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東芝四半期決算-なぜ「限定付適正意見」がもらえなかったのか?

皆様方すでにご承知のとおり、4月11日、東芝さんが3Qの四半期報告書を開示しました。業績が好調に推移しているセグメントもありますが、やはり記者さん方が注目しているのは監査人による適正意見が付かない報告書が出された、という点です(正確には「結論不表明」とするレビュー報告が付いた四半期報告書が開示された、ということです)。

東芝さんのリリースには一般の人が読むと誤解を招く表現もみられますが、(EDNETで確認したところ)これまで1Q、2Qの四半期報告書に関するPwCさんのレビュー報告書には適正意見(※)はついていましたが、今回は意見不表明(レビューの結論不表明)ということになりました。ニコニコ動画で記者会見の様子を拝見しておりましたが、マスコミ関係の皆様の質問はやはり「これからもPwC監査法人から適正意見はもらえない、と考えているのか?意見がもらえない場合、監査法人を交代させるのか?」といったあたりに集中していたようです。

※・・・四半期報告書へのレビューなので「適正意見」といっても期末監査の場合よりも消極的な心証で足ります。正確には「無限定結論」「限定付結論」」「否定的結論」「結論不表明」と言いますが、ややこしくなるので期末監査の監査意見に合わせて、なるべく「適正意見」という言葉を使います。

私は会計や監査の専門家ではないので、全くの素人としての素朴な疑問ですが、東芝の社長さんは「上場廃止を避けるために全力を尽くす」と記者会見でおっしゃってましたが、ではなぜ限定付適正意見(限定付結論)をもらう努力をしないのでしょうかね?無限定適正意見(無限定結論)はもらえないとしても、ウエスティングハウス関連以外のところに限定して適正意見をもらう(適正に表示していないと信じさせる事項がすべての重要な点において認められないとの結論をもらう)、というのはできなかったのでしょうか?そのほうが上場廃止の是非を判断する東証さんにとってもありがたかったと思うのです。

2013年の(上場廃止基準に関する)制度変更前のお話ですが、東証マザーズ上場第1号だったインターネット総研さんが(上場子会社だった)アイ・エックス・アイの粉飾決算に遭遇してしまって監査人から意見をもらえず、最終的には上場廃止になったことがありました。そのときに「こんな事情で当社が廃止になるのはおかしい!」と抵抗していたインターネット総研の社長さんのお話では、東証から「せめて限定付適正意見は監査法人からもらえないか」と示唆されたそうです(私は一部事件に関与しておりますので、詳しい内容は控えますが、この話は今でもネット上に社長さんのインタビュー記事として掲載されています)。また「三洋減損ルール」が話題となった三洋電機さんの会計不正事件が発覚した際には、監査人であるあずさ監査法人さんが2007年3月期の決算書に限定付適正意見を出しておられたものと記憶しております。

今回の東芝さんも、PwCさんと意見の一致がみられずに平行線なのであれば、それぞれ折り合いをつけて「限定付き適正意見(限定付結論)」を出すということで妥協することも考えられたのではないでしょうか。これだけ多くのステイクホルダーが存在するわけですから、東芝さんもPwCさんも自分の意見に固執している、ということはどう考えてもおかしいと思うのです。それともPwCさんとしては、限定付きでも適正意見(結論)は出せないほどに「ウエスチングハウスを除外してしまってはレビューの意味がなくなるほど重大問題」と判断したのでしょうか?もしくはレビュー報告書にも「強調事項」として記載されているように、継続企業としての注記を付したことで、もはや限定付きでも「投資家の誤解を招く」として限定付結論は出せなくなってしまったのでしょうか?

確定した証拠を前提として、監査人と会社との「会計処理方法に関する意見の不一致」が原因であれば「結論不表明」もやむをえませんが、レビューに必要な消極的な心証形成のための証拠の不足(レビュー手続きに関する不満足事項)ということが原因であれば現行の監査基準ものとでも限定付適正意見(結論)は出せるのではないかと、素人ながらに疑問を感じました。昨日のエントリーの続きになってしまいそうですが、余程の事情がないかぎり限定付適正意見は出せない(やはり監査法人さんも責任問題には巻き込まれたくない・・・)という発想が強いのでしょうか。

しかし、四半期レビューは通期の監査よりも適正性判断のハードルが低い(監査人の心証は合理的保証ではなく限定的保証で足りる)わけですから、そこで意見(結論)が表明されないとなりますと、5月に予定されている有価証券報告書の監査ではさらに適正意見をもらえる可能性が乏しくなりそうです。5月にはさらに厳しい監査が東芝さんに待ち受けているわけでして、これをどうやってクリアされるか、ぜひとも会計専門家の方々のご意見をお聴きしてみたいところです。小さな上場会社さんだったらオピニオン・ショッピングということもありますが、東芝さんとなるとそんなこともできないでしょうし。。。

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