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高学歴者が雇用関係から抜け出せないから、サラリーマンの給料が上がらない

社会における立ち位置も考え方もちがう人(Aさんとする)と話をする機会があった。
そこで考えたことをメモしておきたい。

私はAさんを、意見交換できる相手として得難い人だと思い、とても尊敬している。
だから、途中でAさんの選択に疑問を投げかける描写が出てきても、それは決してAさんを批判するものではなく、この文章の構成上やむを得ないものだと思ってほしい。

夢は夢、仕事は仕事という選択

Aさんは、高学歴・高収入なサラリーマンである。
だけど、会社員のままではたぶん実現できない夢を持っていて、Aさんの人格の大部分はその夢と理想で構成されているような印象を受けた。

Aさんはとても頭がいい。
これだけ知識があって、話が上手くて、情熱がある人が、やりたいことに取り組まないのは勿体ないし、大げさだけど日本社会にとっても損失なのではないかと思う。

定時で帰れるなら夢と仕事を両立できるのかもしれないが、Aさんはハードワークである。
Aさんはかなり貯蓄があるだろうから、今から起業すればいいのにと思った。

「生きるのに必要最低限だけ働けばいい」というのは「地に足がついていない」考え方か

脱線するが、私は「生きるのに必要最低限しか働かなくても、生きていける社会」を作ることに貢献したいと思っている。

なぜかというと、自分が過労のために病気になって退職し、一旦レールを外れた後は二度とレールに乗れない人生を送ってみて、「社畜の働き方は虚しい」と思ったからだ。

皆が責任感から馬車馬のように働く日本社会で、得しているのは経営者だけなのではないか。
皆が雇用されたがるから給料が上がらない。それなら、現在の雇用システムから離れる選択をする人が増えれば、人手不足で雇用される人の給料も上がるのではないか。

それで、私は正社員という雇用関係のレールから外れるしかなかった人間だが、同じような人や自ら外れたい人がどうやったら良く生きていけるのかを、一生を通して考えて活動したいと思っている。

でも、そうした考え方は、Aさんと似た立場の人から見れば、「現実的ではない、地に足がついていない」考え方と映るのかもしれない。
(注:Aさん本人は、私を全く批判していない)

家族・肩書き・年収という常識

例えばAさんは、「男が稼いで女にお金を出すものという考え方にとらわれず、お金がある方が出せばいい」という考え方は現実的ではない、と思っている。

具体的な表現は忘れたけど、「お嬢さんの残りの人生を僕にくださいというにはお金が必要だし、結婚をしなくても、親の介護にもお金が必要。必要最低限しか働かないという考え方では、その金額を出せない」という主旨のことを言っていた。

私は、Aさんの男らしさに驚き感動したのと同時に、「ちょっと古い考え方だな」とも思った。

しかし、私の義弟は32歳だが、首都圏住みなのに20代で妹のために家と車を買い、「俺の周りはみんな家買ってますよー」と言っていたことを思い出した。

たぶん、世代に関係なく、そうした日本人らしい美しい責任感がある男性とない男性がいるのだろう。

Aさんは結婚していないので、夢のために起業するというリスクを取れないこともない。
でも、Aさんが起業することはないだろう。

Aさんが言うには、高学歴者の同級生どうしで、肩書きや年収を意識しあって、「お前ならもっと稼げるのに」と突っ込まれることがあるそうだ(ネタかもしれないけど)。

肩書きと年収を重んじる人であれば、起業なんて「地に足のついていない」とんでもない話だろう。

日本にも、人知れず稼いでいる人がいる

私は、年収(年商じゃない)が億単位の個人経営者の会社で、経理をやっていたことがある。

その社長が成功したのは、ある知られざる儲かる分野で先駆者になり、早い者勝ちで優秀な協力者を囲い込むことができたからだ。
その分野に目をつけたこと、優秀な協力者とコネを結べたことは確かにすごいが、運もかなり左右しているので、再現可能なビジネスモデルではない(事実、社長の他の事業は失敗している)。

その社長は、私立の三流大卒である。
経営者の素質に学歴は全く関係ないが、その社長が話すのは「成功した自分すごい」ばかりで、成功した時点で思考が止まってしまっているので、私にはあまり頭がいいように思えなかった。

でも、稼ぎはすごかった(経理だったので金の動きを見ている)。
さらに、社長は週3回くらいしか働いていなかった。それも、自分が本当にやりたいことしかやっていなかった。
その会社は十年以上続いている。だから、いま会社をやめても、もう一生働く必要ないほど稼いでいる。
(この話は身バレするので、これ以上は親しい人にしか話せない)

私が知らないだけで、この日本でも、人知れず稼いでいる人はたくさんいるのだろう。

そして、高学歴者のサラリーマンは、そういう人たちの存在を知らないと思う。
なぜなら、高学歴というカードを失ってまで起業する人は本当に少ないため、高学歴者の世界にはそういう人は存在しないからだ。

頭のよさなら、Aさんの方がはるかに上だ。
2人がちがうのはただ、「常識や安定を捨て、リスクを取ったか」ということだけだ。

大企業のサラリーマンの給料は、その働きに見合っていないのではないか

私は、「大企業のエリート層の給料は、その働きに見合っていない(低い)のではないか」と思っている。

各国大手企業の役職階級別の年収を、日本の課長級を1として指数化したデータがある。

日本では、課長が1、部長は1.36、部門長が約1.7となる。
対して、ドイツの部門長は約2.9、中国・USAが約2.6、ロシアが約2.5、タイですら2.24と、日本はぶっちぎりの最下位である。
(詳しくは「日本の部長の給料はなぜ世界最低レベルなのか」を参照)

理由は簡単で、「日本のサラリーマンは、転職したり起業したりしないから、給料を上げる必要がない」のである。

厚生労働省「平成26年度版 労働経済の分析 第3章第1節 我が国における職業キャリアの現状」によると、日本では2人に1人が新卒時に入った会社に定年まで勤める。

以下のデータは、以前寄稿した記事「『起業する若者が日本に増えない理由』を論証してみた」から引用するが、起業者・起業予定者の割合を調べた国際調査では、日本は最下位で、その割合はアメリカの3分の1だった。

理由の一つとして、「失業者が就職先を見つけやすい国ほど起業がさかん」という仮定がある。
アメリカは失業者の就職確率が30%以上であるのに対し、日本は10%台前半だった。

こんなデータを挙げずとも、日本はキャリア上の失敗が許されない国だから、みな転職や起業などのリスクを取らないというのは、体感として分かっていただけるのではないかと思う。

優秀な人が雇用関係から抜け出せなければ、日本は少しづつ衰退していくのでは

Aさんの話を聞いて、私はAさんの選択を批判するのでは全くなく、ただ、「日本は、とことん経営者に都合のいい構造になっているのだなあ」と思ったのだ。

配偶者や家族を養うべきという美しい常識(もちろん必要性も多々ある)や、肩書きや年収への意識、そして安定志向に縛られて、高学歴で有能な人ほど会社との雇用関係から抜けられない。
働き方は、サラリーマンだけではないのに。

優秀な人が移動しないから、会社も高給を出す必要がない。
だから、管理職の給料も国際的に低いまま。

優秀な人が雇用関係から抜け出せず、やりたいこともできず疲弊していくから、日本は少しづつ衰退していっているのではないだろうか。

……そう思うのは、Aさんが日本社会の常識の中で懸命に生きているのに対し、私は既にその価値観から外れて、レールの外側からこの社会を眺めているからなのだろうか。

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