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なぜ日本は高度教育を受けた高機能人材を排除したがるのか

「学芸員はがん。連中を一掃しないと」 山本地方創生相 という記事。さすがにひどすぎて はてなブックマークでもぼこぼこにコメントされてるのではあるが、さてこの発言、既視感があると思わなかっただろうか。

よくわからないのだが、なぜか日本の組織は官民問わず専門家というものを軽視する傾向がある。Google や Apple のような高度教育を受けた人材を活かした企業というのもほとんど見られないし、先日も3倍以上の報酬を提示されて香港に転職した人が話題だった。

新聞が書く記事は専門家が見たら笑っちゃうような間違いだらけだし、かといって専門家の監修を呼ぶということもない。政策提言などを見てもエビデンスを無視したおかしな「専門家」が跳梁跋扈している。

思い起こしてみると、日本の大企業が崩壊して外資に買われた途端に黒字化できたり、経営危機になぜか優良部門を売却しようとしたり、どうも国内トップの判断がおかしいと感じることが多い。

これはおそらく、専門家の話が理解できるような高度人材をトップに上げられないという問題なのではなかろうか。

日本人の持つ組織のイメージはいまだに封建主義的だ。トップの椅子に座る人というのは血統が重視されたり、そうした人々に奉仕して気に入られた人だったりする。

なぜなのか。

思うに、実はほとんどの組織で労働成果に対する計測が行われてないのではないか。

人々が「教育は重要だ」と述べるとき、なぜか小中学校などの義務教育を思い浮かべる。そうではない、重要な教育というのは大学にある。大学こそが教育の場であり、小中高というのはその準備段階に過ぎない。

そして大学の本来あるべき教育とは、議論であり研究なのである。

かつてギリシア時代に興った大学の原型であるアカデメイアには、「幾何学を学ばぬものこの門を通るべからず」と掲げられていたという。幾何学とは測量の学問だ。ソクラテスはプロタゴラスとの議論の中で、「遠くにある苦痛は小さく見え、近くにある快楽は大きく見える。多くの快楽を得るためにはその測量術こそが大事なのです」と述べた。

プロタゴラス―ソフィストたち (岩波文庫)

プロタゴラス―ソフィストたち (岩波文庫)

学問とは「人間とはなにか」「世界とはなにか」「我々はどこから来てどこへ行くのか」という3つの根源的問いに答えるための人類の挑戦である。そのための基礎に「測ること」がある。

「世界とはなにか」という問に答えるために、人類はメートル法を生み出し、光の速度を測ることに成功した。そしてその速度が超えられないことも発見した。「世界は数学でできている」を合言葉に、ありとあらゆるものを計測した。その成果が科学であり、我々の近代的な生活なのである。

必要なのは「これはどうしたら計測できるのか」という問いを立てることである。人間の心理は物差しでは測れない。そこで統計を用いて計測する。できるだけ多くの人々を集め、その行動を統計におさめて計測する。こうすることで心理学という学問が成立し、この成果は我々が普段使っているスマートフォンやパソコン、あるいはウェブサイトなどに反映されている。どこに何があれば人々にとってわかりやすいのか、というのを計測して作られているのである。

労働成果も同様だ。これはどうしたら測れるか考え続けないといけない。なぜなら各企業ごとに「成果」というものは違うからだ。ある程度パターン化はできるかもしれないが、同じようには測れるものではない。

そうするとパフォーマンスがちゃんと見えてくる。評価がきちんとできるようになるし、改善の手も立てられる。Google のような先端企業では、労働成果を向上させるために勤務時間中の血糖値を安定させることまでやっているという。

小林 「体力」と「根性」ってあるじゃないですか? 「体力」は運動したり、筋トレしたりすると思うんですけど「根性」はどういうふうにトレーニングするんですか?

石川 シンプルなんですよ。1つあるんです、見るべき指標が。KPI(重要業績評価指標)というんですけど。長く確かに働くために、グッドからグレートな社員になるためには、見るべきKPIは「血糖値」なんですね。

小林 血糖値?

石川 はい。実は社員の健康づくりを一番研究したのはNASAなんですよ。宇宙飛行士が宇宙空間でどれだけ働けるのか? というのを研究したのがNASAで、そのために大事なことが「血糖値を一定にすることだ」と気付いたんです。

Googleが社員の健康づくりに取り組む理由 - ログミー

日本企業ではただの合言葉にしかならないような「根性」も、科学の力で計測可能なのである。

唯一、ある種のパターンとして浮かび上がってきたのは「働き方」に関するものではなく、むしろ「成功の法則性」に関するものだった。

つまり成功するチームは何をやっても成功し、失敗するチームは何をやっても失敗する。そのようなパターンであった。

(中略)

そして、そこから浮かび上がってきたのは「他者への心遣いや同情、あるいは配慮や共感」といったメンタルな要素の重要性だった。つまり成功するグループ(チーム)では、これらの点が非常に上手くいっているというのだ。

グーグルが突きとめた!社員の「生産性」を高める唯一の方法はこうだ(小林 雅一) | 現代ビジネス | 講談社(1/4)

こうした「心理的安全」、つまり社員の安心についても Google は計測しようとしている。

こうした計測があれば、おのずとトップに上げるべき人材も見えてくる。何が自社にとっての成果であり、なにが社員のパフォーマンスを向上させ、何がそれらを阻害するのか。それらを「計測」なしに判断していれば、そりゃ間違えることもある。計測してすら間違いはあり得るのに、勘だけに頼っていてはもっと間違う。

別に計測だけに頼れなどと言うつもりはない。高度な経験から得られる知見だって無視できるものではない。だが計測なしに経験頼みでは、状況が変化したときに対応できないではないか。だからこそバブル期以前の経験に頼ってしまった企業が状況の変わったこの二十数年に落ちぶれてしまったのではないか。

「モダンの徹底なきポストモダンはない」と宮台真司は言った。かの人物に対する評価は様々あろうが、この言葉はたいへん重たいものだ。我々は近代モダンからいまだに出られてないのである。近代モダン的な合理性を徹底させねば、その先にはいけないのだ。合理性の権化にならなくてはいけないのである。

こうしたネ申エクセル問題などが蔓延する組織に合理性などかけらもない。コンピュータは人が楽をするための道具だ。なにをどうすれば楽になるか判断できない人が決定権を持ってはいけない。

非合理な世界にも実はあるかもしれない。だがその世界に行くためには、まずは合理性を徹底する必要があるのだ。

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