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<若者のテレビ離れの証明?>倉本聰のシルバードラマ『やすらぎの郷』高視聴率におびえるテレビ局

高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]

***

中高年がターゲットのシルバータイムドラマ、倉本聰脚本の『やすらぎの郷』(テレビ朝日)の視聴率が好調でテレビ各局がおびえている。

なぜおびえているのか。

初回の2017年4月3日放送分の視聴率は8.7%を記録し、同時間帯の前4週平均から3ポイント上昇。裏番組の情報・バラエティ番組を上回った。以後も視聴率の好調は続いている。

「テレビで高視聴率を稼ぐには中高齢の視聴者をターゲットにしなければならない」ということが証明された形である。これが証明されると、テレビ局は困るのである。なぜか?

「今の若者はテレビ離れをしていて、見ているのは年寄りばかりだ」というのはテレビ関係者ではなくとも大方の人が気づいていることが改めて示されてしまうからだ。

ちなみに筆者は先日、18歳から19歳の200人ほどに聞いてみたが、いわゆる地上波放送が映るテレビ自体を持っていない人が10人ほどいた。若者の5%は、見る見ない以前の問題で、テレビという装置そのものを必要としていないのだ。

もちろん、テレビ局自身も若者のテレビ離れなどには気づいている。しかし、それをおおっぴらにすることには強い抵抗がある。理由は、スポンサーからの要請があるからである。

スポンサーは購買力のある若い層に訴えたいはずだ。見ている人が、金を持っていても、物を買わない年寄りばかりでは困るはずだ。だから、編成局などが旗振り役になって子供を除いた59歳以下を「コアターゲット」などと名付けることになる。ただし、「コア」からはずれてしまった還暦を過ぎた筆者などの年齢層は当然、気分がよくない。

【参考】<視聴率より平均年齢>フジテレビはなぜ「49歳以下が見ている番組」を表彰するのか?

かくして、テレビ局はこれらコアターゲット層の視聴者獲得に全力を上げています、と電通及びスポンサーに猛烈アピールすることになる。アピールする姿勢を見せることで「目眩まし」をしようとしているように筆者には思える。

実際の視聴率は若者離れを隠しきれない。大相撲が場所中だと視聴率のトップ20のうち15を大相撲〇〇場所初日から千秋楽の15日が占めてしまう勢いなのである。

フジテレビの視聴率の凋落が激しい。これに対して、「見ているのが年寄りだけなのに、若者に向けて番組を作っているからだ」という議論がるが、これは間違いである。実際はもっと深刻で、「若者に向けた番組ばかり作るテレビ局とのイメージが染み付いて固定してしまったからで視聴率が上がらない」のである。

フジテレビには、年寄り相手だなと思う作りの番組もある。しかし、そういった番組を新しく始めても、年寄りは保守的だから、チャンネルをフジテレビに合わせようとは思わない。結果、フジテレビに視聴率は流れない。イメージはは実際より強力なのだ。

視聴率はスポットCM(大雑把に番組提供をする以外のところで流すCMだと考えて下さい)の売上と連動するので、テレビ局は儲けのために当然ながら視聴率が欲しい。それには中高年に見てもらわなければならないとは分かってもいる。

しかし、スポンサーは「年寄りの視聴率はいらない」という。スポンサーにとっては年寄りで視聴率を取ったとしても「CM料金が高くなる割に、見ているのは年寄りだけというのでは、テレビCMは踏んだり蹴ったりのカネ食い虫だ」となってしまうからだ。

だからこそ、見せかけの若者狙いの猛烈アピールになるのだろう。

こういった視聴ターゲットによる番組の選別が、面白さによる選別とは全く関係ないことに現在のテレビの病根がひそんでいるのだと筆者は思う。

『やすらぎの郷』は、夜のゴールデンタイムには若者向けのドラマが数多く放送され、大人の観るドラマが少ないという現状に対し、大人のためのシルバータイムドラマがあるべきだという倉本が企画。その提案を受けて決まったものだ。

【参考】<『フジテレビはなぜ凋落したのか』著者が指摘>テレビがスクープをとれない原因は蔓延する「横並びで安心する空気」

同じ倉本聰脚本の『北の国から』(フジ)の貢献度を思えば『やすらぎの郷』はフジテレビに持ち込まれても良いはずだが、なぜテレビ朝日になったのか。色々込み入った事情がありそうだがそれは筆者にはうかがい知れない。

ドラマの舞台となるのは、テレビの全盛期を支えた俳優、作家、ミュージシャン、アーティストなど「テレビ人」だけが入居できる老人ホーム『やすらぎの郷』。かつて一世を風靡したシナリオライター・菊村栄(石坂浩二)を中心に、浅丘ルリ子、有馬稲子、加賀まりこ、五月みどり、野際陽子、八千草薫らが出演する。

だが、元テレビ局員は入居できない。なぜなら「テレビをダメにしたのはテレビ局員だから」と言うのが倉本がこしらえた設定なのである。

同じ倉本が芸能界テレビ界の内幕を描いたテレビドラマに『6羽のかもめ』(フジ)があるが、その第26回、最終回の『さらばテレビジョン』で、倉本自身と思われる作家を演じる山崎務に次のようなセリフを与えている。

『テレビに於けるドラマの歴史はくさされっぱなしで終わったんだ。その通り! テレビドラマに芸術はなかったさ! 徹頭徹尾、芸術はなかったさ! 俺の愛したテレビドラマは最後まで下等な娯楽品としてーー下品なーー悪趣味な代物だったさ。さらばスタジオ! さらば視聴率! そしてさらばテレビジョン! だがな、一つだけ言っておくこがある。(カメラのほうを指差す)あんた! テレビの仕事をしてきたくせに本気でテレビを愛さなかったあんた! (別を指差す)良くする事も考えずに批判ばかりしてたあんた! あんたたちにこれだけはいっておく! あんたたちは決してテレビを懐かしがってはいけない。あの頃はよかったなんて後になってそういうことだけは言うな。言う資格がない。懐かしむ資格のあるものはあの頃懸命にあの状況の中でテレビを愛し、闘った奴。それから楽しんでくれた視聴者たちーー』

倉本のドラマ『やすらぎの郷』の高視聴率と、このドラマが今後展開させるであろうテーマはテレビ局が自分の首を絞める事になりかねないと、筆者は思うのだがそれくらい開き直ったほうがテレビはおもしろくなるだろう。

もし、この企画が先にフジテレビに持ち込まれていたとしたら。フジテレビは買う度胸があったであろうか。この度胸があれば若者のテレビ局というイメージから脱出する強力な起爆剤になったのに、などど妄想もしてみるが、これ皆。根拠のない仮定の話。

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