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消費だけではないメリハリの発想

かつて仲間とランチに行けば誰かリーダーシップを取る者が注文を取りに来たサーバーに「全員、今日の定食お願いします。おい、いいよな、みんな!」といったことがしばしばありました。みんな別々のものを取ったら時間がかかるだろう、という理由だったと思います。そこで一人、「俺、とんかつ定食」などと言ったら協調性のないやつ、と罵られるわけです。

ところが時代と共に注文の仕方も変わってきます。メニューを吟味し、仲間と何にするか確認しながら見事にバラバラの注文をします。注文の楽しみと共に自分は自分という視線が生まれてきたのです。欧米からすれば何と遅れている、と思われそうですが、「個」の自由度が十分に確立されていなかったことは紛れもない事実です。また、「自由に選んで」と言われても「どうしよう!」という判断基準を持たない人が多かったこともあります。

何がここまで世の中を変えたのか、いろいろファクターはあると思います。かつての重厚長大から軽薄短小に変わったこと、少量多品種に対応できる製造側の努力もあったでしょう。全く同じことは1920年代のアメリカの自動車業界でも起きていました、フォードは黒単色の車を大量生産することで市場を圧倒していましたが、GMがカラフルで選択肢も増やしたことが世の中の自動車販売のスタイルを一変させました。つまり、日本でこの20年起きたことはアメリカではほぼ100年前に起きていたということであります。

アメリカではこの後、実用主義という言葉がはやりました。車をはじめ、各種製造品は使うためにあるとし、車の場合には基本性能重視の結果、日本車が売れる時代が幕開けします。一方、アメ車が廃れたわけではありません。巨大な排気量のエンジンを積み、ソファのようなベンチシートの車がバカ売れしたのもアメリカです。つまり、消費の二極化はそのあたりから見られます。

その二極化の本当の姿とは人々の価値観の捉え方だったと思います。好きなものには金をかける、どちらでもよいものは極力安く仕上げる、この発想だろうと思います。

カナダでときどき見かけるキーワードがあります。Frill(よけいなもの)であります。この商品にはFrillがついているかどうか、という言い方をするのですが、そのバックボーンは実用主義ならばNo Frillでいいんじゃないか、という発想です。一方でこだわるならこっちだよね、というテイストの勝負(artisanal products=職人技商品)になってきます。

カナダにNo Frillというそのものずばりのスーパーマーケットがあります。飾り気ゼロ。陳列もファンシーではないし、商品棚も店のつくりも安っぽく、レジの横には無造作に段ボールが山積みになっています。客は必要なものを買い、自分で持ってきた袋に入れるか、段ボールに入れて持ち帰ります。但し、価格は圧倒的に安いと思います。

一方、ホールフーズというオーガニック商品主体の店に行けばこれまた大盛況。人々は商品へのこだわりに納得しながら一つひとつかごに入れていきます。レジでは商品を再生紙の紙袋に入れてくれます。決してビニール袋ではありません。但し価格はNo Frillより数割高いでしょう。しかし、顧客にとって価格の問題ではないのです。満足感なのです。

そしてその中間に残されたのが70-80年代の覇者、セーフウェイであります。ごくたまに近所のセーフウェイに行けば実に中間的な商品が並びます。商品により高安まちまち、レジで精算すればまぁまぁかな、というスーパーマーケットがなぜ廃れつつあるのかといえば特徴がなく、楽しくないからです。

人々が極端な選択をするようになったのは人々が便利だと思うものが増え、チョイスが増え、いつの間にか様々なものにお金を使うようになったからでしょう。例えば日本の若者がどれだけ高くても携帯代はケチれないのと同じです。その費用をねん出するためには何かを削らねばなりません。これがデフレの原因の一つかもしれません。その代わり人々はこだわるものにお金を使います。モノかもしれないし、サービスかも知れません。コンサートの年間売上高は2000年までは1000億円にも満たなかったのに今では3000億円を優に超えています。

これはインターネットを含む情報化で人々へ新たなるインプットがあったからです。私の顧客に年に3回ぐらいカナダに家族そろって遊びに来てレンタカーを借りてくださる方がいます。彼らは安い航空券、ホテルを探し、閑散期を狙ってきます。これもネット情報で一番お得な遊び方を知りえたからでしょう。これもこだわりそのものです。カナダに年3回、遊びに行くのです。その代わり、普段はしっかり節約するのでしょう。

デフレという言葉を我々はたやすく使っています。しかし、もっと奥底にある我々を取り巻く環境の変化から捉える必要はあるでしょう。

日本で共産党が野党として頑張っています。その代わり民進党が没落しました。これも主義主張の色が明白に出ているからです。今日、選挙があるフランスでも有力候補が右派と左派という極端な二人にスポットが当たります。ごく一部の熱狂的ファンが生み出す市場や世の中の流れをポピュリズムという言葉で片付けるのもどうかな、と考え始めています。これは我々人類が新たなる次元に入りつつあるのだという認識を持たずして語れない大テーマだと思います。

では今日はこのぐらいで。

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