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ポケモンGO「バーチャル侵入」訴訟の行方

 スマートフォン向けゲーム「ポケモンGO」のプレーヤーが熱中するあまり、住宅敷地への不法侵入や迷惑行為など行き過ぎた行動を取っていることに、米国の住宅所有者たちは業を煮やしている。こうした人々はこのゲームを開発した企業に責任を取らせたいと考えている。

 米連邦地方裁判所は、ゲームの開発企業が不法侵入と過失に関する法律に違反していると主張する訴訟について、近く継続か棄却かの判断を下す予定だ。この判断はユーザーを特定の場所に導くゲーム・その他のコンピューターソフトのメーカーにとって、大きな意味を持つことになりそうだ。

 ポケモンGOは任天堂が1990年代に販売した人気のゲームシリーズを基にしたもので、日々多くのプレーヤーがデジタルの地図上に現れるポケモンのキャラクターを探す。プレーヤーはモンスターの捕獲でポイントを得られる。モンスターは位置追跡技術と拡張現実(AR)によって実世界の画像と重ねて表示される。

 ニュージャージー、フロリダ、ミシガンの3州の住民が起こした訴訟に対する裁判所の判断は、向こう数週間以内に出される見通し。住民側は、このゲームがプレーする人々を自分たち住民の土地に物理的に侵入させたと主張している。また、このゲームが、自分たちの私有地内とその周辺に許可なくバーチャル(仮想)なゲームの構成要素(訳注:モンスターやその拠点)を配置したことで、自分たちの権利を侵害したとも主張している。

 この訴訟は、新たな法的問題を突き付けている。それは、一企業が他人の不適切とされる行為の責任を負うのか、あるいは企業がバーチャルな侵入に対する責任を負うのかという問題だ。この2つの問題の重要度は高まる公算が大きい。ARを利用したゲームの販売が市場で増えているからだ。こうしたゲームは、プレーヤーのスマホに組み込まれた全地球測位システム(GPS)やカメラなどの要素を使い、実際の状況の中でプレーしているように感じさせる。

 フロリダ州立大学のショーン・ベヤーン教授(法学)は、「この件に関する法律は非常に複雑だ」と述べ、「その扱いは州によって微妙に異なる」と付け加えた。

 昨年7月のポケモンGOリリース後に一連の訴訟を起こした原告らは、その訴えの中で、スマホを携えたプレーヤーたちが自分たちの平穏を乱していると主張した。プレーヤーは特定のGPS座標に配置されたバーチャルなゲームキャラクターを追って来る。

 例えばフロリダ州南部の海岸に面したある高級マンションの住民たちは、何百人もの人たちがバーチャルなキャラクターを捕まえるために深夜にマンションの敷地内に侵入したり、違法駐車をしたりし、放尿する者すらいたと述べている。別のニュージャージー州の原告(職業は弁護士)は、裏庭に入らせてほしいと言って、少なくとも5人が玄関のドアをたたいてきたとしている。

仮想現実の侵入は法律違反か

 原告らは、この侵入行為がゲーム開発会社であるナイアンティック社による過失と不法侵入に相当すると主張している。原告らは、ナイアンティックが物理的に不法侵入したプレーヤーの代わりに責任を負っていると述べ、さらにバーチャルなキャラクターを配置する行為自体が不法侵入の一種だと主張している。

 法律の専門家は、不法侵入と過失に関する法律は州によって異なると指摘し、バーチャルな侵入行為をどう扱うかをめぐる判例法は、あったとしてもごく少数にとどまるとした。

 この2つの法律が焦点としているのは、不法侵入や迷惑行為をしたとされる人の意図と、実害が生じているか否かだ。南カリフォルニア大学グールド法科大学院のグレゴリー・キーティング教授は、この訴訟で提起されているような状況に対する2つの法律の適用方法に関しては、「長期的に対応を考える必要がある。この種の(バーチャル)技術は消えてなくならないからだ」と話す。

 ナイアンティックは2015年にアルファベット傘下のグーグルからスピンアウトした企業だ。ナイアンティックは、この訴えを棄却するよう判事に求めており、原告らが法律をねじ曲げていると主張している。同社は不法侵入に関する法律が物理的な侵入行為のみを対象にしているとし、バーチャルな侵入は対象外だとする。裁判所提出書類によれば、同社はこうしたバーチャルな侵入について、「騒音、振動、ほこり、あるいはケミカルクラウド(化学物質を含む雲ないし煙)よりも侵入の度合いが少ない。こうした事象は全て、不法侵入というには不十分だ」と述べている。

ユーザー規約は無効の可能性も

 同社はまた、そもそもソフトウエア開発会社が画面上のバーチャルな物体と実際の所在地とを結びつけたり、ユーザーを特定の場所に導いたりすることが禁じられるのであれば、多くのインターネットサービスが脅かされると主張する。もしそうなら、不動産のオープンハウスをリストにして表示したり、珍しい鳥が見られた場所を表示したりするウェブサイトやモバイルアプリのほか、近道を教えるナビゲーションシステムなども危うくなるはずだという。そして、「そうしたサイトやアプリは全てビジター(訪問者)を引き寄せ、近隣の住民に影響を及ぼす可能性がある」と同社は訴える。

 さらに同社は、このポケモンGOゲームはプレーの条件として不法侵入しないことに同意するようユーザーに義務付けているとし、プレーヤーが不法行為を行った場合、同社にその責任を押しつけるべきではないと主張している。同社は「ナイアンティックは何百万人ものプレーヤーの現実世界の動きをコントロールしていない」と述べた。

 ロヨラ法科大学院(ロサンゼルス)のジョン・ノクルビー教授は、こうしたナイアンティックの主張は法廷で支持されない可能性があると話す。同教授は、同社はお決まりのユーザー規約の陰に隠れることはできないと指摘した。私有地にバーチャルなポケモンを配置したら、極めて多くのユーザーが不法侵入する誘惑にかられると同社が承知している場合は特にそうだという。

 ポケモンGOに関する当初の熱気は冷めてきている。ただし市場調査会社のセンサー・タワーによれば、米国では日々数百万人が今なおプレーしており、月間の総収入は世界で3000万ドル(約33億円)を超えている。

By SARA RANDAZZO

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