朝鮮をめぐる情勢が緊迫している。アメリカのトランプ大統領が強硬姿勢を示し、米朝の軍事衝突に発展するのではないかという懸念が高まっている。北朝鮮有事となれば、日本も対岸の火事ではすまない。緊張する米朝関係をどう見るべきか。田原総一朗さんに聞いた。【田野幸伸(編集部)・亀松太郎】

◇きっかけはトランプ・習近平会談

AP
そもそものきっかけは、今月6日に中国の習近平国家主席がアメリカを訪問して、フロリダにあるトランプ大統領の別荘で、米中首脳会談が開かれたときにある。この会談のさなか、アメリカがシリアに対して59発のミサイルを撃ち込んだ。その事実をトランプが直接、習近平に話したのだ。

なぜわざわざ、アメリカはトランプ・習近平会談のさなかにミサイル攻撃をしたのか。これは、アメリカの姿勢を中国に強く示す狙いがあったと見ていい。つまり、アメリカは北朝鮮に対しても容赦しないというメッセージである。

「北朝鮮が核兵器開発をやめるように、中国も協力すべきだ。もし中国が協力しないなら、アメリカは独自に動く」というわけだ。

そのあと、中国の王毅外相はメディアに向けて「米朝の自制を求める」という見解を明らかにした。外交的手法を優先すべきだ、と。つまり中国は、アメリカによる武力攻撃に反対する意向を示している。

一方で、北朝鮮は、アメリカの動きに対して「超強硬で立ち向かう」と強気の姿勢を示した。北朝鮮が決して譲ろうとはしないので、一気に緊張感が高まることになった。

そんななか、北朝鮮では、金日成・初代国家主席の生誕105年記念の行事が大々的に行われて、世界各国から200人近いマスメディアの人間が平壌に集まった。このタイミングで、北朝鮮は核実験をするのではないか。そんな観測が流れた。5年前の金日成生誕100周年のとき、弾道ミサイルの打ち上げ実験を行ったからだ。

それに対して、アメリカは機先を制するように、原子力空母カールビンソンやミサイルシステムを搭載した駆逐艦・巡洋艦を朝鮮半島の沿岸に向けて進めることにした。本来はシンガポールからオーストラリアに行くはずだった予定を変更して、北朝鮮に進路を向けたのだ。これで非常に緊張感が高まった。

北朝鮮がどう出るかが注目されたが、4月16日朝、ミサイルを発射しようとして失敗に終わった。発射しようとしたのは、ICBM(大陸間弾道ミサイル)の機能を備えた新型のミサイルだったのではないかと見られている。一方、アメリカは確たる反応を示さなかった。

もう一つの注目すべき動きとして、その前の11日の出来事がある。北朝鮮の最高人民会議に、19年ぶりに外交委員会が設置されたのだ。外交委員会を開催するということは、中国が唱えている外交的な交渉に臨む姿勢を北朝鮮が示したともいえる。

アメリカでも、それに呼応するような動きはあった。トランプ大統領は「北朝鮮の体制転換を求めているわけではない」という方針が、アメリカのメディアによって報じられた。米朝はお互いに強硬姿勢を口にしながら、外交的交渉の糸口を探ろうとしているように見える。

◇北の情勢が「韓国・大統領選」にも影響

共同通信社
カギになるのは、両者の間に入りうる中国の動きだ。中国にとって、北朝鮮はなくてはならない存在という意味がある。なぜなら朝鮮半島が、アメリカと同盟関係にある韓国によって統一されるのは避けたい事態だからだ。

しかし北朝鮮のトップである金正恩・朝鮮労働党委員長は、中国にとっても相当やっかいな存在になってしまった。中国との最大のパイプだった自分の叔父を処刑したり、核実験やミサイル実験を強行したりして、アメリカや周辺国に対する挑発行為を繰り返してきた。

アメリカはもちろん、中国にとっても金正恩は困った存在なのだ。そこで、米中で協力して金正恩を取り除く方法はないか。今月初めの米中首脳会談では、そんなテーマも議題にあがったのではないかとみられる。

「トランプ大統領は北朝鮮の体制転換を狙っていない」という報道が出てきたところからすると、瀬戸際外交を繰り返す北朝鮮に対して、米中で話し合いを求める路線も模索しているのではないか。具体的には、中国が北朝鮮に相当ブレーキをかけようとしているのではないだろうか。

だが、そうは言っても、お互いにギリギリの瀬戸際作戦を展開しているので、万が一の事態が起きる可能性はある。もし北朝鮮が核実験を強行して、アメリカが北朝鮮をミサイル攻撃するようなことがあれば、北朝鮮が韓国を空爆する可能性がある。

そんな緊張感が高まるなか、韓国では5月9日に大統領選挙が実施される。当初は革新系の「共に民主党」のムン・ジェイン(文在寅)がダントツで支持率トップだった。ところが、北朝鮮の脅威が高まるとともに、中道系の「国民党」のアン・チョルス(安哲秀)がグッと伸びてきた。

ムン・ジェインは、もともとアメリカ軍の最新迎撃ミサイルシステム「THAAD」の韓国への配備に反対していたが、アン・チョルスはTHAAD配備など防衛強化を唱えている。北朝鮮に対して、融和的な姿勢のムン・ジェインか、強硬的なアン・チョルスかという構図だが、韓国の大統領選挙の行方は混沌としている。

このように、米・朝・中・韓は余談を許さない情勢だが、日本はどうすべきか。仮にアメリカが北朝鮮を空爆するようなことになれば、当然、北朝鮮も反撃することが考えられる。そのときには、在日米軍基地が目標にされる可能性がある。ここは日米両政府が相当警戒している。

もう一つ、たとえば韓国が戦争に巻き込まれた場合、アメリカはおそらく日本に自衛隊の韓国への派遣を要請するだろう。そうなれば、安保関連法が成立しているので、対応せざるを得ない。こちらも大きな焦点だ。

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