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ルポ・生きづらさを感じる人々~出会い系や援助交際などを経て、生きることを模索した日々〜奈保の場合

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出会い喫茶では指名されない。需要がない?

彼氏との出会いによって「私」が選ばれることを望んだ。その彼氏とは高校時代も付き合った。ただ、高校は2年でやめてしまった。

「みんな高校は卒業するものだと思っていた。母親は大学院卒だし、姉も海外に留学していた。でも、受験するのが嫌だった」

彼氏が仕事で海外へ。その後、専門学校に進むものの、新宿で遊ぶようになり、出会い喫茶にも何度か通った。しかし自分が指名されない。出会い喫茶は、男性がマジックミラー越しに女性を見て、好みの女性を指名。トークルルームで話すシステムだ。

筆者も行ったことがあるが、男性が指名している女性は、プロを感じさせない、あるいは、素朴な女性が多い。女性性を売りにするような女性は敬遠されがちだ。だからなのか、奈保は指名されなかった。 

「自分に需要がないことがわかった」 

彼氏が海外から戻って、再び会うことになったが、以前のようにお互い惹かれあわず、奈保は浮気をした。当時、彼氏は5人いた。承認欲求も性的満足も満たされていなかったからだ。

学びの場へ。古典的性役割を嫌悪する

ただ、20歳の頃、すべての彼氏を整理した。地元に飲みに行くと、バーの店長と仲良くなり、結婚話になっていく。母親に話すと、「大学くらい出ておけ」ということで、高校卒業資格を取り、短大へ進学した。

「このころは生きていることが楽しかった。短大に進学すると、勉強が楽しく思えた」

教授にも可愛がられ、研究室で5時間も話し込んだこともある。人格を肯定される体験を初めて味わった。女性性を認められることはあっても、人格を肯定されるという明確な経験はなかったからだ。

 「それまでは生きたいとか、死にたいとか、決める権利がないと思っていた。でも、誰かと比べることなく、『あなたがあなたでいることが素晴らしい』と言われた。彼氏もそう思っていたかもしれないけど、言葉にしてくれたのは初めてだった」

彼氏の実家に挨拶にも行ったが、女性たちが食事の用意をしていたことに違和感を覚えた。古典的な性別役割が気になったからだ。奈保の家族は、父親も食事の用意に参加していた。さらには、勉強を楽しんでいると、彼氏と興味が違ってきていた。そのため、自分から別れを言い出した。

「喪失感は激しかった。自分から手放したのに、なんで?と思った。彼氏のことを信じることもできたんじゃないか。もう、私と結婚しようと言ってくれる人はもういないんじゃないかとも思った」

「完全自殺マニュアル」との出会い。生きることの模索 

自分から別れを告げたものの、彼氏と別れたことで自己肯定感が下がっていく。求めたのは、やはり、女性性を認めてくれる場だった。ハプニングバーに通ったのだ。

「真面目な人と思われたが、性的な場が一番落ち着いた。いろんな人と出会い、セックスをした」

一方、勉強が楽しいという感覚は続いていた。短大を卒業後、大学に編入した。ただ、何かが足りないと感じていた。以前と比べると、精神的には落ち着いているような時期だが、生きることに積極的になれない。だから、自分で自分の首を絞めたり、息を止めたり…。自殺のリスクが高い行為はしてないが、死をイメージする行為を繰り返した。そんなときに、『完全自殺マニュアル』(鶴見済著、太田出版)を買った。

 『完全自殺マニュアル』は1998年の発売だ。あとがきにはこうある。

〈「強く生きろ」なんてことは平然と言われてる世の中は、閉塞してて息苦しい。息苦しくて生き苦しい。だからこういう本を流通させて、「イザとなったら死んじゃえばいい」っていう選択肢を作って、閉塞してどん詰まりの世の中に風穴を開けて風通しを良くして、ちょっとは生きやすくしよう〉

筆者も取材でこの本を持ち、「積極的に生きる理由もないが、死ぬ理由もない」という若者たちに出会う。なかには方法を試す人もいるが、多くは「いつでも死ねるから、とりあえず生きる」という考えだった。奈保は「いま、ここ」を楽しんでいるようにも見えるが、模索のなかで生きる意味を探し続けている。

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