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【読書感想】電通と博報堂は何をしているのか

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電通と博報堂は何をしているのか (星海社新書)

電通と博報堂は何をしているのか (星海社新書)

内容(「BOOK」データベースより)
五輪エンブレム騒動、若手女子社員過労自殺…。いま、広告代理店に逆風が吹いている。ネット上には、「パワハラ・セクハラは日常茶飯事」「社員はコネ入社で使えない人間ばかり」など、虚実入り交じった悪評が連日書き込まれている。なぜ電通・博報堂はこんなにも嫌われているのか。それは彼らが高利益をあげ、高い給料を得ている(とされている)にもかかわらず「何をしているかわからない」からである。長らく広告業界は、敢えて自分たちの仕事内容を開示せず、クライアントとの情報の非対称を利用して仕事を進めてきた。そのツケがいま、きている。本書は、博報堂出身の筆者がおくる真実の会社案内であり、業界案内である。

 博報堂OBの中川淳一郎さんによる「有名広告代理店」の中の話。
 「名前は出せないけれど、現役の社員たちに取材した」というこの新書は、暴露本という感じではなくて、読んでみると「電通も博報堂も(とくに電通は)、昭和のモーレツ社員が大勢いた時代の日本企業を引きずっているんだな」という印象だったんですよね。

 本書執筆にあたり、複数の電通・博報堂・中堅代理店の現役社員及びOBの取材をしてきた。多少の愚痴は引き出せたものの、不思議と会社の悪口を言う人もあまりいなければ、業界の悪口を言う人もいない。その一方、電通新入社員だった高橋まつりさんが自殺に追い込まれた件については、相当なパワハラがあったとも聞く。直属の上司は書類送検されたというから相当なものだろう。

 私が働いていた時もメンタルを病む人や、社内でのいじめから退職する人はいた。だが、これが他の企業や業界と比べて多いのか少ないのかはよく分からない。広告業界がとんでもない鬼だらけの業界と捉えられることについては違和感を覚える。ただし、ひとつ確実に言えることは、「サービス業」に分類されることから「お客様は神様です」の呪縛に囚われ(本来の三波春夫が唱えた意図とは異なる意味で使われている)、「できません」の一言が言えず、根性論で乗り切ることを求められる点がある。

 「現役」ということは、適応してやっていけている人たちの話、ではあるんですよね。
 あの過労死事件は酷かった。
 ただ、独立をするとか他のことがやりたくて離職した、という人は多くても、「仕事がきつくて、あるいは労働条件が悪くて電通や博報堂をやめた」という人はあまりおらず、一度内側に入ってしまえば、それなりに「良い会社」なのかもしれないなあ、とも感じたのです。

 こういうのって、医者の世界でも似たようなもので、本人たちは「キツいし、もう限界」と言っているのだけれど、医療関係の仕事から離れる人は、あまりいません。
 医師免許が役に立つ、検診医とか公務員とかになる人は少なからずいるのですが。
 半ば使命感にしても、辞めないということは、それなりに納得したり、我慢できたりしている部分も多いのかもしれないし、少なくとも外部からは「あいつらは恵まれている」と思われているところもあるのですよね。

 そもそも、箸にも棒にもかからないような「給料が安く、仕事がきつく、休みもなく、やりがいも将来の見込みもない」という職場であれば、そこで頑張るかどうか悩む前に「辞める」のが当たり前なのでしょうし。
 「せっかく電通に入ったのだから」「自分はできる人間のはずだから」というような自負心みたいなものが、「とりあえず休む」という選択肢を消してしまったのかもしれません。
 まあでも、溺れているときって、普段は泳げる人でも、泳ぎ方を忘れる、というものですから……

 これを読んでみると、実際の仕事は、一部の「クリエイター職」以外は、そんなにカッコいいものばかりじゃないんだなあ、ということがわかります。

 これまでに私が見た珍サービスで言えば、「とある美術館に行き、絶賛する」という仕事である。クライアント企業が保有する美術館があるのだが、そこに行き「ははーっ、すごい収蔵数ですね!」とひたすら感心し続けるというものがあった。他にも、「水族館に行く」「キュウリを買いに行く」といった仕事もあった。前者は、某企業の工場見学を企画したのだが、その工場の見学だけでは間が持たないため、参加者(キャンペーンの応募者)を水族館に連れて行く、というものである。

 後者は、とあるイベントの後、打ち上げになったのだが、クライアント企業の担当者が突然ダイニングバーの店員とモメ始めた。
「ワシは焼酎のキュウリ割りが飲みたいんじゃ! なんでキュウリがこの店にはないんだ!」と突然激怒したのである。その店はおしゃれなダイニングバーで、もろキュウだの梅キュウだのがない店である。店員もその剣幕には仰天していたが、ないものはない。しかしクライアントは怒りが治まらない。そこで私がキュウリを買いに街に出て、店員に「スイマセン、これで焼酎のキュウリ割りを作ってください」と平身低頭頼んだことがある。
 今考えるといかにバカな仕事をしていたのかと思うが、これが当時は最適解だったのだろう。

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